著者
西村 直道
出版者
名寄市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

メトキシ化されたペクチンが大腸内に常在する細菌によって発酵される際、メタノールが遊離され生体に供給される可能性を明らかにするため、メトキシ化度の異なるペクチンをラットに与えたときのメタノール遊離量および血中ギ酸濃度の変化を調べた。その結果、ペクチンは大腸内発酵でメタノールを遊離し、生体内へのメタノール供給源となることが判明した。この発酵には、大腸菌が寄与していることもわかった。また、高メトキシペクチンほどメタノール遊離量が多く、血中ギ酸濃度の上昇を引き起こす可能性も示唆された。以上より、ペクチンは大腸内発酵によって生体内にメタノールを供給することがわかった。
著者
西村 直道
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

腸内細菌叢の多様性低下を発端とする細菌叢の撹乱(dysbiosis)は、さまざまな疾病発症に関与しているため、細菌叢の多様性を高く保持することが重要である。しかし、高多様性を駆動する因子は不明なままである。腸内細菌の多くはビタミンB12やその類縁体(以下、B12/類縁体)を必要とするが、大部分の細菌種は合成能がないため、一部の細菌が合成するB12/類縁体に依存する。したがって、これらを大腸に安定供給することが細菌叢の高多様性を維持すると考えられる。本研究では、高多様性細菌叢を維持するB12/類縁体組成を見出し、その組成を実現する細菌種とこの細菌種を増やす食事因子を特定する。
著者
西村 直道 井上 亮
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

腸内細菌による大腸発酵で生成した水素は疾病発症に関わる酸化ストレスを軽減する。本研究では、大腸で高水素生成を可能にする難消化性糖質の化学特性および腸内細菌叢を解明し、高水素生成が生体内レドックスバランスに与える影響を調べた。その結果、グルコース以外の構成糖からなる重合度の低い難消化性糖質で水素生成が高まることが判明した。また、水素を高める腸内細菌叢が存在し、これを移植すると水素生成が一層亢進することがわかった。また、水素生成を高めれば、α-トコフェロールの再生を促進することで生体の酸化ストレスを軽減することがわかった。
著者
西村 直道
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.11-19, 2008 (Released:2008-12-19)
参考文献数
35
被引用文献数
2 2

高コレステロール血症を引き金とする動脈硬化症や心臓疾患が増加し,食品成分によるコレステロール代謝の正常化が重要視されている。著者は食物繊維およびタウリンによる血漿コレステロール濃度の低下機構を,それらの消化管内における作用に着目して調べた。その結果,発酵性の高い甜菜食物繊維(BF)で血漿コレステロール濃度低下作用が強く誘導されることを見出した。また,BFの作用発現に大腸の存在が必須で,大腸発酵が関与していることを明らかにした。有効な発酵産物の特定には至っていないが,発酵亢進だけでなく,糞中胆汁酸排泄の増加が同時に誘導されることが作用発現に重要であることを示唆した。タウリンの血漿コレステロール濃度低下作用には糞中胆汁酸排泄の増加が強く寄与していることを明確にした。この糞中胆汁酸排泄の増加がコレステロール7α-水酸化酵素の発現亢進ではなく,おもに回腸末端からの胆汁酸の吸収抑制に起因することを強く示唆した。以上より,血漿コレステロール濃度の低下が,食物繊維では消化管下部における発酵性に,タウリンでは回腸末端以降における胆汁酸吸収の抑制に起因することを示した。