著者
谷出 千代子
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.109-120, 2010-12-30

「イソップ寓話」は海外の物語としては日本に最も早く入って来た物語である。その話の定かな数には多くの異論があり、今だ定まっていない。当研究では明治期から大正末期までに翻訳、再話された寓話の中で、いずれの出版物にもほぼ搭載されている「犬とその影」に限って、その表現形態から寓話としての特性である訓蒙までについて詳細に比較分析を試みた。その背景には、今日、保育教材の素材として扱われているにもかかわらず、「盗む」という用語が作品の冒頭から3回も使用され、さらに印刷を初版から4回重ねているにもかかわらず改訂版に至っていない実態について、果たして許容されている理由は何かを探求しようとしたことである。結果として、歴史的に時代を遡ると「盗む」というキーワードの表記されている作品、そうでなく「犬が肉塊を銜えて登場する」ところから始まる作品の両方ともが存在したことが判明した。また、読者は話の内容(展開)で充分に道徳律、いわゆる訓蒙を受容できるにもかかわらず、史的に著名な文人たちによって執拗に訓蒙の解説を力説し、多くのスペースを割いていることも時代の特性として検証できた。
著者
谷出 千代子
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.78-86, 2013-03-31

イソップ寓話「蟻と蟬の事」,または「蟻と螽蟖の事」など底本とする原話によって表記やプロットの展開が異なるこれらの話は,日本に最も早く入ってきた外国の物語である. そこで,天草本,古活字本,影印本などと称される底本としてのイソップ寓話の特色がどのように時代と共に流布し人々に扱われてきたか,さらには読者層の相違によって翻訳者はいかに翻刻を重ねたか,翻訳のもつ役割を吟味してきたかなど,文章表現と絵画描写(挿絵)を通して,入手,管見の可能となった明治期,大正期発刊本に限って分析検証してきた. 結果として,翻刻や翻訳にこだわりを持ち,用語使用に対しても厳しい態度で臨んでいると思われる物語に向き合うことができた.文化的には日本という国柄の精神性を重視し,大和魂に固守する余り,今日的時代性から判断すると,諧謔的な想像性と創造性に拘りと時代性を受容できた検証であった.
著者
谷出 千代子 池田 涼子 伊東 知之 篭谷 隆弘 森 俊之
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.63-69, 2009-12-30

異学科学生に専門性を共有させながら,キーワード「絵本」に基づいてそれぞれの専門分野を展開し,実践可能なエリアで子育て支援のあり方を各教員と学生が模索しながら3年間の実践を重ねた.その中で次世代子育て予備軍としての学生たちは,どのように「絵本」を受容して子育て実践教育に資することが出来たか事後調査を中心に,実践学生群と非実践学生群の比較から検証した.結果,両群共に子育て支援の媒材としての絵本と,彼らが解釈する絵本の意味・位置付けが異なることが検証された.さらに,体験してきた過去の絵本観と子育て支援に資するための絵本観も体験の有無に関係なく異質であることも判明した.しかし,子どもとの接点,子どもに対する姿勢の在り方は体験の有無で差異が見られた.拠って,世相の流れのなかでブックスタート活動などの活発化から鑑みても,子育て支援の媒材としての絵本観,すなわち意味と位置付けを,学生を含めた子育て中の母親に対しても,その役割を解く必要性を明らかにした.
著者
森 俊之 谷出 千代子 乙部 貴幸 竹内 惠子 高谷 理恵子 中井 昭夫
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.61-67, 2011-12-30

ブックスタートに取り組んでいる自治体と取り組んでいない自治体を比較することで,乳幼児期からの絵本の読み聞かせがその後の子どもの読書習慣に及ぼす影響を検討した.7年間以上ブックスタートに取り組んでいる自治体と未だ取り組んでいない自治体を1か所ずつ選び,当該自治体の公共図書館の近隣に立地する小学校7校で,1年生の子どもをもつ保護者を対象に子どもの生活習慣や読書環境に関するアンケート調査を行った.乳児期におけるブックスタートの体験が,小学1 年生の時点での読書習慣を増やし,ゲーム習慣を減らすという結果が見出された.また,乳児期に親子でブックスタートを体験することで,保護者の図書館利用頻度が高まり,保護者による子どもへの読み聞かせの頻度が高まるという結果も示された.ブックスタートは,保護者の読み聞かせ行動などを変化させ,それにより小学校入学後の子どもの読書習慣など生活習慣に影響を及ぼすと考えられる.
著者
伊東 知之 谷出 千代子
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.121-130, 2010-12-30

父親の育児参加は子どもや母親にとって安定した生活観を保持する上で大切なことであることは周知の通りである。次世代育成支援対策推進法の施行により、都道府県、市町村の子育て支援に対する具体策の実施が各地で始まり、福井県でも「父親子育て応援企業」・「父親の子育て力向上推進事業」への支援をスタートさせ、父親の育児参加への方向性を明確化しようとしている。その中で、特に父親を取り巻く環境における体制作りから具体的育児実践法への試みがより必要となって来た。拠って、その実践活動を保育士養成機関が実施した場合にみる、望ましい活動の在り方をワークショップを通して検証したものである。結果として出前型実践講座が幅広い父親の育児参加と家庭における実践につながることが判明した。