著者
三國 喜保子 谷口 美穗 岩下 智彦 川崎 タルつぶら 張 世襲 岩本 尚希
出版者
桜美林大学
雑誌
桜美林言語教育論叢 (ISSN:18800610)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.147-162, 2011

本稿は、日本語学習者の教室外におけるメディア使用の実態を明らかにすることを目的に、6カ国の日本語学習者を対象にアンケート調査を行った調査報告である。調査の結果、学習環境により日本語によるメディア使用の割合に違いがみられたが、使用されるメディア媒体やメディアの種類には一致した傾向があることが明らかになった。特に、インターネット使用の割合はどの地域においても高く、学習者は汎用性に優れたインターネットというメディアを活用して日本語に接触していることが示された。また、オンライン辞書、学習サイトや学習ソフトの使用については、日本国内の学習者にはほとんど使用されていないのに対し、海外においては非常によく利用されていることが示された。学習者属性との関連からは、日本語学習歴が長くなるとインターネットの使用目的が学習から趣味や情報収集、コミュニケーションなど、探究的、双方向的な使用に変化することが示唆された。
著者
谷口 美穗
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.167, pp.1-14, 2017 (Released:2019-08-26)
参考文献数
19

非漢字系日本語学習者にとって,漢字は形が複雑で習得が困難であることが複数の先行研究から指摘されている。本研究では,漢字の字形と再生の難しさとの関係に注目し,漢字学習開始前の非漢字系マレー人日本語学習者を対象に,初めて見る漢字をどのように認識し字形をどのように再生するのか実験を行い,字形再生を困難にする諸要因の影響を検討した。要因としては,漢字の視覚的複雑性(単純・複雑),直線性(直線・非直線),対称性(左右対称・非対称)の3つを設定し,再生された漢字の完成度を予測する決定木分析を行った。その結果, 1)漢字の再生を困難にする要因として字形の視覚的複雑性が最も強く影響している,2)視覚的複雑性が低い漢字でも非直線的な漢字は再生されにくい,3)視覚的複雑性が高い漢字では対称性が漢字の完成度に強く影響し非対称的な漢字は再生されにくい,という3点が明らかになった。
著者
谷口 美穗
出版者
独立行政法人国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.12, pp.7-23, 2016-03

本研究では、予備教育課程で学ぶマレーシア人日本語学習者100名に、漢字学習ストラテジーに関する質問紙調査を入学後4ヶ月と1年の2回実施し、学習期間が長くなることによるストラテジーの使用状況の変化と成績上位者の使用するストラテジーの特徴について分析した。その結果、1)学習期間が長くなるにつれて、漢字の知識を整理するためのストラテジーの使用頻度が高くなるが、その傾向が成績上位群において強いこと、2)学習期間が長くなるにつれて、「覚えるまで何度も書く」というストラテジーの使用頻度が下がり、その他の記憶ストラテジーや補償ストラテジーの使用頻度が上がること、3)成績上位群は「できるだけ漢字を使用する」というストラテジーを継続的に高頻度で使用していることが明らかになった。また、授業で扱われる漢字を整理するための知識が、学習者の漢字学習ストラテジーの選択に影響を与えている可能性が示唆された。