著者
山崎 浩 夛田 浩 関口 幸夫 青沼 和隆
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.SUPPL.2, pp.S2_136-S2_143, 2011 (Released:2012-12-05)
参考文献数
11

四肢および体幹の皮膚硬化を認める全身性強皮症にて加療中の38歳, 男性. 夕食後に数分間の失神発作を認め当院に緊急搬送された. 精査にて, 著明な右室拡大と壁運動の低下, 多源性心室性期外収縮の頻発および加算平均心電図にて遅延電位陽性であり不整脈源性右室心筋症類似の病態が明らかとなった. 電気生理学的検査にて血行動態の破綻する心室頻拍が誘発されたために, 1次予防目的で植込み型除細動器(ICD)を挿入, ならびにソタコール内服で経過観察としたが, 約4カ月後にelectrical stormによるICDの頻回作動を認め再入院となった. トロポニンTの持続高値, QRS幅の拡大, 右室壁運動のさらなる低下の所見から, 右室心筋障害の急速な進行が示唆された. 抗不整脈薬による頻拍のコントロールは困難と考え, 緊急のカテーテル焼灼術を施行した. 右室流出路近傍に認められた心室瘤を最早期とする非持続性心室頻拍が頻発しており, 右室内からの焼灼により, 頻拍は抑制された. 全身性強皮症の皮膚硬化に対するシクロフォスファミドによるパルス療法後に, 持続高値を示していたトロポニンTが正常化した経過より, 不整脈源性右室心筋症類似の心病変は自己免疫機序による慢性心筋炎が原因と考えられた. 本例は失神を契機に発見された不整脈源性右室心筋症類似病態を呈した全身性強皮症の稀な1例と考えられたので, 文献学的考察を加え報告する.
著者
佐藤 明 青沼 和隆 今中 恭子 吉村 耕一 木村 泰三
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

B型大動脈解離症例では、入院1週後の血清テネイシンC(TN-C)値がhs-CRP、D-ダイマー、FDP、解離部位の最大動脈径と正相関し、死亡例は有意に高値であり、血清TN-C値が、B型大動脈解離の短期予後を予測する有用なバイオマーカーであることが判明した。マウス解離モデルにおいてTN-Cはマクロファージ浸潤とVSMCs減少・エラスチン破壊が起こっている解離の移行部位で発現亢進し、主にVSMCsと重複していた。LacZをノックインしたTN-Cレポーターマウスでは、β-gal染色にて中膜が染色され、さらにαSMAとの二重染色を行うとαSMA 陽性細胞が同時にβ-gal も陽性となり、マウス大動脈解離壁のTN-C 産生細胞はVSMCsであることが判明した。
著者
桑原 大志 高橋 淳 高橋 良英 中島 永美子 藤井 昭 久佐 茂樹 大久保 健史 藤野 紀之 野里 寿史 疋田 浩之 小堀 敦志 武居 明日美 佐藤 明 青沼 和隆
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.3-9, 2011 (Released:2011-08-02)
参考文献数
9

【目的】高齢者における心房細動(AF)カテーテルアブレーション治療の成績,手術合併症,長期予後を明らかにする.【対象】当院でAFカテーテルアブレーション治療を施行した75歳以上の102例(男性73例,発作性79例).【方法】肺静脈隔離と非肺静脈由来のAF起源焦点アブレーションを基本とし,必要に応じ左房後壁隔離などを追加した.【結果】肺静脈隔離などの一般的治療のみを施行された患者が95例(93%)であった.手術重大合併症が1例(心タンポナーデ1例)に発症した.アブレーション後937±598日の経過観察において,95例(93%)で洞調律が維持された.死亡,新規脳梗塞発症,心不全による入院の複合エンドポイント回避率は,アブレーション後洞調律を維持している患者で高値を示した.【結論】75歳以上のAF患者に対するカテーテルアブレーション治療は,安全に施行可能であり,その後の洞調律維持効果も十分高く,長期予後改善効果も認められた.
著者
村越 伸行 許 東洙 西連地 利己 五十嵐 都 入江 ふじこ 富沢 巧治 夛田 浩 関口 幸夫 山岸 良匡 磯 博康 山口 巖 大田 仁史 青沼 和隆
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.236-244, 2016

【目的】一般住民における上室期外収縮の長期予後については,いまだ不明である.本研究の目的は,一般住民健診における上室期外収縮の診断的意義を調べることである.【方法と結果】われわれは1993年の年次一般住民健診を受診し,2008年まで経過を追えた63,197名(平均年齢58.8±9.9歳,67.6%女性)を解析した.一次エンドポイントは平均14年のフォローアップ期間中の脳卒中死亡,心血管死亡,または全死亡,二次エンドポイントは心疾患あるいは心房細動(AF)のない解析対象者における最初のAFの発生とした.上室期外収縮のない解析対象者と比較して,上室期外収縮のある解析対象者のハザード比(95%信頼区間)は,脳卒中死亡:男性1.24(0.98~1.56),女性1.63(1.30~2.05),心血管死亡:男性1.22(1.04~1.44),女性1.48(1.25~1.74),全死亡:男性1.08(0.99~1.18),女性1.21(1.09~1.34)であった.AFはフォローアップ期間中386名(1.05/1,000人年)に発生した.ベースラインでの上室期外収縮の存在は,AF発症の有意な予測因子であった〔(ハザード比(95%信頼区間):男性4.87(3.61~6.57),女性3.87(2.69~5.57)〕.傾向スコアマッチング解析でも,上室期外収縮の存在が交絡因子の補正後もAFの発症および心血管死亡のリスク上昇に有意に関連していた.【結論】一般住民における12誘導心電図での上室期外収縮の存在は,AF発症の強い予測因子であり,心血管死亡リスクの上昇に関連している.