著者
西光 義弘 金水 敏 木村 英樹 林 博司 田窪 行則 柴谷 方良
出版者
神戸大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

本研究の各研究分担者の研究の概要をあげ、その後で全体の総括をすることとする。まず西光は日本語は英語と比べて談話構造において繰り返しが多く、多義性が高いことをさまざまな現象で示し、その原因について考察をすすめた。柴谷はパラメ-タ理論による日本語の対照統語論の研究を言語類型論の立場から批判し、日英語だけでなく、世界中の諸言語を考慮に入れる必要を唱えた。また日本語の受身表現を類型論の立場から分析し、世界の諸言語における日本語の受身表現のしめる位置を明らかにした。田窪は文脈のための言語理論を開発し、理論的土台を提供した。田窪と木村は中国語、日本語、英語、フランス語の三人称代名詞の対照研究を行い、日本語の三人称代名詞が未発達であることが文脈依存性によるものであることを考究した。益岡は日本語特有であるといわれ、なかなか本質をとらえ難い「のだ」構文を先行の諸説を踏まえ、独自の機能分析を行った。林は日本語、フランス語、ル-マニア語の遊離構文の対照研究を行った。金水は談話における指示詞の機能と述語の意味層に考察を加え、日本語の文脈依存性による説明を試みた。田窪、益岡、金水はそれぞれ日本語のモダリティの諸側面を考究し、文脈依存性との相関関係を明らかにした。また研究協力者として、中川正之は中国語は文脈依存度において、日本語と英語の中間であることを諸現象の観察によって示した。当初の目的である、諸言語との対照によって、日本語の文脈依存度が高いことを相対的に示すことについては、さまざまの現象について、詳細で微細な考察が進められ、相対度を持ったパラメ-タを各言語に設定するための見通しがたった。さらに考察の対照とする現象と言語の範囲を増やし、パラメ-タ設定を精密化し、最終的な理論体系をうち立てる土台ができたといえよう。特に会話方策と談話構造と語用論に関する対照研究の必要性が大きく注目されるさらなる考究の必要な分野として、本研究の結果、明らかになった。また文脈の理論および文脈依存性のモデル化についても全体像が見えてきた。
著者
西光 義弘 鈴木 義和 實平 雅夫 高梨 信乃 ハリソン リチャード 住田 哲郎
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

3 年間の科学研究費補助金基盤研究(C))の間に外部の研究者を招いて講演会を開き(名古屋大学大学院・発達科学研究科渡邉雅子教授、東京大学留学生センター二通信子教授、早稲田大学留学センター佐渡島沙織准教授、一橋大学国際教育センター庵功雄准教授、同石黒圭准教授)、アカデミックライティングの様々な側面についての知見を得ると同時に、研究分担者はイギリス・カナダの大学でのアカデミックライティングの実情を調査に赴き、日本でのライティング・センターの先駆的な試みを行っている早稲田大学での様子を調査し、またアカデミックライティング関係の研究会への出席などを通じて、研究を重ね、定期的に研究会を開き、各研究分担者の研究を進め、討議を重ねてきた。3 年間の研究期間を終えるに当たり、その成果を報告書として刊行した。