著者
河合 賢 岸川 直人 伊藤 敬 足立 史朗
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.31-34, 2003-01-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
10
被引用文献数
1

背景:glomus腫瘍は毛細血管の先端にある神経筋性装置に由来する良性腫瘍で, そのほとんどは四肢末端や爪床に発生する. 胃粘膜下腫瘍として発生し, 術中迅速細胞診にて推定し得たglomus腫瘍を経験したので報告する.症例:32歳, 女性. 高度貧血の原因精査の過程で, 出血を伴う胃粘膜下腫瘍が認められた. 術中の捺印細胞診では, 単一で異型度の低い腫瘍細胞が結合性の強い小集塊を形成しているのが認められた. クロマチンパターンが均上一で結合性の強い像からglomus腫瘍が疑われた. 組織診断において細胞像を反映する典型的なglomus腫瘍の像が確認され, 免疫組織染色の結果も併せて診断が確定した.結論:小型類円形の均一な腫瘍細胞からなる胃粘膜下腫瘍としてはcarcinoid腫瘍が鑑別にあげられるが, 腫瘍細胞の結合性の強さやクロマチンの性状から, その鑑別は比較的容易と考えられた.
著者
大原 信福 森田 俊治 小森 孝通 谷田 司 野田 剛広 今村 博司 岩澤 卓 保本 卓 足立 史朗 堂野 恵三
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.456-462, 2015-05-01 (Released:2015-05-16)
参考文献数
18

下腸間膜動脈領域に形成された動静脈奇形(arteriovenous malformation;以下,AVMと略記)によって虚血性大腸炎が発症したと考えられた1例について報告する.AVMにより虚血性大腸炎を発症することはまれであり,本邦で初の報告例と思われるため報告する.症例は74歳の男性で,血便を主訴に来院した.大腸内視鏡検査で左側結腸に高度の粘膜浮腫とうっ血を認め,虚血性大腸炎が疑われた.腹部造影CTでは左側結腸壁の造影不良と,下腸間膜動脈領域の2か所にAVMが指摘された.血管造影検査で下腸間膜AVMを確認し,引き続き塞栓療法を試みたが手技中に腸管浮腫が急性増悪したため中断した.結腸左半切除術を施行し,単孔式横行結腸人工肛門を造設した.術後は合併症なく経過し,術後7か月まで再出血を認めていない.