著者
須藤 裕子 小笠原 勝 西尾 孝佳 一前 宣正
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.8-14, 2004-03-31
参考文献数
24
被引用文献数
3

舗装道路内の縁石と歩道の接合部に形成される路面間隙に成立する雑草植生の生態学的な特性を明らかにすることを目的に,栃木県宇都宮市内の国道,県道および市道の植生調査を行った。植生調査は2002年3月18日から4月25日(春期),同年10月17日から10月29日(秋期)に行い,間隙のサイズと間隙に含まれる土壌のpHを測定するとともに,草種別の出現頻度,積算優占度,生活型および帰化雑草率を求めた。植生解析の結果から,路面間隙の雑草植生はオランダミミナグサ(Cerastium glomeratum Thuill.),ノミノツヅリ(Arenaria serpyllifolia L.),エノコログサ(Setaria viridis (L.) Beauv.),コニシキソウ(Euphorbia supina Raf.),ニワホコリ(Eragrostis multicaulis Steud.),オヒシバ(Eleusine indica(L.) Gaertn.),スズメノカタビラ(Poa annua L.)およびヨモギ(Artemisia princeps Pampan.)を優占種,ノミノツヅリを標徴種の候補とし,種組成の点において水田や畑の雑草植生と明らかに異なることが判明した。また,路面間隙に出現した雑草種は春期と秋期あわせて25科74種に上り,路面間隙は植物の生育にとって不適な環境と考えられるにもかかわらず,多種類の雑草が生育していることも明らかになった。さらに,路面間隙の雑草の多くは地下および地上に連絡体を作らず(R_5),重力または風によって種子散布を行う(D_4)一年生(Th)のTh-D_4-R_5型の雑草であった。
著者
一前 宣正 西尾 孝佳 劉 国彬 李 代瓊 黄 瑾
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.97-103, 2001-06-29 (Released:2009-12-17)
参考文献数
7
被引用文献数
4 4

中国黄土高原の丘陵地では耕作と過放牧により植生が減少し, 裸地が拡大する傾向にある。筆者らは丘陵斜面に耕作放棄区と禁牧区を設けて植生および土砂と水の流出量を調査した。また裸地化した斜面の植生回復を目的として多年生イネ科雑草を導入し, その中から有用草種を選抜した。その結果, 耕作放棄と禁牧を25年間続けると, 植被率は増加し, 土壌と水の流出量は低下した。また優占種は1年生草本から多年生草本に変化した。さらに数種のイネ科植物種子を斜面に播くと, 土壌と水の流出量は著しく低下した。一方, 159種の多年生イネ科雑草を導入した結果, Panicum virgatum L. や Bromus inermis Leyss. などの20種は5年以上にわたって生育することが判明した。
著者
須藤 裕子 小笠原 勝 西尾 孝佳 一前 宣正
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.8-14, 2004-03-31 (Released:2009-12-17)
参考文献数
24
被引用文献数
4 3

舗装道路内の縁石と歩道の接合部に形成される路面間隙に成立する雑草植生の生態学的な特性を明らかにすることを目的に, 栃木県宇都宮市内の国道, 県道および市道の植生調査を行った。植生調査は2002年3月18日から4月25日 (春期), 同年10月17日から10月29日 (秋期) に行い, 間隙のサイズと間隙に含まれる土壌のpHを測定するとともに, 草種別の出現頻度, 積算優占度, 生活型および帰化雑草率を求めた。植生解析の結果から, 路面間隙の雑草植生はオランダミミナグサ (Cerastiurn glomeratum Thuill.), ノミノツヅリ (Arenaria serprllifolia L.), エノコログサ (Setaris viridis (L.) Beauv.), コニシキソウ (Euphorbia supina Raf.), ニワホコリ (Eragrostis multicaulis Steud.), オヒシバ (Eleusine indica (L.) Gaertn.), スズメノカタビラ (Poa annua L.) およびヨモギ (Artemisia princeps Pampan.) を優占種, ノミノツヅリを標徴種の候補とし, 種組成の点において水田や畑の雑草植生と明らかに異なることが判明した。また, 路面間隙に出現した雑草種は春期と秋期あわせて25科74種に上り, 路面間隙は植物の生育にとって不適な環境と考えられるにもかかわらず, 多種類の雑草が生育していることも明らかになった。さらに, 路面間隙の雑草の多くは地下および地上に連絡体を作らず (R5), 重力または風によって種子散布を行う (D4) 一年生 (Th) のTh-D4-R5型の雑草であった。
著者
福嶋 司 高砂 裕之 松井 哲哉 西尾 孝佳 喜屋武 豊 常富 豊
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.79-98, 1995
被引用文献数
46

