著者
輪違 弘樹 川上 榮一 黒飛 浩二 竹島 勝也 久保田 修 橋本 彩弥香 大林 櫻子(NUT) 丸山 二美子(MT) 吉田 信司(MD) 中村 隆
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.65, 2011 (Released:2011-08-03)

【目的】 近年, 栄養サポートチーム(以下NST)稼働施設は急増しており, それに伴いリハビリテーション(以下RH)栄養の先行研究報告は増加しているが, 十分なEBMは示せていない. 高齢者の栄養障害は, 日常生活活動 (以下ADL)や生活の質 (以下QOL)を低下させるだけでなく, 呼吸機能低下や創傷治癒の遅延, 生体の防御機構である免疫能を低下させ, 生命予後を大きく左右する. RHに適切な臨床栄養管理を並行することで, RH効果は高まると考える. 本研究の目的は,栄養状態とRH効果を後方視的に調査し, その関連を明らかにすることである. 当研究はヘルシンキ宣言に沿って, 対象者に研究の主旨を説明し, 同意を得た上で実施した. 【方法】 対象者は, 2010.6月~2010.10月に当院一般病棟を自宅退院した症例73名.栄養状態の指標は入院約3週間後の半減期血清アルブミン値(以下Alb値)を用い, 栄養状態正常群(Alb3.5以上,以下正常群), 栄養状態低値群(Alb値3.5未満,以下低値群)に分類し, RH介入前後のBarthel Index(以下BI),RH施行日数を比較検討した. 統計処理はt検定を用い, 有意水準は0.05以下とした. 【結果】 正常群は29名(男女比7:22 平均年齢は77.0±10.9歳), 低値群は44名(男女比15:29 平均年齢83.8±10.2歳)であった. RH開始時の平均BIは正常群87.9±13.8, 低値群34.0±24.1で, 正常群が有意に高かった. RH施行日数は正常群18.3±12.2日, 低値群28.3±18.3日で, 正常群が有意に短かった. 退院時のAlb値、BIは正常群、低値群ともに有意に上昇している. RH開始時のAlb値(入院約3週間後の半減期Alb値)とRH施行日数(開始から退院までの日数)には有意な相関があった. RH開始時のBIとRH施行日数には有意な相関はみられなかった. 【考察】 低値群では早期から積極的なRHはかえって生命維持のための栄養素の同化を阻害し, 異化を助長させてしまう可能性が高く, RHが逆効果になることが考えられるので, 今後の検討を要する. 低値群の症例では全身状態を理解し, 臨床栄養管理と早期から無理のない適切なRHや効率の良い動作指導することが重要になっていく可能性があり, 患者のADLやQOLの向上をより期待できると考えられる. そのためには, RHスタッフは栄養スクリーニングや評価を実施し, その患者の栄養状態に見合ったRHプログラムを立案することが望ましいと考えられる. 今後の検討課題として,低栄養症例へのRH効果を明らかにできる評価方法を模索し, RHにおいてPTが発揮できる専門性や, 低栄養症例のPTアプローチを考えていくことが重要である. 【まとめ】 今後, 高齢化社会が進む中, 栄養障害患者の増加が予想される. そのため栄養状態を考えたRHを実践することは運動機能・ADLの向上のために重要である.
著者
小向 佳奈子 藤本 修平 杉田 翔 光武 誠吾 輪違 弘樹 小林 資英
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.683-693, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
74
被引用文献数
2

〔目的〕リハビリテーション分野で用いられている社会参加の定義とその評価指標について,システマティックレビューを用いて評価することとした.〔対象と方法〕リハビリテーションと社会参加に関する語句から対象論文の検索を行った(Database:MEDLINE).抽出した論文について,社会参加の定義や評価指標を抽出し,テキスト分析によってその概念をまとめた.〔結果〕社会参加の定義として「仕事,家庭での活動,余暇活動ができる」,「家庭,社会における役割を持てる」などが挙げられた.定義によって用いられている評価指標に相違がみられた.〔結語〕社会参加の定義は様々であり,その定義に合わせた評価指標を選択する必要性が示唆された.
著者
西 啓太郎 磯谷 隆介 輪違 弘樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1430, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】介護保険は2000年からスタートし,年を重ねる毎にその保険費が増大している。当初3.6兆円(2000年)が8.6兆円(2014年)にまで膨れ上がっている。厚生労働省の推計によると団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年に介護保険費は19.8兆円になると予想されており,国家予算がおよそ100兆円とするとその約2割を占めている。地域で理学療法士が介入することによっての介護度の変化と,それによる経済効果を具体的な数値で示したので報告をする。【方法】対象はH25.6~H27.10の間に弊社の2ヶ所のデイに通所している利用者のうち,6ヶ月以上利用し,理学療法士による運動・生活指導,個別リハを受け,その間に介護度が変化した利用者74名(男性19名,女性55名,年齢80.2±6.7歳)とした。介護度とその利用回数を抽出し,介護保険費(介護保険給付費+自己負担分)を計算した。介護保険の認定期間は新規を除くと原則12ヶ月となっているため,介護度が変化する以前と以後で1年間利用したと仮定し,年間の介護保険費に換算して差を比較した。比較には対応のあるt検定を使用した。また,理学療法士による介入は運動指導,生活指導,個別リハを行い。各利用者個人と達成可能な目標を決め,達成に向けて個別・集団での運動プログラムを実施した。【結果】介護度認定の前後での介護度は有意に改善が見られた(p<0.01)。対象者74名のうち,介護保険更新前は要支援1:15名,要支援2:19名,要介護1:17名,要介護2:11名,要介護3:6名,要介護4:6名,要介護5:0名であった。介護保険更新後は要支援1:15名,要支援2:19名,要介護1:16名,要介護2:12名,要介護3:5名,要介護4:0名,要介護5:0名であった。また,更新後自立に至った利用者は7名であった。介護度認定の前後での利用料金は優位に差が見られた(p<0.01)。年間での介護保険費を計算すると更新前は32,477,640(円/年),更新後は28,527,528(円/年)となり差額は3,950,112(円/年)であった。【結論】今回の結果において介護保険費抑制効果は3期分の合計で3,950,112(円/年間)であった。先行研究においてリハビリ専門職の介入によって介護度が優位に改善する可能性は既に言われている。故に今回の報告は国家予算を圧迫している介護保険費を理学療法士の介入によって抑制できる示唆となった。各地方行政と協同した積極的なリハビリ職種の介入によって,介護保険費の削減が可能であることが示唆された。