著者
津久井 学 永島 俊夫 佐藤 広顕 小嶋 秩夫 谷村 和八郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.575-580, 1999-09-15
被引用文献数
2 3

わが国で栽培されているツクネイモ,イチョウイモ,ナガイモの3種類のヤマイモについて,それらから調製した「とろろ」の粘性の差異の要因を明らかにすることを目的とし,ヤマイモ粘質物の性状,特に多糖の構造について比較検討を行った.<BR>(1) 各ヤマイモの水分量と「とろろ」の粘度には負の相関がみられ,ツクネイモが最も高く,ついでイチョウイモ,ナガイモの順であった.<BR>(2) 佐藤ら4)の方法によって得られた粘質物の収量は,「とろろ」の粘度と相関がみられ,ツクネイモが最も多かった.粘質物は,いずれも糖が88~64%と主成分であり,タンパク質は36~12%を占めた.同一濃度での粘度を比較したところ,「とろろ」と同様にツクネイモが最も粘度が高く,ついでイチョウイモ,ナガイモであり,これらの粘質物の性状に差異のあることが示唆された.<BR>(3) 粘質物の主要構成アミノ酸は,イソロイシン,ロイシン,グリシンなどであった.<BR>(4) 各ヤマイモ粘質物の主成分である多糖は,いずれも平均分子量18000のマンナンであったが,これらの構造には差異がみられた.単位構造はβ-1→4直鎖部分の平均残基数がツクネイモ18,イチョウイモ15,ナガイモ10で,いずれもβ-1→3結合の分岐が1つあり,その残基数は1であった.<BR>粘質物を構成するマンナンの構造は,ヤマイモの種類により異なっており,粘質物ならびに「とろろ」の粘性に影響する要因のひとつであると推察された.
著者
谷村 和八郎 鴨居 郁三 小原 哲二郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.245-251, 1980-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

枝豆のTIを調べる目的で大豆を播種後栽培111日より165日まで毎週経時的にTI活性を測定した。(1) 枝豆中のTIは栽培日数116日までは認められず, 123日の豆粒よりTIがみられた。枝豆として利用出来る粒長1.2~1.4cmの成熟豆は130日より収穫できた。 TI量は127日のものが最高で生豆粒1g中に17.92mgであった。この時の比活性は168である。枝豆の粒長により含まれるTI量は異なり,生豆粒1g中のTIは粒長0.8-1.0cmでは6.91mgが最高であった。粒長1.0-1.2cmは14.7mgで成熟豆に近い値である。(2) Sephadex G-75によるTIのゲル濾過では粒長1.2-1.4cmの豆粒では4~6種のTIピークがみられ,主要ピークはNo.3, No.4であった。栽培日数の増加と共にNo.3, No.4のピークが占める割合が大きくなる。粒長の短かいものは6種のTIピークがみられた。その主要ピークはNo.3, No.4であった。(3) Sephadex G-75でゲル濾過したNo.3, No.4のTIピークについてDEAEセルロースによるクロマトグラフィーを行った。粒長1.2~1.4cmでは123日が7種, 159日が5種, 165日が4種と栽培日数が長くなるに従いピーク数が減少する。また粒長が大きくなるに従いTIピーク数が減少した。(4) 枝豆の加熱によるTIの変化は市販枝豆の生豆1g中のTI量は19.7mgであった。100℃, 5分間煮沸の枝豆は1g中に13mgであった。この時のTIをSephadex G-75でゲル濾過を行ったところ,生豆のピークは2種であったが,加熱により9種のピークがみられた。
著者
谷村 和八郎 鴨居 郁三 小原 哲二郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.240-244, 1980-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7

大豆もやしのTIを製造経過に従って測定し,その消長をみた。(1) 大豆もやしおよび各部の1g中のTIを比較すると,生もやしには68.7mg~61.9mgのTIが存在した。この99%以上が豆部に残余が根部にある。生もやしの豆部と根部のTIは2日目もやしは70.2mg, 14.3mg, 4日目もやしは64.6mg, 0.83mg, 6日目もやしは73.7mgで根部にはTIがみられなかった。(2) Sephadex G-75によるTIのゲル濾過を行ったところ,原料大豆,もやし豆部のTIパターンには2種のピークがみられた。根部は2日目もやしは1種, 4日目もやしは2種みられた。(3) DEAE-セルロースによるTI画分のクロマトグラフィーを行った。主要ピークは8種より成っていた。豆部TIは日数の長くなるに従いピークは接合分画が難しかった。6日目もやしは2種のピークが消失した。根部のTIは2日目もやしが1種, 4日目もやしが2種であった。(4) もやしを熱湯で5分間加熱したとき,豆部のTIは消失したが,根部のTIは残存していた。
著者
村 清司 谷村 和八郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.186-192, 1994-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18

バシはフィリピンで造られている伝統的な甘蔗酒で, 製造の際に樹皮類を添加している。筆者等はこの添加原因を研究し, 樹皮中のフェノール類が乳酸菌や酢酸菌の増殖を阻止し, かつ低濃度では酵母の増殖を促進するという興味ある事実を突き止めた。熱帯における巧妙な開放発酵の神秘に接した感がする。