著者
齋藤 忠夫 北澤 春樹 川井 泰 西村 順子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ヒト大腸に棲息するプロバイオティクスに対して、とくに硫酸基とシアル酸に対する腸管付着性の高い有用細菌を探索する方法を構築し、実際に多くの微生物を単離してライブラリー構築に成功した。大腸ムチンの血液型別に結合する血液型乳酸菌に続いて、世界で初めて血液型ビフィズス菌も発見した。実際に潰瘍性大腸炎(UC)の発症候補菌であるフソバクテリウム・バリウム(バリウム菌)が血液型抗原を認識結合することを発見し、血液型乳酸菌を投与することで腸内での競合阻害により原因菌を排除する予防医学的な可能性を見出すことが出来た。
著者
郭 暁艶 上西 寛司 川井 泰 安田 成美 春日 元気 竹澤 志織 瀬戸 泰幸 西村 順子 北澤 春樹 齋藤 忠夫
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.129-135, 2014

ガセリシン T (GT)は,ヒト腸管より検出される乳酸桿菌 <i>Lactobacillus gasseri</i> により生産される二成分性バクテリオシンである。また,当研究室で分離したヒト乳児由来の GT 生産 LA158株を含む <i>L. gasseri</i> は,改良乳培地で良好に生育するものの,乳中に豊富に存在する二価金属イオンにより LA158株の GT 生産は抑制されることが知られている。本研究により,GT 生産株として最初に見出された,抗肥満効果を有する <i>L. gasseri</i> SBT2055は,MRS 培地にて二価金属イオン(Mg<sup>2+</sup>,Ca<sup>2+</sup>, Mn<sup>2+</sup>, Fe<sup>2+</sup> および Zn<sup>2+</sup>)の添加により濃度依存的に GT 生産が抑制されることが判ったが,LA158株における抑制濃度(Mg<sup>2+</sup> および Ca<sup>2+</sup>)とは異なっていた。また,200 mM の二価金属イオン添加では,良好に生育するにもかかわらず,GTの生産は完全に消失した。さらに,二価金属イオンのキレート剤で食品添加物であるクエン酸三ナトリウム(TSC)の添加によりGT 生産は回復した。以上の結果から,ヨーグルト製造においてスターターの生育を阻害せずに,GT 生産性のプロバイオティック <i>L. gasseri</i> 株を効果的に添加・利用出来るものと考えられた。