著者
豊口 禎子 仲川 義人
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.225-235, 1996 (Released:2007-02-06)
参考文献数
35
被引用文献数
8 12

MRSA感染症治療薬である塩酸バンコマイシン(VCM)は,グラム陽性菌に効果を有する抗生物質である.臨床においては,MRSAとともに緑膿菌等のグラム陰性菌に感染している混合感染発症患者も多い.また,MRSAに対する抗菌活性増強を目的に,他の抗生物質を併用することも行われている.一方,VCMは有害作用として,重篤な腎障害を有しており,他剤との併用により腎障害の増悪が懸念される.そこで,家兎を用い,臨床において併用する可能性のある抗生物質を併用したときの腎障害への影響とVCMの薬物動態学的相互作用を検討した.家兎にVCM300mg/kg静注時に血清クレアチニン,BUN,組織学的変化等の腎障害がみられたが,イミペネムーシラスタチンナトリウム(IPM-CS),フロモキセフナトリウム(FMOX),ホスホマイシンナトリウム(FOM)併用により,明らかに腎障害が軽減された.また,セフタジジム(CAZ),セブピミゾールナトリウム(CPIZ),セフォペラゾンナトリウム(CPZ)併用時には有意な腎障害抑制作用はみられなかった.VCM体内動態に関しても,VCM単独投与時に比べ,IPM-CS,FMOX,FOM併用時に明らかにVCMクリアランスの増加がみられ,CPIZ併用時には有意な減少がみられた.腎組織中VCM濃度においても,VCM単独投与時に比べ,IPM・CS,FMOX,FOM併用時に有意な減少がみられ,これら併用薬による腎細胞への取り込み抑制が示唆された.
著者
豊口 禎子 仲川 義人 渡辺 皓
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.107, no.2, pp.53-66, 1996 (Released:2007-02-06)
参考文献数
36
被引用文献数
3 3

MRSA感染症治療薬である塩酸バンコマイシン(VCM)の腎における薬物相互作用を検討した.VCMはグラム陽性菌に抗菌作用を有し,混合感染発症患者ではグラム陰性菌にも有効な抗生物質,特にイミペネム(IPM)―シラスタチンナトリウム(CS)合剤などと併用されることがある.VCM,IPMは腎障害を惹起する作用を有しているが,CSはIPMの腎障害を抑制する作用を有することから,IPMに配合されている.そこで,これら3つの薬物の腎における相互作用を明らかにすべく,家兎を用い,VCMの腎障害,体内動態をIPM-CS併用時,CS併用時と比較検討した.家兎にVCM300mg/kg静注時に血清クレアチニン,BUN,組織学的変化等の明らかな腎障害がみられたが,CS300mg/kg併用時,IPM300mg/kg-CS300mg/kg併用時,IPM150mg/kg-CS150mg/kg併用時には臨床検査値の異常はみられず,組織学的にも変化はほとんど認められなかった.また,VCM体内動態に関しても,VCM単独投与時に比べ,CS併用時またはIPM―CS併用時には明らかにVCMクリアランスの増加がみられ,尿中VCM排泄率も増加した.さらに,家兎腎皮質スライス取り込み実験を行ったところ,VCMが能動的に腎皮質に取り込まれることが示唆された.また,CSの併用により腎皮質スライスへのVCMの取り込み抑制効果傾向がみられ,CS併用時の腎障害抑制効果には,CSによるVCMの腎細胞への取り込み抑制作用が関与している可能性が考えられた.
著者
畠山 史朗 鈴木 規子 安部 一弥 金野 昇 金子 俊幸 豊口 禎子 白石 正
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.8, pp.1095-1101, 2018-08-01 (Released:2018-08-01)
参考文献数
19

Chemotherapy-induced nausea and vomiting (CINV) is the most unbearable adverse effect of chemotherapy. The antiemesis guidelines of the National Comprehensive Cancer Network indicate that hyponatremia is a risk factor for CINV, although the relationship between the incidence of CINV and hyponatremia has not been sufficiently studied. This two-center prospective observational study evaluated whether low serum sodium concentrations were a risk factor for CINV. The study included 34 patients who were scheduled to receive first-line carboplatin- or oxaliplatin-based chemotherapy for gynecological or colorectal cancers. Patient diaries were used to record the daily incidences of CINV events during a 5-day period. The patients were divided based on the median serum sodium concentration into a low Na+ group (<141 mEq/L) and a high Na+ group (≥141 mEq/L). The incidences of delayed nausea were 27.8% in the high Na+ group and 62.5% in the low Na+ group (p=0.042), with complete control rates (no vomiting, rescue medication, or grade 2 nausea) of 77.8% and 43.8%, respectively (p=0.042). The time to complete control failure in each group was analyzed using the Kaplan-Meier method, which revealed a significantly shorter time in the low Na+ group (p=0.03). Therefore, these results indicate that low serum sodium concentrations may increase the risk of CINV.