- 著者
-
谷原 真一
- 出版者
- 自治医科大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1999
地域における多・重複受診者の受療行動及び服薬状況などの実態把握を目的として、T県A市の老人医療受給対象者のうち、1997年6〜8月又は1998年6〜8月の期間で受診件数(診療報酬請求明細書の枚数)が上位1%の者(多受診者)、及び1月間に同一診療科を3か所以上受診したか、2月以上連続して同一診療科を2か所以上受診した者(重複受診者)を対象に保健婦による聞き取り調査を実施した。調査対象とされた317人中、241人(76.0%)から回答が得られた。薬剤服用状況については、処方された薬剤を全て服用すると回答した者が202人(83.8%)、一部のみ服用すると回答した者が39人(16.2%)であった。1日に処方されている薬剤数の合計は、平均11.8錠であった。最大値は37錠であり、「なし」と回答した者が5名認められた。1日平均5-9錠を処方されている者が全体で73人(30.3%)ともっとも多く、33人(13.7%)が1日20錠以上の薬剤を処方されていた。薬剤服用状況別に1日の平均処方薬剤数をみると、一部のみ服用すると回答した群が10.2錠、全て服用すると回答した群が12.2錠と、全て服用する者の方でより多くの薬剤を処方されている傾向が認められた。老人保健医療給付対象者中の多・重複受診者の大半が処方された薬剤を全て服用していたことが明らかになった。しかし、実際に受けている医療行為の全てが有効に利用されているわけではない事例も存在することが示された。高齢者に必要な医療サービスを提供しつつ、医療費の高騰を抑制するためには、多・重複受診者と判定されたものを一律に指導するのではなく、診療内容に関する情報を把握しておくことが重要と考えられた。