著者
石川 昭義 西村 重稀 矢藤 誠慈郎 森 俊之 青井 夕貴
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.30-38, 2013-03-31

平成23 年8 月に,A市(政令指令都市)の保育所289 園とB県の保育所278 園の所長を対象に調査を依頼した(保育所長の保育所運営に係る意識に関する調査).本稿では,調査質問項目の中から,四大卒及び男性保育士の採用に係る調査結果と併せて,新たに実施したヒアリング調査の結果を報告する.保育所長は,四大卒保育士の採用については,「どちらともいえない」という回答が最も多く(56.1%),ついで「ややそう思う」(24.1%)という回答が多かった.四大卒の保育士に期待する領域としては,「子どもの発達過程の理解」,「ソーシャルワークの知識・技能」,「保護者からの相談対応」が高かった.今後の男性保育士の採用については,「どちらともいえない」(38.4%),「ややそう思う」(30.0%)という回答が多かった.男性保育士の採用をめぐる自由記述では,採用に積極的な意見から消極的な意見まで,多様な見解があることが判明した.同時に,保育士の給与のベースとなる運営費の在り方という課題も浮かび上がった.
著者
中野 研也 Nakano Kenya
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
no.7, pp.117-125, 2015

フォーカル・ジストニアは,症状の程度によっては,その演奏活動を断念せざるを得ない程の深 刻な事態となる場合も少なくなく,楽器の演奏家や歌手にとって難しい問題となっている.フォー カル・ジストニアの認知度は,近年徐々に高くなっているが,病院は不明であり根本的な治療法や 解決法は未だ確立していない.本稿では,演奏家がフォーカル・ジストニアに罹患した場合におい て如何なる方法で克服したらよいのか,実践的対処法について演奏者の視点から考察する.
著者
谷出 千代子
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.109-120, 2010-12-30

「イソップ寓話」は海外の物語としては日本に最も早く入って来た物語である。その話の定かな数には多くの異論があり、今だ定まっていない。当研究では明治期から大正末期までに翻訳、再話された寓話の中で、いずれの出版物にもほぼ搭載されている「犬とその影」に限って、その表現形態から寓話としての特性である訓蒙までについて詳細に比較分析を試みた。その背景には、今日、保育教材の素材として扱われているにもかかわらず、「盗む」という用語が作品の冒頭から3回も使用され、さらに印刷を初版から4回重ねているにもかかわらず改訂版に至っていない実態について、果たして許容されている理由は何かを探求しようとしたことである。結果として、歴史的に時代を遡ると「盗む」というキーワードの表記されている作品、そうでなく「犬が肉塊を銜えて登場する」ところから始まる作品の両方ともが存在したことが判明した。また、読者は話の内容(展開)で充分に道徳律、いわゆる訓蒙を受容できるにもかかわらず、史的に著名な文人たちによって執拗に訓蒙の解説を力説し、多くのスペースを割いていることも時代の特性として検証できた。
著者
柿本 真代 Kakimoto Mayo
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.59-69, 2017-03-31

本論文の目的は,少年雑誌に残された書き入れから,明治期の雑誌と青少年の読書の実態を検討することにある.明治期の少年・少女雑誌と読者については,これまで投稿欄の分析を中心に多くの研究が蓄積されてきたが,本稿では雑誌から読み取れる読書のあり方を相対化し,個々の読書実践についてより具体的に明らかにするべく,雑誌本体に残された書き入れを用いた.国文学研究資料館・東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター明治新聞雑誌文庫・大阪府立中央図書館国際児童文学館で調査を行った結果,感想や批評など,多様な読書反応の記録が浮かび上がった.
著者
西村 重稀
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.71-82, 2009-12-30

本研究は2009年7月6日から2009年7月11日までノルウェーのオスロで第11回ヨーロッパ心理学会が開催された時,オスロの公立保育所〔ノルウェー語でBarnehage(バルネハーゲ)〕を訪問し,園長や文献等からの情報をもとに,○ノルウェーの少子化の動向と次世代育成支援について○ノルウェーの教育の概要○ノルウェーの保育施設の3つの視点からまとめたものである.特に保育施設については保育施設の概要.保育内容.保育施設の職員.保育施設の現状.保育施設への助成.オスロのバルネハーゲ(保育施設)を視察し,まとめたものである. ノルウェーは男女共同参画が進み,かつ女性の社会進出が進んでいる国である.しかし,合計特殊出生率は日本に比べて高く,1.9を超えている. 次世代育成支援策については児童手当や育児休業制度の促進,男性の育児参加のための制度の充実等を図っているが,バルネハーゲ(保育施設)の待機児童は多く,バルネハーゲ(保育施設)の施設整備を官民挙げて促進している.施設の定員は60名から90名程度で日本のように200名を超える大規模な施設は少ない.バルネハーゲ(保育施設)は幼稚園機能と保育所機能を併せてもつ幼保一元化であり,国の所管は子ども家庭省である.保育内容も教育とケアである.また,オンブズマン制度が良く発達した国である.
著者
大野木 裕明
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.97-107, 2010-12-30

