著者
辻井 農亜 岡田 章
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.225-231, 2007-12

本研究は1994年から2003年までの10年間に近畿大学医学部付属病院メンタルヘルス科へ不登校を主訴に受診した6-18歳の患者533人を不登校の病態の変化を調べることを目的として1994〜1998年の前期と1999〜2003年の後期に分け,受診者数,主訴の内訳,不登校に陥った契機,初診時診断(ICD-10),転機について性別,学年別(小学生,中学生,高校生)に比較検討を行った.結果は,10年間の調査期間中の不登校状態にある受診者数に増減はないが前期に比べて後期の男子の受診者数が減少し,不登校に随伴する症状を呈する中高生の女子の受診者数が増加していた.不登校の契機は学校生活によるものが最も多かった.初診時診断はF43(重度ストレス障害および適応障害)の比率が最も大きく,特に女子では男子に比べF44(解離性[転換性]障害),F50(摂食障害)の比率が大きかった.転帰は,中高生に比べ小学生での再登校の比率が大きかった.本調査の結果から,当科では不登校の子どもの受診形態が変化し,特に中高生の女子において不登校に随伴する症状の治療が受診動機となっていることが示唆された.これは不登校に対する理解が浸透し不登校状態にある子どもに対応する各関係機関の役割が明確になり,医療機関は学年別,性別に応じて不登校状態の背景にある症状を把握し治療する役割が求められているためと考えられた.