著者
前田 樹海 山下 雅子 北島 泰子 辻 由紀
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.36, 2014 (Released:2014-10-05)

誰の目にも明らかな生命徴候の変化がないにもかかわらず、入院患者の死が近いことがわかるとされる看護師の存在が現場ではよく知られている。これらの看護師がもつ特性を明らかにするために看護職を対象とした質問紙調査を実施した。便宜的抽出法による看護有資格者252名中143名(56.7%)から回答が得られ、明らかな生命徴候の変化によらず入院患者の死期を認識した経験が「ある」と回答した者は47名(33.8%)であった。検定の結果、教育背景と看護師免許の有無、看護師としての経験年数が、明らかな生命徴候の変化によらず入院患者の死期を認識した経験の有無との間に有意な関連を示した。知識を蓄えるだけでなく生み出す訓練をしてきたそれらの看護師の中に、臨床現場において経験を知識として蓄積したり、経験から新たな知識を生み出すことができる者が多いことが示唆された。
著者
山下 雅子 前田 樹海 北島 泰子 辻 由紀
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.35, 2014 (Released:2014-10-05)

入院患者の死期予見経験を持つ看護職の存在については、逸話として耳にすることはあってもその実証的研究はほぼ皆無である。本調査では、それが実体のない風聞なのかそれともそのような予見経験を自覚する看護職は実在するのかを実証的に調べることにより、一般にはあまり知られていない、看護職内での直感的推論の例を示すデータを提示することを目的とした。結果として調査対象者(277名)の約3割が、生命徴候変化の無い死期予見経験がある、またはそのようなことができる看護職を知っていると報告していることから、患者の死期予見は全くの風聞ではなく、少なくともその経験を自称する看護職は稀な存在ではないと考えられた。
著者
前田 樹海 山下 雅子 北島 泰子 辻 由紀 古澤 圭壱
出版者
東京有明医療大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

明らかな生命徴候の変化によらず近い将来の患者の死期を予見できる看護師の存在ならびに、かかる看護技術の特性、獲得様式を明らかにするために調査を実施した結果、(1)このような患者の死期を認識した経験のある看護師は経験年数との有意な関連が認められること、(2)生命徴候の明らかな変化によらない患者の死の予見のほとんどが看護記録に残されていないが「その予感を他のスタッフや家族に話した」「他のナースからその予感について聞かされた」など、確認可能な事実を以て事前にその死を予感していたケースがあること、(3)看取り以外にも、せん妄、転倒・転落などのリスクを暗黙的な技術で評価している可能性が示された。