著者
西口 栄子 伊ケ埼 理佳 鈴木 幸江 藤野 富久江 渡部 恵子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.314-321, 1995-07-30
被引用文献数
10

市販の各種清涼飲料水の歯牙エナメル質におよぼす影響を観察した。その結果、(1)各種清涼飲料水116銘柄について,そのpHを測定した結果,コーヒー飲料,ミルク入り紅茶飲料,茶飲料を除いて 他の清涼飲料水のpHは,2.3〜4.9の強酸性であった。(2)10銘柄の清涼飲料水に歯牙(中切歯)を浸漬して,エナメル質の脱灰状態を観察した結果,果汁入り清涼飲料水,無果汁清涼飲料水共に,pH 2.3〜3.7の清涼飲料水では,浸潰後1分間でエナメル質の脱灰が観察された。(3)1mM,10mM,100mMの乳酸および塩酸溶液に歯牙を浸漬して,エナメル質の脱灰状態を観察した結果,乳酸溶液塩酸溶液共に,1mMの濃度でエナメル質は脱灰した。その脱灰の程度は,塩酸溶液の方が強かった。これらの結果から,強酸性の清涼飲料水によって,歯牙エナメル質は脱灰し,その脱灰は,低pHによって起ると考える。
著者
西口 栄子 鈴木 幸江 山口 和美 神部 芳則
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-12, 2001-03-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
19
被引用文献数
3 1

歯磨剤, 洗口剤の安全性を検討する目的で, 市販されている歯磨剤, 洗口剤の多くに含まれているラウリル硫酸ナトリウム (SLS) とglycerineの各種ヒト細胞に及ぼす影響を検討した。ヒト歯肉上皮細胞に各種濃度のSLSを作用させて細胞の形態を観察した結果, 細胞は, SLSの濃度依存的に変化した。0.01% SLSを作用させた場合, 作用直後細胞が小型化し, 1分後にはほとんどの細胞が溶解した。0.001% SLSを作用させた場合,作用後3分で細胞が小さくなり始めたがその程度は弱かった。ヒト赤血球に各種濃度のSLSを作用させると,赤血球は,SLSの濃度依存的に形態が正常の円盤型から外方突出型の金平糖状に変化し, 0.004%以上では作用後1分で溶血した。ヒト大動脈血管内皮細胞(HAEC)に各種濃度のSLSを作用させると, 0.0022%以上では作用後1分で変化が起こり, 5分ではほとんどの細胞が溶解した。諸細胞にglycerineを作用させた場合, glycerineによる細胞の障害は低濃度, 短時間では大きいものではなかった。ヒト赤血球を用いてSLSの作用点を観察した結果, 膜蛋白質の関与が観察された。これらの結果から, SLSやglycerine, 特にSLSは, 微量で, 短時間の作用でも諸細胞に障害を与えるため,使用に際しては十分な注意が必要と考える。