著者
赤坂 和昭
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.681-690, 1995-09-05 (Released:2009-06-19)
参考文献数
44
被引用文献数
2 2

脂質の酸化により生成する過酸化脂質の高感度,高選択的な蛍光分析試薬として,ホスフィン試薬の設計・開発を行った.トリフェニルホスフィンによる脂質ヒドロペルオキシドの還元反応に着目し,過酸化脂質分析試薬としてトリフェニルホスフィンのフェニル基を蛍光発色基で置換した化合物を設計・合成した.この化合物は,それ自体には蛍光性がなく,過酸化物等によりホスフィンオキシドに酸化されることにより初めて強い蛍光性を示した.反応は,脂質過酸化反応の第一次生成物であるヒドロペルオキシドに高い選択性を示し,反応の前後の蛍光強度の変化より脂質ヒドロペルオキシドを定量することが可能であった.合成したホスフィン試薬の中で蛍光分析に最適な性質を示したジフェニル-1-ピレニルホスフィン(DPPP)は液相法,及びHPLCポストカラム法への適応が可能で,これらの方法によりそれぞれsub-nmol,及び数 pmol レベルでの脂質ヒドロペルオキシドの検出・定量が可能であった.特に, HPLC ポストカラム法ではリン脂質やトリアシルグリセロール,コレステロールエステル等の脂質クラス,あるいは分子種レベルでの分析が可能となった.本稿では,過酸化脂質分析試薬の開発の経緯を含めたホスフィン試薬の設計・合成,特性,及び食品試料や血しょう等の生体試料中の脂質ヒドロペルオキシドの分析への応用について紹介する.
著者
赤坂 和昭 今泉 啓一郎 大類 洋
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1085-1094, 1999-12-05
被引用文献数
6 8

不斉を有するエタノールアミン骨格と2,3-アントラセンジカルボン酸無水物より, 非常に強い蛍光性を有する2,8-アントラセンジカルボキシイミド型の不斉誘導体化試薬を合成した. この試薬によりメチル基の分岐による不斉を有する分岐脂肪酸を誘導体に導いた後, -50℃〜室温で, ODSカラムを用いたHPLC分析に供したところ, 2〜12位の不斉を識別することができた. NMRやCDスペクトルの解析結果より, この試薬による脂肪酸誘導体は, 試薬のエタノールアミン部で, 試薬の立体化学に依存したゴーシュ/トランス配座を優位にとり不斉の折れ曲がり構造を形成するため, 脂肪酸のアルキル鎖が試薬のアントラセンイミド基の真上を規則的なジグザグ構造をとりながら覆いかぶさるような構造をとることにより, 遠隔位の不斉識別能が発現したものと考えられた. また, 本誘導体は蛍光検出によりfmol レベルの高感度検出が可能であった.