著者
日野 智 岸 邦宏 佐藤 馨一 千葉 博正
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.827-834, 2000-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

整備新幹線である東北新幹線盛岡-新青森間が開通した後、並行在来線である東北本線盛岡-青森間は第三セクターとへ経営が移管される。しかし、同区間は北海道と本州とを結ぶ鉄道貨物列車の主要経路であるため、第三セクター化後の鉄道貨物輸送存続が懸念されている。そこで、本研究は鉄道貨物の必要性を示し、代替経路や代替機関による輸送についても検討する。結果として、東北本線経由の鉄道貨物輸送は大きな役割を果たしており、鉄道貨物を存続させた方が関係主体合計の負担は少ないことが明らかとなった。
著者
今 尚之 進藤 義郎 葛西 章 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.183-190, 2002-05-15 (Released:2010-06-15)
参考文献数
4

北海道遺産に認定され, 一部が登録有形文化財である旧士幌線のコンクリートアーチ橋梁群においては, 第6音更川橋梁のみ河川洗掘防止工の破損から安全性に懸念が生じ, 地元上士幌町による取得, 保存対象から除外されてきた。この度, 改めて技術的な検討がなされ, 安全性に問題無いことが確認されたことにより, 他の橋梁と同じく上士幌町による取得が決定された。土木遺産の保存や利活用に向けては, 合意形成を待っていては手後れとなることが多く速やかな判断が求められる。このためにも確固たる技術的なバックデータが重要であるが, 財政規模の小さな地方公共団体や市民活動団体が担い手となるときには, 財源, 技術, ネットワークなどの資源が少ないことからその確保に関しては課題が多い。本稿では, 旧士幌線第六音更川橋梁保存における事例をもとにそれらの課題について報告し, 課題解決の一つとして土木技術者が土木遺産の保存, 利活用の専門知識を得る仕組みづくりの必要性を述べる。
著者
進藤 義郎 葛西 章 今 尚之 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.247-256, 2002-05-15 (Released:2010-06-15)
参考文献数
10

旧日本陸軍が戦場で架橋用として開発した重構桁は, 技術雑誌を中心に紹介記事が書かれているが, 体系的に取り纏めた研究は進んでいない. 本報告書は先行論文などの取り纏めと, 北海道内に現存する重構桁の現地調査結果と橋梁製作会社の橋梁台帳・社史・追想録・遺稿集などにもとづき, 重構桁の系譜や特徴について整理し, 検討を行った結果を発表する.
著者
高津 俊司 佐藤 馨一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.93, 2004

本研究は、開発者負担金による鉄道整備の事後評価を目的として、都市開発と一体的に整備が進められた臨海副都心線(りんかい線)を事例として、開発者負担金について開発者にアンケート調査を行い、開業後の輸送実績を元にして鉄道計画支援システム(GRAPE:GIS for Railway Project Evaluation)を用いて鉄道整備効果を分析し、開発者負担方式の評価と今後の課題を考察した。その結果、次のような知見が得られた。_丸1_事後アンケート調査によれば、鉄道に対する評価としては、広域、大量、高速などの特性を評価し、約8割の会社が「受益があるのである程度の負担はしかたない」と回答している。費用負担の額についても、計画時点より現時点の方が、「ほぼ妥当である」との回答が増加している。_丸2_りんかい線の整備による開発区域内の利用者便益(割引後30年集計)をGREPEで推定すると、開発者の費用負担金の額を上回った。_丸3_これらの結果から、鉄道整備の財源方式として、請願駅方式で駅周辺の開発者からの負担金を徴収する方式は、一定程度の妥当性があると想定される。
著者
日野 智 岸 滋 岸 邦宏 浅見 均 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.495-503, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
14

近年、北海道と本州間の鉄道輸送網において、事故・災害による不通が多発している。鉄道輸送網の不通は旅客だけではなく、物資輸送にも多大な影響を与えている。本研究は鉄道貨物輸送における代替経路探索モデルを構築し、津軽海峡線貨物列車脱線事故と有珠山噴火災害に適用したものである。本研究で構築したモデルは時刻を考慮しているため、便毎に経路を探索することができる。そのため、運行頻度や発着時刻等を含めた代替経路の評価が可能である。また、現実に採用されている列車待機を代替経路の一つとして、表現できる。モデルを事故・災害事例へと適用した結果、フェリー航路が代替輸送に有用であることが明らかにされた。すなわち、今後はフェリーも鉄道貨物輸送における代替経路として考慮すべきといえる。
著者
浅見 均 日野 智 佐藤 馨一
出版者
JAPAN SECTION OF THE REGIONAL SCIENCE ASSOCIATION INTERNATIONAL
雑誌
地域学研究 (ISSN:02876256)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.337-351, 2002-10-30 (Released:2008-10-10)
参考文献数
25

