著者
江口 弘久 谷原 真一 中村 好一 柳川 洋
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

(1)各県ごとの患者把握率Gは、疾病の種類に関係がない。(2)小児人口あたり突発性湿疹発生には地域変動がない。以上の仮定を設定し、小児あたり定点数地域格差および年末年始、連休などの受診への影響を調整した患者報告数の都道府県格差を比較するモデルを構築した。このとき、サーベイランスで報告されている定点あたりの患者数をPとすると、その県での小児人口あたり患者数T1とのあいだには、P×(定点数)=(小児人口)×T1×Gの関係が成り立つ。よって定点あたり患者数Pは、P=(小児人口)×T1×G÷(定点数)と表すことができる。突発性湿疹の定点当たりの患者数をESとすると、小児人口あたり患者数T2について、同様に、ES×(定点数)=(小児人口)×T2×Gであるから、ES=(小児人口)×T2×G÷(定点数)と表すことができる。よって、各都道府県についてP/ES=T1/T2となる。仮定から、突発性発疹の発生率T2は地域差がない定数としたので、P/ESの値を比較することで、地域格差を検討することが可能になる。実際に突発性発疹の定点あたり患者数を分母に用いた数値による検討では、麻疹の場合、1995年の北海道東北地域では第5週〜20週にかけてほぼ一定の値を示し、特続的な麻疹患者発生が考えられた。1996年では近畿、四国地域に前後の週と比較して著しく高い値が観察された週が存在し、サーベイランスシステムにおけるデータ入力ミスの可能性が考えられた。九州地域では福岡県で定点あたりの患者報告数では他の県と比較して高くなっていたが、この指標では大きな格差は認められなかった。各都道府県の小児あたり定点数の地域格差が是正されたために地域格差が観察されなかった可能性がある。
著者
高尾 総司 谷原 真一 浜田 淳 Ichiro KAWACHI
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、企業における運動イベントの機会を介入とみなし、ソーシャル・キャピタル(SC)が醸成されるかどうかを評価した。なお、対照群の設定が困難であったことから、デザイン上の工夫を行い、擬似的に比較を行った。結果の概要は、天井効果により運動イベントへの参加に伴う明確なSC醸成は観察できなかった。基盤整備に関しては、フィンランドの公務員コホートとのデータ・ハーモナイズ等について研究者間で意見交換した。
著者
谷原 真一
出版者
自治医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

地域における多・重複受診者の受療行動及び服薬状況などの実態把握を目的として、T県A市の老人医療受給対象者のうち、1997年6〜8月又は1998年6〜8月の期間で受診件数(診療報酬請求明細書の枚数)が上位1%の者(多受診者)、及び1月間に同一診療科を3か所以上受診したか、2月以上連続して同一診療科を2か所以上受診した者(重複受診者)を対象に保健婦による聞き取り調査を実施した。調査対象とされた317人中、241人(76.0%)から回答が得られた。薬剤服用状況については、処方された薬剤を全て服用すると回答した者が202人(83.8%)、一部のみ服用すると回答した者が39人(16.2%)であった。1日に処方されている薬剤数の合計は、平均11.8錠であった。最大値は37錠であり、「なし」と回答した者が5名認められた。1日平均5-9錠を処方されている者が全体で73人(30.3%)ともっとも多く、33人(13.7%)が1日20錠以上の薬剤を処方されていた。薬剤服用状況別に1日の平均処方薬剤数をみると、一部のみ服用すると回答した群が10.2錠、全て服用すると回答した群が12.2錠と、全て服用する者の方でより多くの薬剤を処方されている傾向が認められた。老人保健医療給付対象者中の多・重複受診者の大半が処方された薬剤を全て服用していたことが明らかになった。しかし、実際に受けている医療行為の全てが有効に利用されているわけではない事例も存在することが示された。高齢者に必要な医療サービスを提供しつつ、医療費の高騰を抑制するためには、多・重複受診者と判定されたものを一律に指導するのではなく、診療内容に関する情報を把握しておくことが重要と考えられた。
著者
尾島 俊之 谷原 真一 中村 好一
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

【研究目的】従来のコホート研究は、死亡や生活習慣病への罹患をエンドポイントにしたものがほとんどである。しかし、WHO憲章で健康の定義が、心理的、社会的健康も含むとされているように、昨今は、QOL(生命の質)を目指した保健福祉活動が必要であると考えられるようになった。さらに、近年は、損失生存年数(PYLL)などの分析から、自殺の重要性が認識され、うつ状態が重視されている。そこで、脳血管疾患の有病者、その他、様々な状況の人について、これらの要因の状況等を明らかにし、特にうつ状態の危険因子を明らかにすることを目的とした。【研究方法】脳血管疾患罹患率の高いA地区の住民を対象として、コホート研究のデザインで実施した。まず、ベースライン調査を実施した。調査は、訪問面接調査、家庭血圧測定を実施した。調査項目には、ADL(Activities of Daily Living)、手段的ADL、SF-36(Short Form)によるQOL、睡眠状況なども含まれる。また、一部の対象者に関しては、血液検査、24時間血圧、心臓超音波検査などを含むより詳細な検査を行った。最終年度に、再度、訪問面接調査、家庭血圧測定を実施し、エンドポイントデータとした。この中には、知識・態度・行動(KAP)、CES-D(the Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)による抑うつ度、ストレスなども含まれる。【結果】CES-Dによる抑うつ度に関しては、7.7%が抑うつ状態にある結果であった。一人暮らしは統計的に有意ではないものの2.41という高いオッズ比を示した。物忘れがひどいは2.59、朝食を食べない4.58、ストレスがとてもある7.20、自分の体重を測っていない2.30、早朝覚醒2.45、寝付くために睡眠剤・アルコールなどに頼る2.96、楽しみや生きがいがない2.78などが高いオッズ比を示した。今後は、一人暮らし者を対象としたうつ病対策なども重要であろう。また、今回の結果では、因果関係の逆転によると考えられる項目も多数見られたため、より長期の追跡を行う研究も必要であろう。