著者
九郎丸 正道 西田 隆雄 望月 公子 林 良博 服部 正策
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.795-799, 1982-10-25

食虫目トガリネズミ科に属するワタセジネズミの小腸粘膜を光顕, 走査型・透過型電顕で観察した. 腸管は短く, 体長・腸管長比は1:1.5でとくに大腸がきわめて短く, 盲腸は欠如していた. 大腸粘膜はひだ状構造をもち, 小腸絨毛表面は小皺襞に乏しかった. 十二指腸腺は, 近位部に限局し, パネート細胞は欠如していた. 以上の所見はスンクスの腸粘膜と類似していた.
著者
遠藤 秀紀 九郎丸 正道 西田 隆雄 服部 正策 林 良博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.119-123, 1992-02-15
被引用文献数
2

心筋組織の肺静脈壁への分布が, 多くの哺乳類で報告されている. 同組織の哺乳類における系統発生学的起源を明らかにする目的で, 食虫類ジャコウネズミ(スンクス)の肺内肺静脈を, 光顕及び電顕を用いて観察した. 心筋組織は肺門部より肺内肺静脈小枝にまで広く分布し, 同構造の系統発生学的起源は, 最も原始的な哺乳類のグループにまで, さかのぼることができると考えられた. 微細形態学的には, 肺静脈の心筋細胞は, 左心房の心筋細胞と類似し, 大型の脂肪滴の分布が特徴的であった. また, これらの結果から, 同構造が肺循環血流の制御に寄与していることが示唆された.
著者
遠藤 秀紀 木村 順平 押尾 龍夫 STAFFORD Brian J. RERKAMNUAYCHOKE Worawut 西田 隆雄 佐々木 基樹 林田 明子 林 良博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.1179-1183, 2003-11-25
被引用文献数
5 12

ホオアカカオナガリス(Dremomys rufigenis)について,マレーシア(半島部)集団,ベトナム(南部)・ラオス集団,タイ(北部)集団の頭蓋骨標本を用い,地理的変異と機能形態学的適応を骨計測学的に検討した.その結果,南部集団は北部の二集団より基本的にサイズが大きかった.プロポーション値の検討から,マレーシア集団では内臓頭蓋が吻尾方向に長く,ベトナム・ラオス集団とタイ集団では眼窩の距離が短いことが明らかになった.マレーシア集団の長い鼻部と側方に向いた眼窩は地上性・食虫性により適応し,眼窩が吻側に向くことで他の二集団で強化される両眼視はより樹上性・果実食性適応の程度が高いことが示唆された.一方,主成分分析の結果から,マレーシア集団とほかの二集団は明確に区別され,この頭蓋形態の集団間の変異には,クラ地峡による生物地理学的隔離が影響していることが推測された.