On Japanese inter-regional railway, there are several networks. Shinkansen and existing lines (AC/DC/no electrification) have no inter-operability. We can regard that inter-operability is very important factor to evaluate quality or redundancy of inter-regional railway network.In this study, I analyzed concerning historical process of inter-operability in Japanese inter-regional railway network, and some example of making inter-operability and link stop with no alternative routes. Through this analysis, I can define current problems of inter-regional railway network in Japan.On ordinary condition, it is possible to increase social benefit by making inter-operability between Shinkansen to existing line. Yamagata Shinkansen project and Akita Shinkansen project are successful example.On situation of link stop, there are some risks to increase social losses. If that link has no alternative route, all trains cannot be operated. Even if that link has some alternative routes, many trains cannot be operated too. Because there are a large number of trains, slot of alternative route is not enough. 81days stop of San-yo Shinkansen is typical example there is no alternative routes.Those benefits or losses can be evaluated by quantitative method. But index of making inter-operability is next challenging.I trust that this study can provide some valuable knowledge to discuss development policy of inter-regional railway network, especially concerning making inter-operability between Shinkansen to existing line.
著者
河野 哲也 今 尚之 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.207-214, 1997-06-05 (Released:2010-06-15)
参考文献数
12

This paper make it clear that the two truss girders across the Daiya river were constructed across the Horomui river and across the Ikusyunbetsu river by Horonai railway in 1884-1885. We discovered unknown pictures of them taken in Meiji era and found that they have same shapes as the truss girders across the Daiya. We investigated official documents of Horonai railway to find out their date of construction and their specification. And we evaluate the value of them from a view point of civil engineering archaeology.
著者
高津 俊司 佐藤 馨一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
no.39, pp.553-558, 2004-10-25
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究は、開発者負担金による鉄道整備の事後評価を目的として、都市開発と一体的に整備が進められた臨海副都心線(りんかい線)を事例として、開発者負担金について開発者にアンケート調査を行い、開業後の輸送実績を元にして鉄道計画支援システム(GRAPE:GIS for Railway Project Evaluation)を用いて鉄道整備効果を分析し、開発者負担方式の評価と今後の課題を考察した。その結果、次のような知見が得られた。(1)事後アンケート調査によれば、鉄道に対する評価としては、広域、大量、高速などの特性を評価し、約8割の会社が「受益があるのである程度の負担はしかたない」と回答している。費用負担の額についても、計画時点より現時点の方が、「ほぼ妥当である」との回答が増加している。(2)りんかい線の整備による開発区域内の利用者便益(割引後 30年集計)を GREPEで推定すると、開発者の費用負担金の額を上回った。(3)これらの結果から、鉄道整備の財源方式として、請願駅方式で駅周辺の開発者からの負担金を徴収する方式は、一定程度の妥当性があると想定される。
著者
高津 俊司 佐藤 馨一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.553-558, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
11

本研究は、開発者負担金による鉄道整備の事後評価を目的として、都市開発と一体的に整備が進められた臨海副都心線(りんかい線)を事例として、開発者負担金について開発者にアンケート調査を行い、開業後の輸送実績を元にして鉄道計画支援システム(GRAPE:GIS for Railway Project Evaluation)を用いて鉄道整備効果を分析し、開発者負担方式の評価と今後の課題を考察した。その結果、次のような知見が得られた。(1)事後アンケート調査によれば、鉄道に対する評価としては、広域、大量、高速などの特性を評価し、約8割の会社が「受益があるのである程度の負担はしかたない」と回答している。費用負担の額についても、計画時点より現時点の方が、「ほぼ妥当である」との回答が増加している。(2)りんかい線の整備による開発区域内の利用者便益(割引後 30年集計)を GREPEで推定すると、開発者の費用負担金の額を上回った。(3)これらの結果から、鉄道整備の財源方式として、請願駅方式で駅周辺の開発者からの負担金を徴収する方式は、一定程度の妥当性があると想定される。
著者
金田一 淳司 岸 邦宏 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.399-406, 2004-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12

都市の交通渋滞対策として, 環状道路の整備が推進されているが, ほとんどの都市で建設が進んでいないこのような中, 札幌では約70年の歳月を要したが, 日本初の一般道路による環状道路が実現した.研究成果は, 札幌環状通完成までの札幌の都市建設や都市・道路計画などを対象に, 歴史的背景, 史実, 計画の変遷を計画史の視点より研究した.その結果, 戦時体制下の国防, 防空と防火の思想を背景とした火防線を理想型の環状系広路として計画し, 実現性を踏まえた「アーク (環状系) 道路」を配置し, その思想を今日まで持続した点にあったとともに, 計画史的評価による新たな事業評価も可能であることを明らかにした.
著者
日野 智 岸 邦宏 相浦 宣徳 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.667-674, 2001

