著者
木内 寛 古賀 実 平井 利明 難波 行臣 竹山 政美 西村 憲二 辻 村晃 松宮 清美 奥山 明彦
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.480-486, 2005-05-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

(目的) 精索静脈瘤を有する男性不妊症患者に対し, その根治術による精液所見の改善や, 妊孕率の上昇がこれまで報告されている. その有用な術前予測因子を検討した報告も多数見られるものの, これらは単変量解析にて議論されている. そこで我々は様々な因子を補正したロジスティック多変量解析を用いて, 術後精液所見改善の独立した予測因子を検討した.(対象および方法) 1995年2月から2000年3月までに不妊を主訴として当科外来を受診し, 触診または超音波ドップラーにて精索静脈瘤を認め, 内精静脈結紮術を行った152例のうち無精子症の13例を除いた139例を対象とした. 静脈瘤の grade, 患者の年齢, 精巣体積, 血清 luteinizing hormone (LH), follicle-stimulating hormone (FSH), テストステロン, 術前精子濃度, 運動率術後が精液所見改善の予測因子となりうるか検討した.(結果) 139例のうち71例 (51.0%) に精子濃度の改善が認められ, 59例 (42.4%) に精子運動率の改善が認められた. 全体で見ると, 精子濃度は中央値で10×106/mlから30×106/mlに有意に改善し, 運動率も同様に33%to45%に有意に改善した. 多変量回帰ゐ結果, 術後精子濃度改善の独立した予測因子は静脈瘤の grade (odds ratio [OR]=5.7; 95% confidential interval [CI]: 1.9~17) とFSH ([OR]=0.76; [CI]: 0.60~0.96), 術前運動率 ([OR]=1.03; [CI]: 1.0~1.1) であった. その他の年齢, 精巣体積, 血清LH, テストステロン, 術前精子濃度は濃度改善と相関は認めなかった.(考察) 手術により最も精子濃度の改善が期待できるのはFSHが低く, 術前運動率が高い, G3の患者であった.
著者
北村 雅哉 西村 憲二 三浦 秀信 小森 和彦 古賀 実 藤岡 秀樹 竹山 政美 松宮 清美 奥山 明彦
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7-8, pp.589-594, 2000-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
18

(目的) TESE-ICSIは非閉塞性無精子症に対して広く用いられてきたが, その適応については今だ議論の残るところである. 今回われわれは精子回収の可否, ICSIの結果などについてそれを予見する術前のパラメータがないか, 後向き検討を行った.(対象と方法) 1997年7月から1999年9月まで大阪大学医学部泌尿器科およびその関連施設でTESE-ICSIを施行した非閉塞性無精子症の症例, 44例においてその臨床的パラメーターとTESE, ICSIの結果との相関を調査した.(結果) 1) 44例中32例 (72.7%) で精子の回収に成功し, うち29例でICSIを施行, 15例 (46.9%) で妊娠が成立した. 10例は Sertoli-cell-only の組織型が確認されていたが, うち3例 (30%) で不動精子が回収された. 2) 精巣容量, JSC, FSHが精子回収の可否を有意に予測するパラメーターであったが, 閉塞性の要因の関与も考えられるJSC8以上の症例を除外するとその有意差は無くなった. 染色体異常の有無は精子回収の可否を予測するパラメーターとはならなかった. 3) 妻の年齢, 精子運動性の有無, 精巣容量は受精の可否を予測するパラメーターとなった. 染色体異常は受精の可否を予測するパラメーターとはならなかった.(結論) 非閉塞性無精子症で精子の回収を予測する絶対的なパラメーターはなかった. 非閉塞性無精子症のすべての症例がTESE-ICSIの適応となり, またTESE-ICSIなしでは絶対不妊の診断は下せないものと思われた.
著者
北村 雅哉 西村 憲二 三浦 秀信 松宮 清美 奥山 明彦 小森 和彦 藤岡 秀樹 古賀 実 竹山 政美
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.587-590, 2000-08

精巣内精子抽出術(TESE)のうち先天性精管欠損,ヘルニア術後,パイプカット術後など明らかな閉塞性無精子症を除いた44例を対象に非閉塞性無精子症で精子の回収を予測するパラメータを検討した.JSC,精巣容量,FSHで相関がある結果であったがJSC8以上の症例を除外すると相関はなくなり,絶対的パラメータとはなり得なかった.受精に関しては妻の年齢,精子運動性の有無,精巣容量が有意なパラメータとなった.マイクロドロップレット法を用いたCryo TESE-ICSIは新鮮精子を用いたTESE-ICSIと同等の受精率が得られ,無用なパートナーへの侵襲を避けるのに有用と思われたWe reviewed 44 cases of non-obstructive azoospermia treated by testicular sperm extraction and intracytoplasmic sperm injection (ICSI) from July, 1997 to September 1999 at our institutes. Testicular sperm were retrieved from 32 patients (72.7%). ICSI was performed on 29 patients and the partners of 15 patients (46.9%) became pregnant. Out of 10 patients with histology of Sertoli-cell-only, we could retrieve sperm from 3 patients (30%). Testicular volume, Johnsen's score count (JSC), and FSH were significant parameters to predict the recovery of testicular sperm from the patients, but if only the patients with JSC less than 8, are analyzed, none of them was significant parameter. Chromosomal abnormality was not a significant parameter. The partner's age, motility of recovered sperm and testicular volume correlated with the fertilization rate. Chromosomal abnormality or the usage of cryopreserved sperm was not a significant parameter to predict fertilization.