著者
森川 美羽 石崎 武志 高野 智早 渡辺 享平 田畑 麻里 佐藤 義高 西本 武史 小坂 浩隆 片山 寛次
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.541-544, 2012 (Released:2012-08-21)
参考文献数
18

【目的】がんの診療に伴い, 吃逆はしばしば経験し, 治療に難渋することが多い. 化学療法に伴って出現した持続性の吃逆に対して, プレガバリンが奏効した2症例を経験したので報告する. 【症例】症例は共に進行肺扁平上皮がんであり, 症例1はカルボプラチン+パクリタキセル, 症例2はネダプラチン+イリノテカンの2剤併用化学療法を施行した. 2症例共に抗がん剤の投与に応じて吃逆の出現, 増悪を認めており, 薬剤が誘発したと考えられた. 吃逆はメトクロプラミド, クロルプロマジン, ガバペンチンに抵抗性であり, プレガバリン 150 mg/日の投与によりすみやかに改善した. 【結論】鎮痛補助薬として近年用いられるようになったプレガバリンは, その薬理作用である神経細胞の過剰興奮の抑制により吃逆にも効果がある可能性がある.
著者
井上 建 小坂 浩隆 岡崎 玲子 飯田 直子 磯部 昌憲 稲田 修士 岡田 あゆみ 岡本 百合 香山 雪彦 河合 啓介 河野 次郎 菊地 裕絵 木村 大 越野 由紀 小林 聡幸 清水 真理子 庄司 保子 髙倉 修 高宮 静男 竹林 淳和 林田 麻衣子 樋口 文宏 細木 瑞穂 水田 桂子 米良 貴嗣 山内 常生 山崎 允宏 和田 良久 北島 翼 大谷 良子 永田 利彦 作田 亮一
出版者
日本摂食障害学会
雑誌
日本摂食障害学会雑誌 (ISSN:24360139)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.3-12, 2023-10-05 (Released:2023-10-05)
参考文献数
19

COVID-19パンデミック下,摂⾷障害患者における社会からの孤立,受診控え,症状の悪化,さらに新規患者の増加などが報告された。そこで我々は,2019,2020,2021年の神経性やせ症(Anorexia Nervosa: AN)および回避/制限性食物摂取障害(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder: ARFID)の新規患者数,入院患者数,性別,年齢層,COVID-19の影響の有無について,国内で摂食障害を専門的に診療している医療機関に対して調査を依頼した。すべての項目に回答のあった28施設の結果について集計・解析した。ANの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は400人,266人,2020年は480人,300人,2021年は610人,309人であった。一方,ARFIDの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は70人,15人,2020年は97人,22人,2021年は112人,17人であった。AN,ARFIDともに2019年と比較して2020年,2021年は新規患者数,入院患者数ともに増加し,これは10代でより顕著であった。さらにANにおいては20代の患者も増加していた。COVID-19 パンデミック下にARFID 患者数の増加が示されたことは重要な知見であると考えた。
著者
小坂 浩隆 田邊 宏樹 守田 知代 岡本 悠子 齋藤 大輔 石飛 信 棟居 俊夫 和田 有司 定藤 規弘
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.255-261, 2012 (Released:2017-02-16)
参考文献数
21

自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核症状である社会性障害の脳基盤を解明するために,青年期の高機能ASD群に対して,共同研究機関とともに行ってきたfMRI研究を一部紹介する。自己顔認知課題においては,ASD群は自己顔認知処理がなされる後部帯状回の機能低下と情動処理に関わる右島の賦活異常を認め,認知と情動的評価に解離がみられた。相互模倣課題においては,自己動作実行と他者動作観察の同一性効果を求め,ASD群は左側の extrastriate body area の賦活が不十分で,症状重症度と逆相関を認めた。アイコンタクト・共同注視課題における2 台 MR同時測定(Dual-fMRI)においては,ASD群は視覚野の賦活低下を認めたほか,定型発達者ペアで認められた意図の共有を示す右下前頭葉活動の同調性が認められなかった。これらの脳領域が,ASD の social brain markerになる可能性があると考えられた。
著者
米田 誠 田中 雅嗣 小坂 浩隆
出版者
福井県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「橋本脳症」は、慢性甲状腺炎に伴う自己免疫性精神神経疾患で、免疫治療が奏効する。橋本脳症の中には幻覚・妄想を呈する患者も多く、統合失調症の中に橋本脳症が潜在する可能性がある。本研究では、①抗NAE抗体を用いて統合失調症と診断されている患者から橋本脳症を抽出し、②その臨床的特徴(臨床情報・症候、脳画像MRI、脳還流SPECT)と背景遺伝子多型(免疫関連)を明らかにし、最終的に③診断指針を作成する。
著者
小坂 浩隆 田邊 宏樹 守田 知代 岡本 悠子 齋藤 大輔 石飛 信 棟居 俊夫 和田 有司 定藤 規弘
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.255-261, 2012

