著者
中島 淳 江口 勝久 乾 隆帝 西田 高志 中谷 祐也 鬼倉 徳雄 及川 信
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.183-193, 2008 (Released:2009-03-13)
参考文献数
25
被引用文献数
6 3

宮崎県延岡市の五ヶ瀬川水系北川の河川感潮域に人工的に造成されたワンドにおいて,2001年から2006年にかけて,生物の定着状況について調査を行った.人工ワンドは,従来あった天然の既存ワンドが河川改修により失われるため,その代替環境として,その上流の河川敷を,間口50m,奥行き400mにわたって新たに掘削して造成されたものである.1.調査の結果,72種の魚類,12種のカニ類,7種の甲虫類が採集され,合計91種の生物の生息場所として機能していることが明らかとなった.2.ワンドの底層は年を追う毎に起伏が生じ,平坦に造成された底層は5年後には浅い場所と深い場所で約100cmもの差が生じていた.塩分躍層は,満潮時,干潮時ともに水面下1mより深い水深で生じていた.3.ワンドの奥部には泥干潟やコアマモ域が自然に生じ,それらの環境を好む魚類,カニ類,甲虫類が定着した.4.従来あった天然の旧ワンドと人工ワンドにおいて,夏季に出現した魚類種数に大きな違いはなく,人工ワンドが旧ワンドの代替環境として十分に機能しているものと考えられた.5.感潮域において生物多様性保全を目的とした人工ワンドを今後造成する際には,安定した塩分躍層が出来るように,干潮時でも1m以上の水深を確保する構造にすること,水際域や干潟が自然に出来るように,造成時に緩傾斜区間を多く配置すること,また,ヨシ植生域をなるべく残すこと,など多様な環境構造を創出することを意識して設計することが特に重要と考えられた.
著者
乾 隆帝 西田 高志 鬼倉 徳雄
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-17, 2012 (Released:2012-09-08)
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

本研究では,福岡県日本海側の漁港の船揚場スロープ(以下,漁港スロープ)と,周辺水域の様々なタイプの自然海岸の魚類群集構造を比較することにより,漁港スロープにおける魚類の出現特性を明らかにすることを試みた.漁港スロープでは,70種,合計8875個体の魚類が採集された.漁港スロープ未成魚群集は,静穏で内湾的な地点と類似し,種数,個体数ともに豊富であった.一方成魚の群集構造は,砂浜海岸の一部と漁港によって構成されるグループと類似し,種数,個体数ともに豊富な,静穏な内湾や汽水域の中で,特に緩い潮間帯傾斜を持つ地点とは類似していなかった.これらのことから,漁港スロープは,未成魚の生息場として,一部の内湾的な自然海岸と同等の機能を持つ可能性がある一方,成魚生息場としては不十分な環境であるということが示唆された.
著者
西田 高志 中園 明信 鬼倉 徳雄 及川 信 松井 誠一
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.65-78, 2007-05-25 (Released:2011-06-08)
参考文献数
63
被引用文献数
2

Between July 2002 and June 2005, the fish fauna on the reef in the Tsushima Current, northern Kyushu, was surveyed on a monthly basis by SCUBA diving. A total of 138 species and 42, 769 individuals occurred in the investigated area (1, 200 m2). Five fish species (Halichoeres tenuispinnis, Chromis notata notata, Sebastes inermis, Siganus fuscescens and Girella punctata) comprised approximately 53% of the observed individuals. The number of species and individuals strongly affected the fishes. Based on cluster analysis of the appearance patterns, the observed fishes were grouped into five types: (1) perennial type (Type P) comprising 36 species and 18, 346 individuals, (2) spring type (Type S) comprising 17 species and 2, 655 individuals, (3) summer-autumn type (Type SA) comprising 33 species and 17, 613 individuals, (4) autumn type (Type A) comprising 47 species and 4, 144 individuals, and (5) the others. In addition, differences in the species composition were observed during each season. Thus, fish fauna drastically changed according to the season, which is similar to reefs in temperate waters of Pacific coast of southern Japan.