著者
谷口 洋志
出版者
中央大学経済学研究会
雑誌
経済学論纂 (ISSN:04534778)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3・4, pp.293-311, 2018-03-01
著者
谷口 洋志
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
経済研究所 Discussion Paper = IERCU Discussion Paper
巻号頁・発行日
vol.250, 2015-03-01

アベノミクスにおける経済政策の目標は、短期的にはデフレ脱却、中長期的には持続的経済成長であり、それを実現するための政策手段が、大胆な金融緩和政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略から構成される「3つの矢」である。アベノミクスの経済政策は、表面的には名目総需要拡大の供給サイドの強化を目指す伝統的な経済安定・成長政策に見えるが、実際には長期国債買入等を通じてのマネタリーベースの拡大、巨額の債務制約下での予算編成、制度やルールの変更に伴う新たな規制の導入といった点で非伝統的な政策と理解される。 アベノミクスの成果として、株価、経済成長率、企業業績、雇用等における改善が指摘されることが多いが、経済指標を注意深く観察すると、アベノミクスの成果の幾つかは疑わしく、また、別の幾つかはアベノミクスの成果とは言いがたい。GDP水準やその成長率は最盛期の水準になく、景気や雇用は2009年後半から回復基調にあり、税収増の大部分は2014年4月の消費税増税によるところが大きい。株価上昇や円安の進展についても、2014年4月の量的・質的金融緩和の導入以前に大部分が実現し、大胆な金融緩和導入の影響はほとんどない。欧米の経済・金融・財政動向や、日米欧の金融政策スタンスの違いが株価や円安の動向に影響していると見られる。 アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略はまだ実践されておらず、「第2の矢」である機動的財政政策の「拡張性」は著しく弱く、「第1の矢」である金融緩和政策はインフレ目標をまだ達成しておらず、実現の見通しも立っていない。特に、2%のインフレ目標の実現は、デフレ脱却から持続的な経済成長を実現するための最初の一歩と位置付けられていたので、アベノミクスは失敗したとは言えないまでも、約束を果たしていないと批判されざるを得ない。
著者
谷口 洋志
出版者
公共選択学会
雑誌
公共選択の研究 (ISSN:02869624)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.9, pp.46-54, 1987-05-20 (Released:2010-10-14)
参考文献数
18

In his book The Limits of Liberty, Professor Buchanan argued that the state has two roles, that is, “protective” and “productive” ones, which are derived from the viewpoint of gains-from-trade among individuals. The purpose of this paper is to elucidate the characteristics of his view of the state described in this book and his essays.Professor Buchanan's theory of the state is characterized by (methodological) individualism, contractarianism, constitutionalism, libertarianism, subjectivism and democracy. All these elements are important and closedly linked each other. It should be emphasized, however, that contractarianism and constitutionalism, along with individualism, are specially important elements. And it should be pointed out that his libertarianism substantially means the constitutionalist-contractarian position based on individualism. Indeed, his own peculiar libertarianism distinguishes him from the libertarian anarchists, Hayek, Rawls and others. In this paper, we consider the difference between these modern thinkers and Buchanan in more detail.
著者
楊 川 野間口 隆郎 高 鶴 谷口 洋志
出版者
経済研究所
雑誌
経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.53, pp.333-354, 2021-10-05

本稿では,コロナ禍における日本と中国の大学でのオンライン授業の比較を通じて,政府の支援策,オンライン授業のためのインフラ,オンライン授業の方式,オンライン授業の教育効果について考察した。 コロナ禍前には,日本の大学生は,他国の大学生と比べると勉強意欲が低いとされる一方,教師による学生評価は不透明で,学生同士の競争も少ないといわれてきた。コロナ禍発生後は,オンライン授業の導入により,教師と学生の間での情報共有が進展し,学生の学習意欲や姿勢も情報として把握されるようになったことから,学習への意欲や姿勢が強まった。こうした教育過程の可視化は学生間の競争を促し,教育効果の向上につながることが期待される。 以上の考察を通じて,本稿では,オンライン教育を通じて日本の大学の教育効果が上がっているという仮説を提示した。今後は,対面授業とオンライン授業を組み合わせたハイブリッド型授業とオンラインだけの授業との比較考察,とくに教育効果の違いについて検討する必要がある。
著者
谷口 洋志
雑誌
IERCU Discussion Paper
巻号頁・発行日
no.252, 2015-05

中国首相の李克強氏は、遼寧省党書記時代の2007年に、GDP統計よりも電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資の3指標のほうが信用できるという趣旨のことを述べたとされる。本稿では、3指標のうちの電力消費量を取り上げ、実質GDPと電力消費量の関係、電力消費量の全国および地区別の動向などから、李克強氏の発言は支持できないことを論じる。
著者
谷口 洋志
雑誌
IERCU Discussion Paper
巻号頁・発行日
no.253, 2015-06

中国首相の李克強氏は、遼寧省党書記時代の2007年に、GDP統計よりも電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資の3指標のほうが信頼できるという趣旨のことを述べた。本稿では、3指標のうちの鉄道貨物輸送量を取り上げ、実質GDPと鉄道貨物輸送量の関係、鉄道貨物輸送の全国と地区別の動向などから、李克強氏の発言は支持できないことを論じる。