著者
石黒 直隆 猪島 康雄 松井 章 本郷 一美 佐々木 基樹
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2013-05-15)

絶滅した日本のオオカミ(エゾオオカミとニホンオオカミ)の分類学上の位置をミトコンドリア(mt)DNAのゲノム解析により明らかにし、両オオカミの起源と系譜を海外の考古資料から調査した。エゾオオカミは、大陸のオオカミと遺伝的に近く、ニホンオオカミとは大きく異なっていた。ロシアおよび中国の古代サンプル143検体を解析したが、ニホンオオカミのmtDNA配列に近い検体は検出できなかった。また、モンゴルのオオカミ8検体および国内の現生犬426検体を解析し、ニホンオオカミのmtDNAの残存を調査したが見つからなかった。これらの結果は、ニホンオオカミはオオカミ集団の中でもユニークな系統でることを示している。
著者
遠藤 秀紀 佐々木 基樹 成島 悦雄 小宮 輝之 林田 明子 林 良博 STAFFORD Brian J.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.839-843, 2003-08-25
被引用文献数
1 or 0

ジャイアントパンダの肢端把握時における前腕と手根部の運動を解明するため,遺体を用いて前腕の屈筋と伸筋を機能形態学的に検討した.尺側手根屈筋は発達した2頭をもっていたが,その収縮では尺骨に対する副手根骨の角度が変わることはほとんどないと結論できた.このことは,ジャイアントパンダが物を把握するときに,副手根骨がその把握対象物の支持体として機能していることを示している.また,長第一指外転筋は尺骨と橈骨の双方に発達した起始をもち,前腕の回外筋としても機能していることが明らかとなった.これらの結果から,ジャイアントパンダが橈側種子骨と副手根骨を利用した肢端把握システムを使って食物を口に運ぶ際には,方形回内筋,円回内筋,長第一指外転筋,そして回外筋が,前腕の回内・回外運動に効果的に貢献していることが示唆された.
著者
遠藤 秀紀 福田 勝洋 木村 順平 佐々木 基樹 STAFFORD Brian J.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.1229-1235, s・iii, 2004-10-25

ラオス,タイ,半島マレーシア,スマトラ島,ジャワ島,ボルネオ島,ランカウィ島,およびミャンマー・テナセリム諸島に産するジャワマメジカ(Tragulus Javanicus)の頭蓋の大きさと形の地理的変異を検討した.大陸産集団において気候条件の影響を確認することはできなかったが,テナセリム諸島とスマトラ島産の頭蓋は,島嶼隔離効果のため吻尾方向に長いことが明らかとなった.Qモード相関係数を用いたクラスター分析の結果,次の3つのクラスターが確認された.1)ランカウィ島産とテナセリム諸島産,2)ラオス産とタイ産,3)スマトラ島産とボルネオ島産.ジャワ島産は,雄ではランカウィ島とテナセリム諸島産集団のクラスターに属し,雌ではスマトラ島産とボルネオ島産のクラスターに形態学的に類似した.また,正準判別分析の結果から,ラオス産とテナセリム諸島産は他の集団から分離し,一方でスマトラ島産,ジャワ島産,ボルネオ島産は,判別得点が互いに混在することが明らかとなった.
著者
遠藤 秀紀 木村 順平 押尾 龍夫 STAFFORD Brian J. RERKAMNUAYCHOKE Worawut 西田 隆雄 佐々木 基樹 林田 明子 林 良博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.1179-1183, 2003-11-25
被引用文献数
5 or 0

ホオアカカオナガリス(Dremomys rufigenis)について,マレーシア(半島部)集団,ベトナム(南部)・ラオス集団,タイ(北部)集団の頭蓋骨標本を用い,地理的変異と機能形態学的適応を骨計測学的に検討した.その結果,南部集団は北部の二集団より基本的にサイズが大きかった.プロポーション値の検討から,マレーシア集団では内臓頭蓋が吻尾方向に長く,ベトナム・ラオス集団とタイ集団では眼窩の距離が短いことが明らかになった.マレーシア集団の長い鼻部と側方に向いた眼窩は地上性・食虫性により適応し,眼窩が吻側に向くことで他の二集団で強化される両眼視はより樹上性・果実食性適応の程度が高いことが示唆された.一方,主成分分析の結果から,マレーシア集団とほかの二集団は明確に区別され,この頭蓋形態の集団間の変異には,クラ地峡による生物地理学的隔離が影響していることが推測された.
著者
遠藤 秀紀 横畑 泰志 本川 雅治 川田 伸一郎 篠原 明男 甲能 直樹 佐々木 基樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