太宰治の小説「瘤取り」(『お伽草紙』所収)に現れる登場人物2名のキャラクターを心理学的方法によって把握するために、研究1では分析ツールとして「ジョハリの窓」理論を用いて作品中のキャラクター記述の箇所を分類整理した。研究2ではSD 法(5件法12尺度)を大学生男女合計181名に対して実施し、彼らが読後にイメージとして抱いた登場人物2名のプロフィールを検討した。
著者
谷出 千代子
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.78-86, 2013-03-31

イソップ寓話「蟻と蟬の事」,または「蟻と螽蟖の事」など底本とする原話によって表記やプロットの展開が異なるこれらの話は,日本に最も早く入ってきた外国の物語である. そこで,天草本,古活字本,影印本などと称される底本としてのイソップ寓話の特色がどのように時代と共に流布し人々に扱われてきたか,さらには読者層の相違によって翻訳者はいかに翻刻を重ねたか,翻訳のもつ役割を吟味してきたかなど,文章表現と絵画描写(挿絵)を通して,入手,管見の可能となった明治期,大正期発刊本に限って分析検証してきた. 結果として,翻刻や翻訳にこだわりを持ち,用語使用に対しても厳しい態度で臨んでいると思われる物語に向き合うことができた.文化的には日本という国柄の精神性を重視し,大和魂に固守する余り,今日的時代性から判断すると,諧謔的な想像性と創造性に拘りと時代性を受容できた検証であった.
著者
堀江 和代 菅瀬 君子 堀江 祥允
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
no.2, pp.35-41, 2010

Five female volunteers aged at 15-18 years who belonged to a professional ballet studio in a fairly high level in the world were intervened for six months using the education program aiming at training their bodies by diet and exercise to attain16-17of BMI index and 16-18 percentages of body fat content. All the volunteers showed slight decreases in body fat, but failed to reach the starting goal. The failure seems to be attributedmainly to that the volunteers are not able to carry out ballet training as they consume lots of time at high school or college.
著者
谷出 千代子 池田 涼子 伊東 知之 篭谷 隆弘 森 俊之
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.63-69, 2009-12-30

異学科学生に専門性を共有させながら,キーワード「絵本」に基づいてそれぞれの専門分野を展開し,実践可能なエリアで子育て支援のあり方を各教員と学生が模索しながら3年間の実践を重ねた.その中で次世代子育て予備軍としての学生たちは,どのように「絵本」を受容して子育て実践教育に資することが出来たか事後調査を中心に,実践学生群と非実践学生群の比較から検証した.結果,両群共に子育て支援の媒材としての絵本と,彼らが解釈する絵本の意味・位置付けが異なることが検証された.さらに,体験してきた過去の絵本観と子育て支援に資するための絵本観も体験の有無に関係なく異質であることも判明した.しかし,子どもとの接点,子どもに対する姿勢の在り方は体験の有無で差異が見られた.拠って,世相の流れのなかでブックスタート活動などの活発化から鑑みても,子育て支援の媒材としての絵本観,すなわち意味と位置付けを,学生を含めた子育て中の母親に対しても,その役割を解く必要性を明らかにした.
著者
大野木 裕明
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.53-61, 2009-12-30
被引用文献数
1

