著者
豊島 裕子 中村 晃士 西岡 真樹子 清水 英佑
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.70-78, 2005-03

アパレル産業は, 仕事で独特な芸術性を要求され, 残業時間が長く, 雇用状態が不安定で労働者の負荷となる要因が多く, 他の業種と比較して職業性ストレスが多い産業ではないかと考えている. そこで, 男性561人, 女性387人からなる某アパレル企業において, メンタルヘルスに関して産業医面談を受けた66人の社員を分析して, 報告する. 産業医面談を受けた社員は, 他の社員に比して, 労働時間が長く, 雇用条件が不良で, より芸術性を要求される職種の人たちであった. アパレル企業では, "Specialty store retailer of Private-label Apparel(SPA)"という業務システムを取り入れている. SPAでは, 社内ブランド同士の競争が激しく, ブランド内では1週間周期で新商品の開発, 縫製, 出荷をこなさなければならず, 労働者のストレス, 疲労は高まる. 以上より, アパレル企業は極めてストレスの多い職場と結論した. ストレスの多いアパレル企業のメンタルヘルス健康管理では, 産業医が面談で疑わしいと判断した社員は速やかに精神科に紹介すること, また産業医自身も問題を抱えた社員に対しては頻回に面談を行うこと, 職長は部下の休暇, 作業能率, E-メール送信時のマナーなどに気を配ることが重要と考える. 病欠していた社員が復職する際は, 短時間勤務から徐々に勤務時間を延ばしていく「慣らし出社」が, 円滑な復職に有効であった.
著者
豊島 裕子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.266-276, 2018 (Released:2018-06-29)
参考文献数
29

目的 介護福祉士の職業性ストレス反応を,生理学的手法で評価した。個人のストレス反応量だけでなく,各種業務に対するストレス反応も合わせて評価した。方法 老人保健施設に勤務する介護福祉士35人を対象に,ホルター心電計で記録した就労中心電図より周波数解析で求めた交感神経機能変動で,職業性ストレスを評価した。時間ごとの業務内容を業務日誌に記録し,各ストレス反応値と比較した。合わせて,終業時採取唾液中クロモグラニンA(CgA)を測定した。結果 測定当日,前日とは異なるシフトで就労していた群は終日ストレス反応最高値(1日の中で最も強いストレス反応を惹起する業務中のストレス反応値)が26.2±12.0と,前日と同一シフト群の16.1±6.5に比して有意に高値だった(P<0.05)。CgAも同様の結果だった(10.8±14.6 pmol/mg蛋白,2.3±1.2,P<0.05)。また,日勤帯では,業務別ストレス反応値(その業務中の総ストレス反応)と業務別ストレス反応ピーク値(その業務中のストレス反応のピーク値)は,多職種とのかかわり(148.9±27.0,29.8±9.1),口腔ケア(82.4±16.7,15.4±8.7)で有意に高値だった。入浴介助でも業務別ストレス反応ピーク値が20.5±9.6と有意に高値だった。夜勤帯では業務別ストレス反応値と業務別ストレス反応ピーク値は,口腔ケア(口腔ケア:100.1±23.1,17.6±8.6),更衣介助(102.8±22.8,19.8±11.7)で有意に高値だった。シーツ交換の業務別ストレス反応値と業務別ストレス反応ピーク値は,(夜勤:120.6±23.3,25.7±10.9;日勤:65.0±10.6,16.4±10.9)と,夜勤で有意に高値だった。結論 心電図による交感神経機能を指標としたストレス反応評価は介護福祉士のストレス反応評価に有用と考えた。CgAも同様に有効と考えた。シフト勤務切り替わり日には通常よりストレス反応が強まることが示唆された。介護福祉士は,多職種連携業務,口腔ケアで強いストレス反応を起こしていた。さらに,これら業務では瞬間的に交感神経機能が極めて高い状態になることもわかった。また,入居者の体に直接触れる業務では,ストレス反応が強いこともわかった。シーツ交換は,夜間にのみ強いストレス反応を引き起こしていた。
著者
豊島 裕子 遠藤 陽一 木村 直史 小幡 徹 衛藤 謙
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

(1) ヒトは、大きく分けてストレスが身体反応を起こしやすいタイプと、そうでないタイプに分けられる。前者では、ストレス負荷に対して脳血流が急激に増加する、脳波の伝達が速くなる、心電図所見で交感神経優位になっているなど、過剰な反応が確認された。(2) また、ヒトにストレスが加わると、血小板が活性化され、血栓を作りやすくなることがわかった。つまり、ストレス耐性の低いヒトでは、ストレス負荷で、血栓性疾患を起こしやすいことがわかった。