旧食虫類における多系統的な形質を機能形態学的に検討した。筋骨格系、消化器系、泌尿生殖器系、感覚器系、皮膚・表皮系などを旧食虫類の諸目間で形態学的に比較検討を行った。その結果、それぞれの器官において、形態学的類似や差異を確認することができ、真無盲腸目、皮翼目、登攀目、アフリカトガリネズミ目などの旧食虫類諸群間の多系統的進化史理論を確立することができた。
著者
遠藤 秀紀 山際 大志郎 有嶋 和義 山本 雅子 佐々木 基樹 林 良博 神谷 敏郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1137-1141, s・iv, 1999-10
被引用文献数
2 or 0

ガンジスカワイルカ(Platanista gangetica)は,ガンジス・ブラマプトラ川周辺の水系に限られて分布する,珍しいイルカである.同種は,原始的とされる形態学的形質が注目されてきたが,近年生息数を減らし,保護の必要性が指摘されている.筆者らは,東京大学総合研究博物館に収蔵されてきた世界的に貴重な全身の液浸標本を利用して,気管と気管支の走行を,非破壊的に検討した.ガンジスカワイルカの気管は,右肺葉前部に向けて,気管の気管支を分岐させることが明らかとなった.MRIデータにおいては,気管の気管支と左右の気管支の計3気道が,胸腔前方において並列する像が確認された.原始的鯨類とされるカワイルカで気管の気管支が確認されることは,鯨類と偶蹄類の進化学的類縁性を示唆している.一方で,左気管支は右気管支より太く発達していた.気管の気管支によって,右肺前葉に空気を供給する同種では,気管支のガス交換機能は,左側が右側より明らかに大きいことが示唆された.MRIによる非破壊的解剖学は,希少種の標本を活用して形態学的データの収集を可能にする,きわめて有効な手段として注目されよう.
著者
佐々木 基樹 遠藤 秀紀 山際 大志郎 高木 博隆 有嶋 和義 牧田 登之 林 良博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.7-14, s・iii, 2000-01
被引用文献数
3 or 0

ホッキョクグマ(Ursus maritimus)の頭部は,ヒグマ(U. arctos)やジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)に比べて扁平で,体の大きさの割に小さいことはよく知られている.本研究では,ホッキョクグマとヒグマの頭部を解剖して咀嚼筋を調べた.さらに,ホッキョクグマ,ヒグマそしてジャイアントパンダの頭骨を比較検討した.ホッキョクグマの浅層咬筋の前腹側部は,折り重なった豊富な筋質であった.また,ホッキョクグマの側頭筋は,下顎骨筋突起の前縁を完全に覆っていたが,ヒグマの側頭筋は,筋突起前縁を完全には覆っていなかった.ホッキョクグマでは,咬筋が占める頬骨弓と下顎骨腹縁間のスペースは,ヒグマやジャイアントパンダに比べて狭かった.さらに,側頭筋の力に対する下顎のテコの効果は,ホッキョクグマが最も小さく,ジャイアントパンダが最も大きかった.これらの結果から,ホッキョクグマは,下顎骨筋突起の前縁を側頭筋で完全に覆うことによって,下顎の小さくなったテコの効果を補っていると考えられる.また,ホッキョクグマでは,咬筋が占める頬骨弓と下顎骨腹縁間のスペースが狭いことから,ホッキョクグマは,ヒグマ同様の開口を保つために豊富な筋質の浅層咬筋前腹側部を保有していると推測される.本研究では,ホッキョクグマが,頭骨形態の変化に伴う咀嚼機能の低下を,咀嚼筋の形態を適応させることによって補っていることが示唆された.