著者
赤枝 尚樹
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.189-206, 2011-09-30 (Released:2013-11-19)
参考文献数
45
被引用文献数
2 2

これまで都市社会学では, 都市と人々の紐帯の関連についての研究が古くから蓄積されており, 永らく, 農村に比べ都市では人間関係が失われてしまっているとする「コミュニティ喪失論」の観点からの研究が主流であった. そのような流れに対し, 1940~70年代の研究によって「コミュニティ存続論」が主張され, さらにその後の実証的な研究によって「コミュニティ変容論」と呼ばれる潮流が台頭してきている. しかしながら, これまでの日本の研究においては, 限られた紐帯の側面のみが検討されてきたこと, さらには限られた地域のデータが分析されてきたことから, 一般的にどの立場の議論がより妥当であるかについての検討が十分に行われてこなかった.そこで本稿では, 全国調査データであるJGSS2003のデータを用い, 人々の第一次的紐帯の諸側面を総合的に分析することをとおして, 日本において「コミュニティ喪失論」「コミュニティ存続論」「コミュニティ変容論」のどれがより妥当であるかについて, 検討を行った. その結果, 日本の全国的な傾向において, 「コミュニティ喪失論」や「コミュニティ存続論」を支持する結果は得られず, 「コミュニティ変容論」がより妥当であることがわかった.
著者
赤枝 尚樹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.321-338, 2011 (Released:2012-09-01)
参考文献数
31
被引用文献数
2

これまでの都市社会学の議論において,C. S. Fischerは,都市が似たもの同士で結びつく傾向―同類結合―を促進するとの議論を行なっている.なぜならば,都市では多様な人々と結びつく機会が豊富であり,選択性が高いため,人々は自分と似た人を選んで結びつくと考えられるからである.そして,そのことが都市での多様な下位文化を維持する原動力になるとされている.このように同類結合の議論はFischer下位文化論の中心的なテーゼといえるが,日本では,都市が同類結合に及ぼす影響について,これまで十分な検討は行われてこなかった.そこで本稿では,「年齢」「学歴」「職業」「趣味・娯楽」の四つの側面における同類結合について,エゴセントリック・ネットワークデータにマルチレベル分析を適用し,都市効果の検討を行った.その結果,日本において,(1)ライフサイクル段階として「年齢」や,階層としての「学歴」と「職業」の同類結合に関しては,都市効果がみられないこと,(2)「趣味・娯楽の共有」に基づく同類結合は,都市によって促進されること,の二点が明らかになった.
著者
赤枝 尚樹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-16, 2013 (Released:2014-09-01)
参考文献数
74

都市社会学ではこれまで多くの都市理論が展開されており,その中でも,C.S. Fischerの下位文化理論は現在最も有力な都市理論として位置づけられている.そこで本稿では,受賞論文を参照しながら,下位文化理論のもつ意義と可能性について考えてみたい.下位文化理論の意義と可能性については,(1)様々な国や時代への適用可能性の広さ,(2)都市社会学の議論形式を発展・精緻化する可能性,の2点が挙げられる.よって本稿では,それに対応して,第一に,下位文化理論の日本への適用可能性に関するより総合的な検討,第二に,下位文化理論の今後の展開可能性について議論する.そしてそのために計量研究の側から考えていくべきこととしては,社会調査やデータ分析の過程において,理論の再現可能性を高めていくことが挙げられる.
著者
赤枝 尚樹
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.69-85,186, 2012-02-29 (Released:2015-05-13)
参考文献数
34

The purpose of this study is to explore the complex generation processes of unconventionality. Unconventionality is defined as the urban way of life by C. S.Fischer, who advocated the subcultural theory of urbanism. This theory insists that unconventionality is generated by the subcultural variety of an urban place. However, since some scholars say that unconventionality is generated by the community liberation process, as advocated by B. Wellman, opinion varies as to the generation mechanism of unconventionality. What causes this disagreement? We believe that this disagreement has arisen from the breadth of scope of unconventionality, so we here propose that unconventionality displays two main facets. One is ‘orientation to variety’, defined as an attitude of toleration towards various lifestyles, while the other is ‘orientation to change’, defined as an attitude preferring change to preservation of the status quo. In this paper, we investigate separately the determinants of the two facets of unconventionality, using the data of the Japanese General Social Survey (JGSS) 2003, which have been linked with aggregate-level data. Using a multilevel structural equation model, we examine the subcultural theory of urbanism and the community liberated perspective. From analysis of the multilevel model, we found two results. First, ‘orientation to variety’ is generated by the mechanism of the subcultural theory of urbanism. Second, ‘orientation to change’ is generated by the mechanism of the community liberated perspective. The results from this study indicate that the subcultural theory of urbanism is not the only one to explain unconventionality; unconventionality is generated by complex processes which contain the mechanism of the subcultural theory of urbanism and also the mechanism of the community liberated perspective. Moreover, they suggest that both the subcultural theory of urbanism and the community liberated perspective are supported in Japan.