- 著者
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山下 夕香里
道 健一
今井 智子
鈴木 規子
吉田 広
- 出版者
- 一般社団法人 日本口蓋裂学会
- 雑誌
- 日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.2, pp.204-216, 1983-12-24 (Released:2013-02-19)
- 参考文献数
- 37
いわゆる粘膜下口蓋裂を含めた先天性鼻咽腔閉鎖不全症(Congenital Velopharyngeal Incompetence以下CVPI)のなかには,著しい開鼻声を伴う構音障害,心奇型などの合併奇型に加えて精神発達の遅れを伴う症例が多いとされているが詳細な報告はほとんどみられない.そこでわれわれはCVPIの診断基準を定義した上で,鼻咽腔形態・機能および顔貌に関する客観的な計測結果が明らかとなっているCVPI15例,対照群として唇顎口蓋裂症例18例(Cleft Lip and Palate以下CLP)を対象症例とし,4才2ヶ月-13才2ヶ月時に,WPPSIまたは,WISC-R,ITPA言語学習能力診断検査,Frostig視知覚発達検査(DTVP)を行い,鼻咽腔形態による分類型、Calnanの3徴候,特徴的顔貌所見別に精神発達について比較検討を行った.その結果,顔貌所見別では特徴的顔貌群はその他の群およびCLP群に比べ1%水準で有意に低い値を示した.鼻咽腔形態による分類型別では軟口蓋の長さと咽頭腔の深さとの関係が不均衡なII型群が低い値を示し,Calnanの3徴候別では無徴候,1徴候群が低い値を示した.以上の結果より特徴的顔貌所見を有する症例とその他の症例との間には精神発達に著しい相違がみられ,さらに鼻咽腔形態、Calnanの3徴候と精神発達との関連性も示唆された.われわれは従来より鼻咽腔形態,顔面形態の客観的分折によりCVPIの中の1つのカテゴリーとしての特徴的顔貌の存在を証明し報告してきたが,今回はさらにこれらの特徴的顔貌を呈する症例において精神発達の遅れが認められ疾患としての独立性が0層明らかとされた.これらのことよりわれわれは先天性鼻咽腔閉鎖不全,特徴的顔貌,精神発達の遅れなどの所見がみられる症例を新しい症候群として一括して扱うことを提唱したい.