著者
高岡 宣子 長尾 匡則 梅澤 光政 西連地 利己 春山 康夫 小橋 元
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.133-142, 2017 (Released:2017-03-30)
参考文献数
45
被引用文献数
2

目的 わが国においては再生産年齢非妊婦および妊婦の血中ビタミン D 濃度の分布はまだ明らかにされておらず,周産期と次世代の影響に配慮した妊婦および再生産年齢女性におけるビタミン D 不足の基準値はまだ設定されていない。そこで,本研究では,再生産年齢女性の血中ビタミン D 基準値設定に向けた研究の基礎資料を得ることを目的として,日本人の再生産年齢女性の血中ビタミン D 濃度の分布に関する研究文献の系統的にレビューを行った。方法 対象文献の収載期間は1963年から2015年までとした。医中誌 Web および PubMed でキーワード「日本」,「ビタミン D」,「女」,「妊婦」を含む対象文献の抽出を行った。対象文献に対して年齢,性別,日本人,データの有無,重複の有無の精査を行った結果,18件が採用された。続いて再生産年齢の非妊婦(13件22グループ)と妊産褥婦(6 件 8 グループ)に分け,年齢,測定時期および測定方法により血中ビタミン D の平均値の分布を検討した。結果 日本人再生産年齢の非妊婦に関する13件22グループのうち,10グループ(45.5%)の血中25(OH)D 濃度の平均値は20 ng/ml 未満,21グループ(95.5%)は30 ng/ml 未満であった。一方,非妊婦に比べて妊産褥婦の血中25(OH)D 濃度が低く,妊産褥婦においては妊娠初期(5-10週)の 1 グループ以外はすべて血中25(OH)D の平均値が20 ng/ml を下回っていた。結論 再生産年齢の日本人女性の血中25(OH)D 濃度が,特に妊産褥婦において低値である可能性が示唆された。再生産年齢女性の血中25(OH)D 濃度についてはまだ研究が少なく,更なる研究が必要である。
著者
村越 伸行 許 東洙 西連地 利己 五十嵐 都 入江 ふじこ 富沢 巧治 夛田 浩 関口 幸夫 山岸 良匡 磯 博康 山口 巖 大田 仁史 青沼 和隆
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.236-244, 2016

【目的】一般住民における上室期外収縮の長期予後については,いまだ不明である.本研究の目的は,一般住民健診における上室期外収縮の診断的意義を調べることである.【方法と結果】われわれは1993年の年次一般住民健診を受診し,2008年まで経過を追えた63,197名(平均年齢58.8±9.9歳,67.6%女性)を解析した.一次エンドポイントは平均14年のフォローアップ期間中の脳卒中死亡,心血管死亡,または全死亡,二次エンドポイントは心疾患あるいは心房細動(AF)のない解析対象者における最初のAFの発生とした.上室期外収縮のない解析対象者と比較して,上室期外収縮のある解析対象者のハザード比(95%信頼区間)は,脳卒中死亡:男性1.24(0.98~1.56),女性1.63(1.30~2.05),心血管死亡:男性1.22(1.04~1.44),女性1.48(1.25~1.74),全死亡:男性1.08(0.99~1.18),女性1.21(1.09~1.34)であった.AFはフォローアップ期間中386名(1.05/1,000人年)に発生した.ベースラインでの上室期外収縮の存在は,AF発症の有意な予測因子であった〔(ハザード比(95%信頼区間):男性4.87(3.61~6.57),女性3.87(2.69~5.57)〕.傾向スコアマッチング解析でも,上室期外収縮の存在が交絡因子の補正後もAFの発症および心血管死亡のリスク上昇に有意に関連していた.【結論】一般住民における12誘導心電図での上室期外収縮の存在は,AF発症の強い予測因子であり,心血管死亡リスクの上昇に関連している.