- 著者
-
豊島 裕子
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.6, pp.266-276, 2018 (Released:2018-06-29)
- 参考文献数
- 29
目的 介護福祉士の職業性ストレス反応を,生理学的手法で評価した。個人のストレス反応量だけでなく,各種業務に対するストレス反応も合わせて評価した。方法 老人保健施設に勤務する介護福祉士35人を対象に,ホルター心電計で記録した就労中心電図より周波数解析で求めた交感神経機能変動で,職業性ストレスを評価した。時間ごとの業務内容を業務日誌に記録し,各ストレス反応値と比較した。合わせて,終業時採取唾液中クロモグラニンA(CgA)を測定した。結果 測定当日,前日とは異なるシフトで就労していた群は終日ストレス反応最高値(1日の中で最も強いストレス反応を惹起する業務中のストレス反応値)が26.2±12.0と,前日と同一シフト群の16.1±6.5に比して有意に高値だった(P<0.05)。CgAも同様の結果だった(10.8±14.6 pmol/mg蛋白,2.3±1.2,P<0.05)。また,日勤帯では,業務別ストレス反応値(その業務中の総ストレス反応)と業務別ストレス反応ピーク値(その業務中のストレス反応のピーク値)は,多職種とのかかわり(148.9±27.0,29.8±9.1),口腔ケア(82.4±16.7,15.4±8.7)で有意に高値だった。入浴介助でも業務別ストレス反応ピーク値が20.5±9.6と有意に高値だった。夜勤帯では業務別ストレス反応値と業務別ストレス反応ピーク値は,口腔ケア(口腔ケア:100.1±23.1,17.6±8.6),更衣介助(102.8±22.8,19.8±11.7)で有意に高値だった。シーツ交換の業務別ストレス反応値と業務別ストレス反応ピーク値は,(夜勤:120.6±23.3,25.7±10.9;日勤:65.0±10.6,16.4±10.9)と,夜勤で有意に高値だった。結論 心電図による交感神経機能を指標としたストレス反応評価は介護福祉士のストレス反応評価に有用と考えた。CgAも同様に有効と考えた。シフト勤務切り替わり日には通常よりストレス反応が強まることが示唆された。介護福祉士は,多職種連携業務,口腔ケアで強いストレス反応を起こしていた。さらに,これら業務では瞬間的に交感神経機能が極めて高い状態になることもわかった。また,入居者の体に直接触れる業務では,ストレス反応が強いこともわかった。シーツ交換は,夜間にのみ強いストレス反応を引き起こしていた。