著者
西藤 勝 小野山 裕彦 西村 公志 嵯峨山 健 高橋 応典 中路 太門 高尾 信太郎 橋本 可成 安積 靖友 裏川 公章
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.32-35, 2001-01-01
参考文献数
7
被引用文献数
1

外傷生胆管狭窄はまれな疾患であり, 悪性胆管閉塞との鑑別が問題となる.今回, 我々は交通事故後に発症した外傷性胆管狭窄の1例を経験したので報告する.症例は70歳の男性, 乗用車を運転中, トラックに追突し右尺骨骨折にて入院, 腹部症状はなかったが, 14日後に黄疸が出現した.超音波, CTでは腫瘍像は明らかではないが, PTCD造影では下部胆管の狭窄と肝内胆管の拡張を認めた.減黄後の胆管造影でも狭窄は改善せず胆管癌と考えられた.胆汁細胞診でも悪性が疑われ, 下部胆管癌を考え膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本の所見では, 狭窄部では胆管壁が肥厚しなだらかな狭窄を示したが腫瘍性病変はなく, 組織学的にも悪性疾患は否定された.以上より, 交通事故の腹部外傷による胆管狭窄と診断された.本例は腹部打撲の程度が軽かったことも診断を困難とした一因と考えられた.
著者
高田 孝好 裏川 公章 内藤 伸三 松永 雄一 河合 澄夫 高瀬 信明 中山 康夫 香川 修司 長畑 洋司 林 民樹 斎藤 洋一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.1162-1169, 1983-10-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
28

著者らはビリルビン2mg/dl以上の閉黄患者255例を対象として消化管出血を合併した27例(11%)についてその臨床病態を分析し,また若干の実験成績とともに閉塞時の消化管出血の成因,治療について検討した.消化管出血27例中24例(89%)はビリルビン10mg/dl以上の高度黄疸症例であった.また原因と思われるstressorを重複算出にて分析すると,手術侵襲や胆管炎,重症肺合併症などの感染症が主たる原因と考えられた.潰瘍発生部位は胃体部から噴門部にかけ小弯側中心に発生し, UL I~UL IIの浅い潰瘍が多発する傾向にあった.閉黄時の急性潰瘍発生機序について総胆管結紮ラットに水浸拘束ストレスを負荷し検討した.結紮2週群ではストレス負荷後に胃壁血流量が無処置群, 1週群に比較して著明に減少し,また潰瘍指数も高値を示した.閉黄時には急性潰瘍発生準備状態にあると考えられ,このため閉黄患者の術後には積極的にcimetidineなどの予防的投与を行ない消化管出血の発生に細心の注意をはらう必要がある.教室では過去3年間に閉黄時の消化管出血7例にcimetidineを投与し5例(71%)の止血を得た.やむを得ず手術を施行する時は,出血巣を含つ広範囲胃切除術にcimetidineの併用が好ましい方法と考える.
著者
山口 俊昌 裏川 公章 中本 光春 出謝 秀樹 田中 宏明 磯 篤典 西尾 幸男 植松 清 瀬藤 晃一 川北 直人 嶋田 安秀
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.22, no.12, pp.2882-2885, 1989-12-01
被引用文献数
21

1987年までの13年間に4例の大腸癌の卵巣転移を経験した. 症例1 : 65歳. 閉経後, S 状結腸癌手術時に, 左卵巣腫瘤を合併切除した. 術後10か月後に肺転移で死亡した. 症例2 : 56歳, 閉経後. 下行結腸癌術後6か月目に両側卵巣を切除し, 右卵巣に転移を認めた. 症例3 : 53歳, 閉経前. 直腸癌 (Rs) 術後1年目卵巣腫瘤を切除, 9か月後も健在である. 症例4 : 56歳, 閉経後. 直腸癌 (Rs) の治癒切除後1年4か月後に左卵巣腫瘤を切除した. 1年8か月後に死亡した. 大腸癌卵巣転移の頻度は3.5%であった. 原発大腸癌の占居部位は下行結腸1例, S 状結腸1例, 直腸 (Rs) 2例と, 下部大腸に多く, 全例リンパ管侵襲は陽性で, リンパ行性転移が疑われた. 卵巣転移までの期間は同時から1年4か月後であった. 予後は不良で9か月生存中が1例あるが, 3例は1年8か月後までに死亡した.