Phytosociological classifications were carried out in order to revise and coordinate data on beech forest in Japan. Reports from different authors as well as our investigations using the BRAUN-BLANQUET method resulted in a total of 2,717 releves. These were used for constructing a vegetation table that produced five beech forest associations. These associations are 1. Sapio Japonici-Fagetum crenatae, 2. Corno-Fagetum crenatae, 3. Sasamorpho-Fagetum crenatae, 4. Lindero umbellatae-Fagetum crenatae and 5. Saso kurilensis-Fagetum crenatae. Associations 1,2,and 3 belong to the alliance, Sasamorpho-Fagion crenatae, which is distributed along the Pacific coast of Japan, whereas 4 and 5 belong to the alliance Saso-Fagion crenatae, which is distributed along the Japan Sea side. These alliances are of the order Saso-Fagetalia and of the class Fagetea crenatae. On the Pacific side, there are more floristic variations because there are many independent mountains with their own characteristic floras. Association 1 is distributed mainly on Kyushu, Shikoku and Kii peninsula. It is characterized by the Sohayaki elements which are historically related to that of East Asia. Association 2 is distributed mainly in the Fuji Volcanic Area whose characteristic features are the Fossa Magna elements. Association 3 is distributed mainly from the Chubu to Kanto regions inland with an extension into the middlepart of Tohoku. Its floristic composition represents the typical Pacific side beech forests. Along the Japan Sea side, there are fewer floristic variations because the covered area is more extensive and has a wider altitudinal range, with heavy snow deposition. Association 4 is distributed from Chugoku up to the low altitudinal areas of Hokuriku. Its floristic composition is basically made up of the Japan Sea elements with some Pacific side flora. Association 5 is distributed from Hokuriku through Tohoku, up to southwest Hokkaido, and floristically this is typical of the Japan Sea side.
著者
野澤–竹田 努 閻 美芳 小寺 祐二 青山 真人 西尾 孝佳 小笠原 勝
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.129-139, 2020

<p>地域住民の雑草管理能力が過疎高齢化に伴い低下するなかで,一般市町村道から交通量の多い広域農道や土地改良事業で設置された農業用水路の畦畔に至るまで,地域自治体の雑草管理に関する負担がますます増加する傾向にある。また,イノシシなどの鳥獣害が中山間地域を中心に問題になっている。そこで,地方行政担当者が雑草や鳥獣害に対してどのような問題意識を有し,いかに対処しているのかを明らかにする目的で,栃木県全域の市町を対象としたアンケートを実施した。2018年7月にアンケート調査票を,栃木県内の全25市町の雑草と鳥獣害対策に関連する137部署に返信用封筒と共に郵送し,回答を83部署から得た。集計は複数回答の場合も単純に加算し評価した。また,回答した市町の部署を生活系部署,土木系部署,農業系部署に分けて,部署間における問題意識の共通性を解析した。これらの結果から,雑草と鳥獣害対策において,殆どの市町が人員,予算不足および土地の権利に関する問題を抱えており,限られた予算の中での問題解決には生活系部署を中核にした部署連携が有効であることが示唆された。</p>
著者
須藤 裕子 小笠原 勝 西尾 孝佳 一前 宣正
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-9, 2005-03-18
被引用文献数
2

舗装道路の路面間隙に形成される雑草植生と道路周辺の土地利用形態および人間活動との関係を明らかにすることを目的に, 栃木県宇都宮市を例に挙げて, 土地利用と人口密度において対照的な住宅地域と水田地域の路面間隙の雑草植生を比較した。植生調査は2003年7月9日から8月13日にかけて, 無作為に抽出したそれぞれ50地点の住宅地域および水田地域で行い, 路面間隙に出現した雑草の総種数, 別の出現頻度, 生活型組成および帰化雑草率を求めた。その結果, 住宅地域の路面間隙で54科185種の雑草が, 水田地域で31科119種の雑草が観察された。さらに, 住宅地域の路面間隙でツメクサ(Sagina japonica (Sw.) Ohwi)やオオバコ(Plantago asiatica L.)などの踏圧に強い小型の雑草が高い頻度で出現し, 草本性の雑草の他にもタラノキ(Aralia elata (Miq.) Seemann)やムクノキ(Aphananthe aspera (Thunb.) Planch.)などの木本類と, 園芸植物のハーブ類が数ヶ所で観察された。また, 水田地域では草高が1m以上に成長したシロザ(Chenopodium album L.)やヨモギ(Artemisia princeps Pampan.)などが高い頻度で出現した。以上のように, 住宅地域の路面間隙に形成される雑草植生は水田地域に比べて種数に富むだけでなく, 種組成の点で著しく異なり, 両地域の植生の違いには, 鳥による種子伝播を含めた雑草種子の供給, 刈り込みや抜き取りなどの雑草管理や踏圧などの人為的な要素が関与していると考えられた。