著者
大辻 英吾 菊岡 範一 辻本 洋行 桑田 克也 中村 隆一 菅 啓祐
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.991-994, 1993-04-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

22年前に胃潰瘍のために胃切除術を受けて, BillrothII法により再建された既往歴を持つ54歳の女性が,シラタキコンニャクによる食餌性イレウスを発症した.夕食にシラタキコンニャクを食べ,その翌朝から嘔気,嘔吐と共に上腹部に激しい痔痛を訴えて来院した.腹部レントゲン検査で鏡面像を伴う小腸ガスを認め,癒着性イレウスと診断した.保存的治療では改善しなかったため,開腹術を行ったところ,回腸末端より約210cmの小腸に閉塞物である食物塊が透見された.腸切開を施行して食物塊を摘出したところ,前日の夕食に食べたシラタキコンニャクが一塊となっていた.食餌性イレウスの原因となる食物には,柿,昆布,コンニャク,オレンジなどがあり,特に胃切除後の患者に多いと報告されている.イレウス状態の胃切除後患者の診察にあたっては,食ぺ物に関する問診が重要であると考えられた.
著者
橋本 歩 平崎 憲範 辻本 洋行 萩原 明郎
出版者
同志社大学理工学研究所
雑誌
同志社大学理工学研究報告 (ISSN:00368172)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.82-87, 2009-07

今日、一般的に手術中の出血部位に局所投与される止血材は、動物由来のコラーゲン製材やヒト血液成分製材である。これらのコラーゲンや血液成分は体組織を構成する基本的たんぱく質であり、生体適合性に優れる。しかし、上記の製材がヒト感染性のあるウイルスやプリオンなどの感染性因子を含む可能性があることは、臨床的には重大な問題点である。この感染性因子の危険性を軽減するために、われわれは「キトサン・スポンジ」というキトサン由来の新規の止血材を開発した。キトサンは動物やヒトではなく甲殻類由来であるので、ヒト感染性因子を含む危険性は非常に低い。キトサンスポンジは、凍結乾燥法によって作成され、止血材としての基本的な二つの性質について、臨床的に最も一般的な止血材の一つであるフィブリン糊との比較において評価された。その第一番目の性質の組織接着力はせん断応力で評価し、第2番目の性質の止血力は腎臓からの出血モデルで比較した。これらの二つの性質は両者間で殆ど同じであった。これらの結果から、キトサン・スポンジは、フィブリン糊に匹敵する止血効果を持ち、「感染性因子を含まない」新規の止血材となる可能性があると考えられる。
著者
辻本 洋行 萩原 明於
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.522-529, 2007 (Released:2007-12-13)
参考文献数
45

腹腔内に投与された水溶性抗がん剤のほとんどは速やかに循環血液中に吸収される.そのため少量の水に溶解した抗がん剤溶液の腹腔内投与では,有効な腹腔内抗がん剤濃度の維持を得ることが出来ない.この問題を解決するため,さまざまなdrug delivery system(DDS)を用いた腹腔内がん化学療法が考案・開発されてきた.また,近年ようやく腹膜転移の成立機構や腹腔内からの薬物吸収動態などの解明が行われるようになってきた.本稿においては,それらに基づくDDSを用いた腹腔内がん化学療法について,最近のtopicsを交えながら概説する.