著者
西村 智博
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

<b>1.</b><b>はじめに</b><br><br> 筆者は大学3年生の巡検で初めて地形分類図を作り,その後二十数年間,コンサルタントとして毎年日本のどこかで地形分類図を作成するような業務に携わってきた.<br><br>研究機関と異なり,コンサルタントでは顧客のオーダーに応じて地形分類図を作成することが多く,その結果,山地・低地,寒冷地・温暖地を問わず,全国各地の様々な地形に出くわしてきたと思う.<br><br> ここでは,地形分類図について,製作者・利用者双方の立場から,作業上感じている課題や利活用の事例,将来の展望について述べたい.<br><br><b>2.</b><b>製作者の立場から</b><br><br> 市町村単位やそれより狭い地区単位であれば,地域の特性に応じた凡例を検討し,実情に即した地形分類図を作成しやすい.<br><br> しかし,土地条件図や治水地形分類図,土地分類基本調査など,全国や都道府県レベルで統一された基準で整備される地形分類図では,一定の範囲の地形を標準的な凡例に適合するように分類しなければならないため,地域特有の地形を表現するのに苦心することがある.<br><br> 治水地形分類図を例にすると,「氾濫平野」から1~2m程度の標高差ながらそれと識別される低い「段丘」や,それが徐々に低地に埋没していくエリアの表現,谷の出口に形成される「扇状地」と「山麓堆積地形」の使い分けにはいつも頭を悩ませる.作業時間の制約もあり,これらの区分を主に空中写真やDEMデータから瞬時に判断しようとするのであるから,悩みはなおさらである.<br><br>GISデータとして整備・表示すると,あたかもその境界がハッキリしているように見えてしまうが,実はかなり境界が不明確な場合も多いのである.<br><br>低い「段丘」の場合,「段丘崖」を描かずに直接他の地形面と接するようにしたり,土石流や洪水流によって形成された地形はなるべく「扇状地」として描いたり,製作者なりにはいろいろ工夫して凡例を適用しているつもりではあるが,うまく利用者にそれが伝わっているか・・・甚だ不安である.<br><br><b>3.</b><b>利用者の立場から</b><br><br> ある地区で豪雨災害が発生したとする.さて,どこが大きな被害を受けているか,報道などの部分的な情報だけではなかなか全体像が把握できない.そこで私たちは,すでに整備されている地形分類図を眺めて,点の情報を面に変換するような作業を行っている.「〇〇地区で浸水」という情報があれば,その地区の地形を見て,同様の地形種では同様の災害が起きているのではないかと推測し,そういった地区を重点的に調査するのである.<br><br> 2017年7月には,活発な梅雨前線の影響によって,秋田県雄物川流域で河川の氾濫や土砂災害等の被害が発生した.家屋の浸水が少なく,地方で発生したということもあり,首都圏ではあまり大きな報道はなされなかったが,数十枚の斜め写真が撮影され,すでに整備されている治水地形分類図から浸水範囲は旧河道部が中心であることが読み取れた.<br> このように,広域に整備されている地形分類図は,災害箇所と地形の関係を検討するのに役立ち,逆に,災害が起きる前でも,地域の災害特性を理解するのに大いに役立つのである. <br><b>4.</b><b>今後の地形分類図への期待と課題</b><br><br> これまでの地形分類図は,基本的には「印刷図」としての利用を念頭に作製され,製作目的に応じて凡例が取捨選択されてきた.しかし,近年,地形分類の成果はGISデータとして整備・利用されることがほとんどであることから,発想を変えて,使用者が使用目的に応じて凡例を切り替えられるような仕組みに転換できないであろうか? 例えば,地形分類の凡例を大分類・中分類・小分類・細分類・・・といった具合に階層化して属性を持たせ,使用目的や縮尺に応じて容易に表示を切り替えられるようにするのである.<br><br> また,近年,地形計測技術も格段に進化してきている.例えば,精細な航空レーザ測量では樹木に隠れた数十cmオーダーの微地形も表現できるようになってきており,このようなデータが我が国の国土の半分以上を占めるようになってきている.これに伴って,新たな次元での地形解析が可能となっているが,解析技術が未だ追いついていない.詳細な地形データを判読して詳細に区分することにより,防災や土地利用などに地形分類の成果が活かせる可能性があることから,これらの利活用も十分に検討する必要がある.<br><br> 最後に,地形分類図の作成に関する課題をいくつか挙げておく.地形分類図は,国土の開発に先駆けて整備されてきた面があり,1970年代に技術が広まった.その後,細々と整備が進められているが,熟練技術者の高齢化が進み,作業機会も減少していることから,経験伝承の機会が減少している.<br> 最近,AIを利用した地形評価の取り組みが行われつつあるが,熟練工の経験を次世代にうまく引き継げるような仕組みを早急に検討する必要がある.
著者
西村 智
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.25-37, 2016

本稿は,若者の恋愛離れの非経済的要因として,恋人探しを先送りする行動に着目した。行動経済学にもとづくアンケート調査と実験結果から,目先の気楽な独身生活を優先させて恋人探しを先送りしている未婚者が少なからずいることがわかった。また,恋愛を先送りしており,かつ,現在偏重型の者は,先送りしていることを自覚させられることにより恋愛においてより積極的になるという結果が得られた。これらの結果は,恋愛の先送り行動に関するさらなる研究の必要性を示唆している。
著者
壺阪 美智子 西村 智子
出版者
甲子園短期大学
雑誌
甲子園短期大学紀要 (ISSN:0912506X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.3-16, 1991-10-01

いちごAn色素の安定性について、以下のような実験を行った。1.いちごジャムを、冷凍、冷蔵、室温(明所、暗所)の4条件で265日間保存した。その結果、An色素は低温(特に冷凍)では安定であり、又、明所と暗所では暗所の方が安定であった。2.いちごAn色素に対するアスコルビン酸の影響は温度依存性が大きいことがわかった。これは、その退色効果が、アスコルビン酸自身によるものが少ないことを示しており、低温で影響が少ないことは、低温でアスコルビン酸が安定であるというデータと合致する。3.食品加工の観点から、いちごとぶどうのAn色素の安定性を比較した。その結果、ぶどうAn色素は特に安定とは言えないが、その退色過程(色調変化の過程)にいちごと大きな差が見られた。試料のいちごを提供して頂いた本学西良祐教授ならびに園芸場管理主任細井久夫氏、ぶどう果皮色素を提供して下さった三栄化学工業株式会社に感謝いたします。又、いちごビタミンCの安定性について、卒業研究で26期卒業の坂本あすかさん、百済けい子さんの協力がありました。なお、本研究の一部は、第12回(1991)家政学会関西支部研究発表会において発表した。
著者
西村 智行 持丸 義弘
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.63, no.611, pp.2309-2315, 1997-07-25
被引用文献数
1 1

A spectral finite difference method with domain decomposition is used to solve the Navier-Stokes equation for incompressible fluids. In the domain decomposition method, some subgrids consisting of multiple orthogonal curvilinear coordinate systems and of overlapping region (s) are adopted, and one-dimensional interpolation is applied to the overlapping region in the case of two-dimensional analysis to obtain neighboring values corresponding to a virtual boundary. Mass conservation on a virtual boundary is assured using a mass imbalance correction. Present numerical analyses for two-dimensional, internal, doubly-connected or triply-connected flow fields consisting of cylindric and elliptic boundaries show good consistency, accuracy and efficiency.