著者
鈴野 弘子 豊田 美穂 石田 裕
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.376-381, 2008-03-30 (Released:2008-05-09)
参考文献数
11
被引用文献数
3

用途が拡大しているミネラルウォーターを, 調理に使用する際の取捨選択の基礎的知見を得ることを目的として, 硬度の異なる数種のミネラルウォーターを用いて昆布だし汁を調製し, そのミネラル成分とうま味成分の含有量を検討した。1) だし抽出時における昆布への水分吸収は, 硬水は軟水より低い傾向であった。ミネラルウォーターの pH は弱アルカリ性から中性であったが, 昆布だし汁は弱酸性になった。2) 昆布だし汁のミネラル含有量は, Na は抽出1時間から6時間にピークに達し, その後は平衡か若干減少する傾向にあった。K 含有量は, 抽出1時間で急激に上昇し, その後は微増傾向あるいはピークに達した後, 減少傾向であった。Ca 含有量は, 軟水の昆布だし汁では増加はわずかであった。また, 抽出時間が長くなってもその増加はほとんど認められなかった。一方, 硬水ではだし抽出1時間後には減少し, その後は平衡であった。すなわち, もともとミネラルウォーター中に含まれていた Ca が昆布に吸着したと考えられた。Mgも一度溶出され, その後再吸着されたといえる。3) 昆布だし汁のグルタミン酸ナトリウムの含有量は抽出時間が長くなると増加する傾向であった。しかし, これらの増加傾向に軟水, 硬水の違いは認められなかった。4) 昆布だし汁への硬水の利用は適さないと考えられ, さらにミネラルウォーターを調理に用いる際は, 調理の種類によって使い分けが必要であることが示唆された。