自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核症状である社会性障害の脳基盤を解明するために,青年期の高機能ASD群に対して,共同研究機関とともに行ってきたfMRI研究を一部紹介する。自己顔認知課題においては,ASD群は自己顔認知処理がなされる後部帯状回の機能低下と情動処理に関わる右島の賦活異常を認め,認知と情動的評価に解離がみられた。相互模倣課題においては,自己動作実行と他者動作観察の同一性効果を求め,ASD群は左側の extrastriate body area の賦活が不十分で,症状重症度と逆相関を認めた。アイコンタクト・共同注視課題における2 台 MR同時測定(Dual-fMRI)においては,ASD群は視覚野の賦活低下を認めたほか,定型発達者ペアで認められた意図の共有を示す右下前頭葉活動の同調性が認められなかった。これらの脳領域が,ASD の social brain markerになる可能性があると考えられた。
著者
市川 宏伸 齊藤 万比古 齊藤 卓弥 仮屋 暢聡 小平 雅基 太田 晴久 岸田 郁子 三上 克央 太田 豊作 姜 昌勲 小坂 浩隆 堀内 史枝 奥津 大樹 藤原 正和 岩波 明
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.399-409, 2018-04-15

抄録 小児ADHDの症状評価で世界的に汎用されるADHD-RS-Ⅳは,海外にて成人ADHDに対応する質問(prompts)と組み合わせて成人向けに使用されている(ADHD-RS-Ⅳ with adult prompts)。本研究は,日本語版promptsを作成し,日本人の成人ADHD患者36名および非ADHD成人被験者12名を対象に,その信頼性および妥当性を検討した。その結果,評価者内および評価者間信頼性の指標である級内相関係数は高く,内部一貫性の指標であるCronbach αは高い値を示した。CAARS日本語版およびCGI-Sとの相関で検討した妥当性も良好であり,かつADHD患者と非ADHD被験者との判別能力を検討するROC解析においても優れた結果であった。成人用prompts日本語版は,ADHD-RS-Ⅳとともに用いることで,成人ADHDの症状評価の手段として有用であると考えられた。
著者
友田 明美 藤澤 隆史 島田 浩二 小坂 浩隆
出版者
福井大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

自閉スペクトラム症(ASD)の発症リスク因子である環境ストレスとしてのミクログリア活性化分子ネットワークに着目し、ASDのバイオマーカー候補としてmiRNA(micro-RNA)解析を行った。福井県A町で出生した子の発達に関する前向きコホート調査参加者の母子に対し、視線計測検出装置による社会性の評価を行った。その結果、母のメンタルヘルスは乳児期における子の社会性発達へ影響することが示唆された。また、月齢により異なる側面の社会性が発達するが、その発達の程度はOXTR遺伝子多型によって異なる可能性が示唆された。本成果は、ASDの病態解明を目指した臨床応用への足掛かりになりうる。
著者
定藤 規弘 岡沢 秀彦 小坂 浩隆 飯高 哲也 板倉 昭二 小枝 達也
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

「向社会行動は、自他相同性を出発点として発達し、広義の心の理論を中心とした認知的社会能力を基盤として、共感による情動変化ならびに、社会的報酬により誘導される」との仮説のもと、他者行為を自己の運動表象に写像することにより他者行為理解に至るという直接照合仮説を証明し、2個体同時計測fMRIシステムを用いて間主観性の神経基盤を明らかにした。自己認知と自己意識情動の神経基盤並びに自閉症群での変異を描出したうえで、向社会行動が他者からの承認という社会報酬によって動機づけられる一方、援助行動に起因する満足感(温情効果)共感を介して援助行動の動因として働きうることを機能的MRI実験により示した。