近年、航空会社には効率性を重視した経営が求められている。そのため、採算性の低い地方航空路線ではサービス水準が低下する恐れがある。そこで、本研究はコミューター航空をフィーダー路線として活用したハブ・アンド・スポークシステムの実現可能性を明らかにした。女満別空港における意識調査から時間的な制約条件から利用者は乗り継ぎ便を選択し、運賃以外にも交通方向と目的の組み合わせが影響していることが明らかとなった。また、乗り継ぎ便選択率モデルを構築し、利用者数算出とコミューター機を含めた機材運用の設定を行った。結果として、コミューター機を活用することが座席利用率を向上させうることを示した。
著者
原口 征人 日野 智 今 尚之 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.213-218, 2001-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
14

本研究では土木教育機関とその所在地にある土木事業の結びつきについて、教育機関の果たしてきた役割を考察する。特にこれまでの札幌農学校は、広井勇の築港事業に焦点が当てられてきたが、組織運営的な観点から多くの技術者が関わったといえる鉄道事業との関係を取り上げた。考察の結果、北海道庁の鉄道建設部署と札幌農学校で相互に人事上の結びつきがあり、一貫した教育の形成に作用していたことが分かった。
著者
広野 卓蔵 佐藤 馨
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3-4, pp.177-193, 1971 (Released:2012-12-11)
参考文献数
5

MSK震度階が我が国に適した震度階であるかどうかを試験するために,106の気象官署で, MSK震度とJMA震度の同時観測を1967年から1970年まで行った.このために作った調査表に地震時に観測した現象の項目をチェックして気象研究所に送り,著者等はそれによってMSK震度の決定を行った.地震を大地震と小地震に分けて,JMA震度と比較しながら統計を取った.その結果JMA震度は低震度に適し, MSK震度は高震度に適していることが分った.JMA震度3までの低震度をMSK震度になおす式はM=1.5J+1.5で,ここにMはMSK, JはJMA震度である.また大地震のときの両者の関係はM=1.5J+0.75と求められた.両者にはそれぞれ長所と短所があり,気象庁は両者を併用することが望ましい,すなわち,JMAは緊急報告用に,MSKは大地震の現地調査などに用いられる.
著者
佐藤 馨一 五十嵐 日出夫 堂柿 栄輔 中岡 良司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.191-197, 1984

年表の作成は歴史の研究において最も基本的な、しかも重要なプロセスである。土木史研究においても明治以降については、「近代欝本土木年表」としてすでに発表されている。しかし明治以前については体系的に作られた土木史年表はなく、その編成が大きな研究課題として残されている。本文はこの点に着目し、小川博三著「日本土木史概説」から明治以前の主要土木史事項を抜きだし、明治以前日本土木史年表を試作したものである。この年表では明治以前を五つに区分し、各時代ごとに30~33の項目を取り上げた。<BR>本研究の最終目的は日本土木史年表の作成にあるが、本文ではとくに年表編集のプロセスにおいて、リレーショナル・データベースを用いて簡便に土木史史料を整理し、修正し削除する方法を開発した。すなわち本研究では大型電子計算機によらず、安価でかっ日本語入出力が可能なパーソナルコンピュータを用い、さらに入力した文章データを各種ファイルに再編集した。この結果、膨大な文書史料から必要事項を任意に検索、修正、削除することが可能となり、土木史史料の作成・整理・保管・再編集作業のシステム化、迅速化が図られることになった。
著者
貝羽 義浩 大橋 洋一 佐藤 馨 佐藤 博子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.987-990, 2016 (Released:2016-10-31)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

患者は80歳,男性.腹部大動脈瘤手術後に生じた腹壁瘢痕ヘルニアに対して,メッシュを6箇所の非吸収糸による筋膜固定と金属製コイル式タックで固定する腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術を施行した.その約2年後,腹部の発赤・発熱が出現し,メッシュ感染による腹壁膿瘍の診断で入院した.膿瘍をドレナージした後,膿瘍腔を造影すると小腸と交通していたため,開腹手術を施行した.開腹所見では,メッシュの辺縁部の金属製コイル式タックが小腸と強固に癒着し穿通していた.メッシュ,膿瘍腔,癒着腸管を切除し,腸管を再建した.術後は創感染を認めたが,軽快し退院となった.腹腔内での金属製コイル式タックの使用は,金属の一部が腹腔内に突出して腸管が癒着,穿通しメッシュ感染の原因となることがあるため,吸収性タックなど金属製コイル式タック以外の固定具を用いるべきと考えられた.
著者
東本 靖史 岸 邦宏 劉 志鋼 佐藤 馨一
出版者
日本地域学会
雑誌
地域学研究 (ISSN:02876256)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.575-587, 2006
被引用文献数
1

