著者
ダニエルス クリスチャン 宮崎 恒二 大塚 和夫 西井 涼子 眞島 一郎 関根 康正 河合 香吏 陶安 あんど
出版者
東京外国語大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

本計画研究の最終年度に当たる本年度は、これまでの4年間の研究成果を踏まえて、総まとめと研究成果の公表に重点をおいた。これまでの研究活動においては、三つの基本課題に沿って知識が資源化される過程を検討してきた。第一課題は、知識の所有・占有・共有である。第二課題は、現代における前近代知識の読み直しであり、第三課題は、実体化された知識である。実践の中で生まれてくる知識がどのように資源化されるかが大きなテーマである。本年度は、領域研究全体のr資源」概念の再構成に貢献できるように、上記の三課題を視野に入れながら、資源化メカニズムの解明を継続・研究した。これまでに知識の「資源化」と知識の「商品化」とのあいだに本質的な懸隔のあることを明らかにした。本年度は、資源としての知識が拡散と流動のベクトルをもつのに対し、その商品化は固定と秘匿のベクトルをもつという分析指標から計画研究の総まとめを行った。班員がその立場を取り入れた形で成果論文の執筆に執りかかった。具体的な活動は(1)総括班主催で2006年12月9日-10日に開催した資源人類学国際シンポジウムでの発表、及び(2)2007年秋に刊行する予定の責任編集・全9巻からなる資源人類学成果論文集の1巻をなす第3巻「知識資源の陰と陽』に掲載する論文作成であった。(1)の国際シンポジウムでは、関根はハワイ南アジア系移民社会における伝統知識の再活性化(宗教・呪術の復活)の補充調査をした上で、「On the Shift from Knowledge as a Capital to Knowledge as a Resource」と題する発表を行った。(2)については、班員はそれぞれ上記の三課題を中心に5年間の研究成果を論文にまとめる作業を行った。ダニエルスは、上記の第3巻の責任編集に当たると同時に、雲南における伝統技術の補足調査をした上で成果論文集の第1巻に掲載する伝統技術の資源化過程に関する総論を準備した。