著者
豊田 紳
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.50-63, 2021 (Released:2021-01-31)
参考文献数
23

メキシコの与党・国民再生運動は、その比例区の候補者の一部を選出するにあたって、選挙とくじ引きを組み合わせるという独自の制度を採用している。本稿は、この制度を「選挙くじ引き制」と呼び、それがもたらす効果を検証することを目的とする。具体的には、選挙くじ引き制の採用によって、候補者選出時点での派閥対立が抑制されると同時に、選出された議員の学歴は、メキシコ人の平均学歴に接近することを、議員プロフィールに関する統計分析から示す。
著者
豊田 紳
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.88-100, 2018 (Released:2021-07-16)
参考文献数
36

非民主主義体制(=独裁体制)の政治過程は,秘密のベールに覆われている。そのため,その選挙,殊に選挙不正については,不明な部分が多い。本稿の目的は,独裁体制の選挙不正に新たな光を当てることを通じて,その政治過程の理解に貢献することである。具体的には次の2つを主張する。第1に,独裁体制における選挙不正には,独裁体制内の中下級エリートが独裁者に対して,自らの得票率を誇示するための「ゲーミング」として行うものが存在する。第2に,野党が競争選挙に参加し,監視するようになると,ゲーミングとしての選挙不正は起きづらくなる。2000年の民主化以降,様々なアーカイブ資料やデータが利用可能となったかつての独裁国家メキシコを分析し,これらの仮説の妥当性を検証した。
著者
豊田 紳
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

冷戦期の非民主主義体制の主流は一党独裁体制であったが、冷戦後の世界では、政府=与党に選挙で勝利することが極めて困難であるにもかかわらず、公式制度の上では野党が許容され、与野党間で定期的に競争選挙が行われる選挙権威主義体制が独裁体制の下位類型として主流となった。しかし、既存研究は一党独裁体制と選挙権威主義体制とを理論的に区別しておらず、従って選挙権威主義体制に時に存在する「組織化された野党」を分析できないという問題があった。本研究は、一党独裁体制と選挙権威主義体制を区別した上で、選挙権威主義体制にのみ存在する組織化された野党の意義を理論化した。