Conventional traffic policies including TDM have attempted to switch commuters' transportation mode from the motorcar to public transportation mainly focusing on their outgoing trips. However, when commuters choose transportation modes for accessing the destinations, they consider not only the traffic service hours for their outgoing trips but also conditions for the return trips. The departure time of the final transport service and the number of bus services for evening hours are supposed to specially influence them to determine the transportation mode for their return trips. Suppose a case that although a person really wants to go to his office by bus, he cannot help commuting by car because the departure time of the last bus service for his return trip is too early for him.<br>To promote TDM policies to minimize motorcar traffic, transport planning considering commuters' convenience in their homeward trips is necessary.<br>The number of public bus users is being decreased year by year due to motorization development, which has seriously aggravated public bus earnings, meanwhile improvement of the level of public transport service is being demanded. Further the regulation of supply-demand adjustment of public bus services in Japan was abolished in 2002, and it realized free entry to bus service business and bus operators' discretional abolishment of bus lines.<br>The residents have been concerned if the bus deregulation might result in deterioration of the service quality level, specifically in discontinuance of unprofitable lines and a decrease in the no. of bus services. However, bus service businesses should be managed considering not only profitability but local needs as well.<br>Factors that are predominantly influential on users' evaluations on bus service quality are the service schedule, no. of services, and operation routes. Efficient bus service operation planning that takes into consideration local needs for these factors is indispensable toward the future.<br>This study focused on commuters' return trips whose details have not been fully identified, and through commuter's attitude surveys investigated co-relations between bus service availability improvement for commuters' return trips and their selection of transportation modes. Further, this study analyzed users' evaluations on bus service quality by the improved window method that applies DEA to identify efficiency values of the bus services by district and bus operation schedule for return trips.<br><br>JFL classification: C0, H0
著者
高津 俊司 佐藤 馨一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.553-558, 2004

本研究は、開発者負担金による鉄道整備の事後評価を目的として、都市開発と一体的に整備が進められた臨海副都心線(りんかい線)を事例として、開発者負担金について開発者にアンケート調査を行い、開業後の輸送実績を元にして鉄道計画支援システム(GRAPE:GIS for Railway Project Evaluation)を用いて鉄道整備効果を分析し、開発者負担方式の評価と今後の課題を考察した。その結果、次のような知見が得られた。(1)事後アンケート調査によれば、鉄道に対する評価としては、広域、大量、高速などの特性を評価し、約8割の会社が「受益があるのである程度の負担はしかたない」と回答している。費用負担の額についても、計画時点より現時点の方が、「ほぼ妥当である」との回答が増加している。(2)りんかい線の整備による開発区域内の利用者便益(割引後 30年集計)を GREPEで推定すると、開発者の費用負担金の額を上回った。(3)これらの結果から、鉄道整備の財源方式として、請願駅方式で駅周辺の開発者からの負担金を徴収する方式は、一定程度の妥当性があると想定される。
著者
高木 清晴 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.635-640, 2002

本論文では、今話題の北京-上海高速鉄道計画において、新幹線のような高速鉄輪と超高速リニアの二者択一の議論がある中で、筆者等は同計画における需要予測や経済財務分析を中国鉄道部と協力して行ってきた経験から、中国がとりわけ広大でかつ稠密な人口を擁する世界に例のない特別な地域であることを考慮すると、二者択一の議論は、適切ではなく、更に、将来の需要は大きいものがあるので、超高速リニアの可能性もあることから、リニアも含んだ高速交通体系の中で議論されるべきであることを主張し、また、当面の輸送力増強は、成熟した技術で在来鉄道ネットワークが利用できる高速鉄輪で建設すべきであると考察した。
著者
今 尚之 進藤 義郎 原口 征人 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.345-352, 1999

1987 (昭和62) 年に廃線となった旧国鉄士幌線の上士幌~十勝三股間には, 昭和10年代~30年代にかけて建設された大型のコンクリートアーチ橋梁など, 昭和戦前期北海道のローカル鉄道線建設工事の特徴的な土木構造物が数多く残存している. 本報告ではそれらの構造物の評価点とともに, 国鉄清算事業団の解散による撤去問題に対し, 地元で取り組まれ活動の経緯と特徴を報告し, さらに, 土木遺産を後世に伝えるために必要な保全や活用を支援する専門組織としての, 非営利団体 (NPO) の必要性について提案するものである.