著者
鎌田 直人 安江 恒 角張 嘉孝 向井 讓 小谷 二郎 角張 嘉孝 向井 譲 小谷 二郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

ブナの結実に関係する要因として虫害としいなが重要である。しいなの原因として、近交弱 勢の影響が示唆されていたが、有効花粉親数(Nep) 値が低い母樹ほどしいなが多いという本研 究でも指示された。種子生産は年輪生長にはほとんど影響していなかった。しいなや虫害種子 の結実コストは、健全種子の約40%と推定された。しいなや虫害種子が多いと、結実コスト/ 開花コスト比が低くなり、開花数の年次変動が小さくなることによって、開花数の変動が小さ くなり、結果として虫害率が高くなるという悪循環に陥っている可能性が示唆された。
著者
向井 讓 篠原 健司 角張 嘉孝
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

ロドキサンチンの光防御機能を解明することを目的として光合成特性、電子伝達効率(Fv/Fm)、光合成関連タンパク質、色素組成の季節変化などを調べ、以下の結果を得た。(1)ロドキサンチンを蓄積できないミドリスギは野生型のスギ以上に光阻害を受けていたため、ロドキサンチンは光阻害の進行を防止する。(2)被陰処理により光量子量を調節して生育させたスギ苗木を解析し、キサントフィルサイクルの稼働効率が低下し夜間にもゼアキサンチンが残存する条件下でロドキサンチンが蓄積し、蓄積量は過剰な光エネルギーの量と高い相関がある。このため、ロドキサンチンは、夜間にも残存するゼアキサンチンを前駆体として光阻害が引き金となって合成される。(3)標高が異なる4カ所の南向き斜面にあるスギ造林地(標高150m,630m,900m及び1,120m)の陽樹冠の針葉を解析した結果、標高が高いほど光阻害の程度(Fv/Fmの低下率)が大きかった。また、標高間でロドキサンチンの最大蓄積量には差がないが、蓄積及び消失の開始時期には差があるため、ロドキサンチンの蓄積や消失時期が光阻害の指標となる可能性がある。(4)ロドキサンチンが蓄積した厳冬期の屋外の枝を採集し、室内に移して回復過程を解析した結果、夜間のゼアキサンチンが消失した後、ロドキサンチンの消失が始まった。また、消失速度は光阻害の程度が少ないほど早く、ロドキサンチンの消失に伴って減少していた光合成関連タンパク質の量が増加した。(5)九州から北陸に至る地域で選抜されたスギ精英樹クローンを用いて、クロロフィル蛍光及び色素組成の季節変動を解析し、光強度や標高などの環境による変動と、比較するとクローン間の遺伝的変動は小さいが、ロドキサンチンの最大蓄積量や冬期のFv/Fmの最小値にはクローン間で有意な差があり、光阻害耐性品種を選抜できる可能性がある。
著者
湖東 朗 大沼 洋康 角張 嘉孝 Suhail A.ITANI HAFFAR Imad
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.12-19, 1990-07-20

アラブ首長国連邦(UAE)は極乾燥地に属し, 年平均雨量は100mm以下でしかも年変動がかなり大きい。したがって, UAEの農業は井戸水などによる灌がいに依存しているが, 無計画な農業開発は貴重な水資源の枯渇を招くおそれもあり, 潅がい水の有効利用のためには圃場に於ける水収支の研究が非常に重要である。本研究は(1)灌がい頻度がアルファルファの蒸散速度や葉温の日変化及び季節変化に及ぼす影響, (2)これらの因子がアルファルファの生長に及ぼす影響, 及び(3)気象因子がアルファルファの蒸散速度に及ぼす影響などを検討するために行った。ポロメータを用いてアルファルファの蒸散速度及び葉温の日変化及び季節変化を1988年4月, 8月, 11月及び1989年1月に測定した。毎日灌水する高頻度潅がい(F)区及び2日に1日灌水する対照(N)区の2つの区を設定した。灌水頻度が蒸散速度及び葉温に及ぼす影響は11月や1月の比較的寒い時期よりも, 4月や8月の暑い時期の方が大きかった。F区とN区の差は, N区の灌がいをしない日に大きく, 4月と8月におけるN区の蒸散速度はF区のそれよりも小さかった。葉温はN区よりもF区の方が低く, 両区の最大葉温差は4月及び8月にそれぞれ4℃及び6℃であった。アルファルファの草丈及び乾物収量は, 両区における蒸散速度や葉温の違いを反映してF区のほうがN区よりともに10%ずつ高かった。灌がいしない日におけるN区の推定蒸散量(TRn)はF区のそれ(TRf)よりも少なく, TRnとTRfの比は4月, 8月, 11月及び1月についてそれぞれ77%, 72%, 70%及び92%であった。F区の測定データを用いて蒸散速度と光量子量(QU), 飽差(VPD), 相対湿度(RH), 葉温(LT), ポロメータチェンバー温度(CT)との相関を調べた結果, QUとの相関が最も高いことがわかった。また, 光強度を変えて蒸散速度を測定した別の実験でも両因子間に高い相関関係がみられた。さらに, 重回帰分析により上記因子による蒸散速度の予測モデルを検討した。各月のデータについては, かなり高い相関が認められたが, それぞれの回帰係数については季節により違いがみられた。
著者
小宮山 宏 中田 礼嘉 山田 興一 角張 嘉孝 松田 智 小島 紀徳
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1994

平成6年度には大規模スケールでの降雨量分布を予測するためのシミュレータの開発を行った。本シミュレータを地球レベルのグローバルモデルから与えられる境界条件、初期条件等のもとで利用し、オーストラリアでの地表条件と降雨量の関係についての検討を開始した。乾燥条件下における、樹木および毛管力作用による地下水、特に塩水の上方への移動、地上部での塩分蓄積を模擬土壌を用いて検討した。その結果、太陽光を想定した赤外線照射条件下で水分移動が促進され、表層への塩の蓄積を抑制しうることが分かった。また、砂漠に降雨をもたらすためには湿潤な空気と上昇気流が必要であり、人工山の設置する方法と、熱対流により上昇気流を起こす方法とがリストアップされ、検討を進めている。湿潤空気の発生については、人工の浅瀬による蒸発促進を考え、浅瀬での湿潤空気の生成過程を定量化するため、浅い水面上での熱収支モデルを構築し、任意の条件下で平衡水温と水の蒸発速度を推算できるようにした。さらに、砂漠緑化の水収支のうち、モデル実験により蒸散量・土壌水分・地表面蒸発の総合依存関係を調べた。植物の蒸散による水の持ち去りは土壌水分量の豊かさに比例するが、土壌がある程度乾燥すると蒸散量はむしろ抑制されることが明らかになった。平成7年度は前年度に引き続いて砂漠気象シミュレーションのプログラム開発、および要素技術のモデル化を進めるとともに緑化シナリオの策定および評価を行った。西オーストラリア砂漠内に海岸を含む600km×600kmの領域を設定し、物質収支、エネルギー収支に基づくプログラム計算を行い、大気中の水蒸気量や降雨量の変化を求めた。その結果、アルベド、表面の起伏、含水率を変化させることにより、大気中の水蒸気量や降雨量を増加させることができた。さらに砂漠緑化シナリオの具体性を高めるには、緑化により固定された炭素のコストを計算するとともに、他の対策技術と比較を行うことが必要であり、そのための評価手法および一時的評価の具体例を検討した。二酸化炭素問題は地球温暖化問題、エネルギー問題とも重なる部分が多く、これらへの副次的効果についても検討を進めた。