著者
山﨑 明 斎藤 彰一 高松 学 河内 洋 西川 雄祐 堀江 義政 安江 千尋 山本 安則 井出 大資 千野 晶子 五十嵐 正広
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1000-1003, 2018-06-25

疾患の概念 直腸肛門部に発生する悪性黒色腫は,直腸肛門移行部の上皮基底層に存在するメラノサイト由来と考えられている1).消化管原発の悪性黒色腫はまれであるが,直腸肛門部は食道と並び好発部位とされ,本邦における頻度は全悪性黒色腫の4.6%2),直腸肛門部悪性腫瘍の0.38%3)と報告されている.直腸肛門部悪性黒色腫の平均生存期間は8〜25か月,5年生存率は4.6〜15%と報告されており,予後不良な疾患である4).色調はメラニン色素を反映した黒色調を呈するものが多いが,肉眼的に黒色調を呈さない低色素性あるいは無色素性のamelanotic病変が6.6〜26.4%と報告されており2)3)5),診断が困難な場合がある.
著者
真木 彩花 東阪 和馬 青山 道彦 西川 雄樹 石坂 拓也 笠原 淳平 長野 一也 吉岡 靖雄 堤 康央
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.O-35, 2016 (Released:2016-08-08)

ナノマテリアル(NM)は、粒子の微小化に伴い、化学反応性や組織浸透性などが向上することから、近年多くの分野で普及し、我々の生活において身近なものとなっている。一方で、NMの有用機能が、予期せぬ生体影響をおよぼす可能性が指摘されているものの、そのハザード解析、およびハザード発現機序の解明に向けた検討は殆ど進展していない。本観点から我々は、化学物質による毒性発現において重要な役割を果たすことが示されつつあるエピジェネティック修飾に焦点を当て、NMの安全性評価を進めている。本研究では、最も身近なNMである銀ナノ粒子(nAg)曝露によるエピジェネティック変異、特にDNAメチル化への影響を解析した。まずDNA全体のメチル化率への影響について検討を行った。粒子径10 nmのnAg(nAg10)をヒト肺胞上皮腺癌細胞に添加し、24時間後ゲノムDNAを抽出しメチル化率の変化を評価した。その結果、nAg10曝露によりメチル化率が減少する傾向が認められ、nAg10がDNAメチル化に影響をおよぼす可能性が示された。そこで、代表的なDNAメチル化酵素であるDnmt1への影響について検討した。細胞から核内タンパク質とmRNAを抽出し、ウェスタンブロット法とリアルタイムPCR法によりDnmt1のタンパク質とmRNAの発現量を評価した。その結果、nAg10曝露によってタンパク質発現量が減少する一方で、mRNA発現量には対照群との有意な差は認められなかった。従って、Dnmt1の発現減少は、nAg10曝露によるDnmt1の翻訳阻害または、タンパク質の分解に起因する可能性が見出された。また、nAg10曝露によるDNAメチル化への影響には、Dnmt1発現量の減少が関与する可能性が示された。今後は、他のDNAメチル化酵素への影響などを解析し、nAg10曝露によるDNA低メチル化の誘導機序について解析を進め、NMに係るエピジェネティクス研究推進への貢献を目指す。