親子間の心理的離乳に関して2つの研究を行った.研究1では親子間の心理的離乳と心理的距離の定義・測定方法を文献的に検討し次の結果を得た.1)心理的離乳と心理的距離は非常に似た概念として扱われ概念上の区別を明確にした研究は見出されなかった.2)心理的離乳の過程のうち自立や尊敬・軽蔑といった心理面を心理的距離の語によって表現する研究がいくつか見出された.研究2では女子青年301名に対して質問紙調査を実施し次のような結果を得た.3)親子間の呼称変化の時期は中学生かあるいは変化しないという2極化傾向にあった.4)呼称変化に関する自由記述から反抗期,お互いの照れ,対等の大人,他者の目・暗黙の圧力・世間体,気分・対人的スキル,間合い・距離感の6つの呼称変化の理由が得られた.5)心理的離乳に関する自由記述には,好意,嫌悪,親密,疎遠,尊敬,軽蔑,既知,未知,関心,無関心,依存,独立,信頼,不信などの語が多く書かれていた.これにより,西平(1990),落合(1995)らの心理学的離乳の仮説が,本調査の回答者の素朴な記述と概ね矛盾しないことが確認された.6)時間的距離(時間間隔),空間的距離,心理的距離の3側面について親子の距離感を5件法で尋ねたところ,3つの距離間には有意な正の相関が得られた.また,3つの距離得点ともに,父親よりも母親に対する距離の方が有意に近かった.
著者
桑守 豊美
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-17, 2011-12-30

On March 11, 2011, the Great East Japan Earthquake inflicted unprecedented damage, causing amassive tidal wave and leading to a disaster at the Fukushima Nuclear Power Plant. Motivated by areport on the nuclear accident at Chernobyl, the present report examines the handling of radioactivematerial, focusing on the National Research Center of Nutrition and Health in Kiev, Ukraine, thecountry where Chernobyl is located. Although 25 years have passed since the disaster in Chernobyl,many lessons can be learned, such as how to develop a system for measurement of the amount ofcesium in food products, how to deal with the public, and more.
著者
堀江 和代 菅瀬 君子 小嶋 汐美 堀江 祥允
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.7-12, 2013-03-31

Food-cultural exchanges between Koreans and Japanese people since the ancient era have been widely known. In the present studies, the food acculturation of Koreans to the Japanese was studied. Three groups of volunteers, the Korean living either in Seoul(n=44, aged 45±5 years) or in Aichi prefecture, Japan(n=48, aged 45±10 years), and the Japanese living in Aichi prefecture,Japan(n=57, aged 43±9 years) were recruited. The participants answered a series of questions by questionnaires to measure the effect of Korean foods including seasonings on Japanese ones.The data collected showed that the daily meals of the Koreans living in Japan were affected well by both Korean and Japanese foods and a variety of seasonings, and they extended their daily menus, particularly the usage of traditional seasonings remained distinctively.
著者
坪田 信子
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
no.3, pp.83-95, 2011

歌曲の生命を大きく担っているのは 「詩= ことば」である. 世界各国にはそれぞれの母国語に よる詩に付曲された歌曲があり,わが国ではそれが,日本語の原詩による「日本歌曲」となる. 本研究ではその視点を「歌詞の背景」に置き,「日本歌曲」の原点となった明治以降の学校唱歌 と,* 文部(科学)省小学校学習指導要領音楽科に示されてきた表現(歌唱)分野の「** 共通教 材曲」に焦点を当てて,引き続き探究を進めるものである. 研究(その1)では,明治末期から今 日までの約100 年間,小学校音楽教育の教材となった歌曲において,その不可欠の要素である「歌 詞」はどのように認識され位置してきたかと言う視点から探究をすすめた. その結果「共通教材曲」 には,「日本歌曲」の成立・発展の過程へと受け継がれた「日本の心」と言う抒情性を深く育む源 となった歴史的意義があることが改めて確認された.本研究(その2)では,それらの「共通教材曲」 の「歌詞」は唱歌教育のなかではどのように解釈・指導され世代を超えて受け継がれたのかについ て,その背景の一端を探るものである. * 文部科学省/平成13 年度の中央省庁再編により旧「文部省」と旧「科学技術庁」が統合した名称 ** 共通教材曲/小学校指導要領で学年ごとに歌唱と鑑賞それぞれに示された3 ~ 4 曲の必修指導曲
著者
伊東 知之 谷出 千代子
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.121-130, 2010-12-30

父親の育児参加は子どもや母親にとって安定した生活観を保持する上で大切なことであることは周知の通りである。次世代育成支援対策推進法の施行により、都道府県、市町村の子育て支援に対する具体策の実施が各地で始まり、福井県でも「父親子育て応援企業」・「父親の子育て力向上推進事業」への支援をスタートさせ、父親の育児参加への方向性を明確化しようとしている。その中で、特に父親を取り巻く環境における体制作りから具体的育児実践法への試みがより必要となって来た。拠って、その実践活動を保育士養成機関が実施した場合にみる、望ましい活動の在り方をワークショップを通して検証したものである。結果として出前型実践講座が幅広い父親の育児参加と家庭における実践につながることが判明した。