著者
佐藤 成 貝羽 義浩 橋爪 英二
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

血管吻合における自動吻合器開発を目指し、ステント型形状記憶合金と微小突起ステンレス板を用いた血管端々吻合法を考案し、動物実験にてその開存性、有用性を検討した。高さ70μm、直径30μmの微小円錐(300μm間隔)を有する厚さ60μmステンレス板を作成し梯子状の形態にした。Z字ステント型の形状記憶合金を人工血管に縫い付けておき、冷却し軟化させた後にシースに装填、吻合部に挿入後プッシヤーにて誘導し、加温復元させた。外周よりステンレス板を密着させて、微小突起で摩擦力を生じ長軸方向に十分な固定力を得られるようにした。ブタ大動脈(5頭)へ、中枢側吻合は当吻合法で、末梢側は手縫いで人工血管を移植した。吻合時間、4週例の開存性を検討した。遮断解除直後の吻合部からの出血は中枢側ではほとんど観察されず、末梢側の針穴からのものが多く、軽く圧迫することにより止血が得られた。平均吻合時間は、我々の考案した吻合法188.8±50.8秒、手縫い法848±77.8秒で、全例4週開存が得られ、吻合部に仮性動脈瘤などの異常所見は認めなかった。内腔は平滑で形状記憶合金はneointimaにて覆われ、ステンレス板は周囲組織に強固に密着していた。抗張力試験では、吻合直後で350g、350g、650g、吻合後4週例では2300g、2950gで、耐圧試験では、吻合直後、吻合後4週とも500mmHgの加圧で吻合部に異常をきたしたものはなかった。我々が考案した血管端端吻合法は、3分程度と短時間で施行でき、かつ、開存性、安全性も問題なく十分に有用と考えられた。
著者
貝羽 義浩 大橋 洋一 佐藤 馨 佐藤 博子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.987-990, 2016 (Released:2016-10-31)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

患者は80歳,男性.腹部大動脈瘤手術後に生じた腹壁瘢痕ヘルニアに対して,メッシュを6箇所の非吸収糸による筋膜固定と金属製コイル式タックで固定する腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術を施行した.その約2年後,腹部の発赤・発熱が出現し,メッシュ感染による腹壁膿瘍の診断で入院した.膿瘍をドレナージした後,膿瘍腔を造影すると小腸と交通していたため,開腹手術を施行した.開腹所見では,メッシュの辺縁部の金属製コイル式タックが小腸と強固に癒着し穿通していた.メッシュ,膿瘍腔,癒着腸管を切除し,腸管を再建した.術後は創感染を認めたが,軽快し退院となった.腹腔内での金属製コイル式タックの使用は,金属の一部が腹腔内に突出して腸管が癒着,穿通しメッシュ感染の原因となることがあるため,吸収性タックなど金属製コイル式タック以外の固定具を用いるべきと考えられた.