- 著者
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赤枝 尚樹
- 出版者
- 数理社会学会
- 雑誌
- 理論と方法 (ISSN:09131442)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.321-338, 2011 (Released:2012-09-01)
- 参考文献数
- 31
- 被引用文献数
-
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これまでの都市社会学の議論において,C. S. Fischerは,都市が似たもの同士で結びつく傾向―同類結合―を促進するとの議論を行なっている.なぜならば,都市では多様な人々と結びつく機会が豊富であり,選択性が高いため,人々は自分と似た人を選んで結びつくと考えられるからである.そして,そのことが都市での多様な下位文化を維持する原動力になるとされている.このように同類結合の議論はFischer下位文化論の中心的なテーゼといえるが,日本では,都市が同類結合に及ぼす影響について,これまで十分な検討は行われてこなかった.そこで本稿では,「年齢」「学歴」「職業」「趣味・娯楽」の四つの側面における同類結合について,エゴセントリック・ネットワークデータにマルチレベル分析を適用し,都市効果の検討を行った.その結果,日本において,(1)ライフサイクル段階として「年齢」や,階層としての「学歴」と「職業」の同類結合に関しては,都市効果がみられないこと,(2)「趣味・娯楽の共有」に基づく同類結合は,都市によって促進されること,の二点が明らかになった.