著者
松本 直也 伊藤 めぐみ 山田 一孝 豊留 孝仁
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.101-107, 2020-09-30 (Released:2020-11-30)
参考文献数
14
被引用文献数
2 4

飼育下の鳥類においてアスペルギルス症は重要な疾患であるが,その予防策や診断方法,治療法は確立されていない。アスペルギルス症の主な起因菌であるAspergillus fumigatusは自然環境中に普遍的に存在するため,ときとして飼育鳥類に感染し,死に至らしめる。登別マリンパークニクス飼育下のキングペンギン(Aptenodytes patagonicus),ジェンツーペンギン(Pygoscelis papua),ケープペンギン(Spheniscus demersus)のA. fumigatus感染を防ぐことを目的とし,本研究では飼育環境中に存在するA. fumigatus汚染源の調査を行った。エアーサンプリングおよび土壌サンプリングのデータから主な汚染源が土壌であると推定されたため,土壌とペンギンの接触を最小限とする対策を行った。その結果,アスペルギルス症の発症は認められなくなった。本研究から,A. fumigatusの感染予防において,予め飼育環境下の汚染源を推定することは有効であり,屋内での対策とともに屋外の環境への対策も重要であることが確認された。
著者
豊留 孝仁
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.J149-J154, 2016 (Released:2016-11-29)
参考文献数
40
被引用文献数
1 2

アスペルギルス症は深在性真菌感染症の重要な位置を占めている.アスペルギルス症の原因真菌はAspergillus fumigatusが最も重要であるが,そのほかにもAspergillus flavusやAspergillus niger, Aspergillus terreusなども重要な原因菌種である.また,近年になって隠蔽種と呼ばれる各Aspergillus sectionの代表的な種に非常によく似た菌種の存在が認識され,一部のアスペルギルス症の原因となっていることも分かってきた.最近の研究で,それらの菌種間では抗真菌薬に対する感受性や二次代謝産物の産生プロファイル (エクソメタボローム) が異なることも明らかとなってきた.一方,治療中のA. fumigatusアゾール耐性化や近年の欧州を中心とした環境中アゾール耐性A. fumigatusの出現も報告され,これら菌種を正確に同定し,加えて感受性を評価することの重要性が高まってきている.本総説ではA. fumigatusを含めたアスペルギルス症原因菌種,特に隠蔽種について触れ,エクソメタボローム解析を利用した同定の可能性を述べる.加えて,A. fumigatusアゾール系抗真菌薬耐性について最近の報告を交えて概説したい.