著者
辻村 優英
出版者
宗教倫理学会
雑誌
宗教と倫理 (ISSN:13468219)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.77-98, 2012-10

近代の科学技術や経済活動等に大きく依存する地球環境問題(global environmental issues)の解決に向けて、様々な学問分野からのアプローチが試みられている。宗教学もその例に漏れず、諸宗教と環境との関わりについての研究(例えば、Harvard University Pressから出されているReligions of the World and Ecologyシリーズ)がなされている。そうしたなかで、本論文が目的とするのは、地球環境問題に対する仏教的アプローチの一例としてダライ・ラマ14世の環境思想を取り上げ、その輪郭を描くことにある。彼が示唆する環境思想は、非暴力によって特徴付けられる。非暴力の対象となるのは有情であるが、その際問題となるのは植物の位置づけである。中国・日本には草木成仏思想があるけれども、ダライ・ラマにおいてはそうではなく、植物は有情に含まれない。結果、植物は縁起の論理を媒介することにより、環境思想の中に組み込まれることとなる。
著者
辻村 優英 ツジムラ マサヒデ Tsujimura Masahide
出版者
「宗教と社会貢献」研究会
雑誌
宗教と社会貢献 (ISSN:21856869)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.17-40, 2012-10

本稿では、ダライ・ラマ14 世の諸々の発言から、「宗教と社会貢献」にかんする見解を浮き彫りにすることを目的としている。ダライ・ラマ14 世は「宗教」(religion)と「スピリチュアリティ」(spirituality)とを区別しつつ「普遍的宗教」(universal religion)がすべての人々に必要であるとした。その核心は「利他心」である。また、彼のいう利他主義は、は「賢明な自己利益」(wise self-interest)という言葉によって特徴づけられるものであり、他者の利益の実現のうちに自己利益を見出すものである。
著者
辻村 優英
出版者
宗教倫理学会
雑誌
宗教と倫理 (ISSN:13468219)
巻号頁・発行日
no.6, pp.17-31, 2006-10

いかにして非暴力のモチベーションを形成するか。これが本稿のテーマである。焦点を当てるのはチベット亡命政府内閣主席大臣サムドン・リンポチェのサティヤーグラハという非暴力運動についての著述である。彼のこの著述は亡命チベット人社会が暴力的な手段を希求する可能性が高まった1995 年に出された。彼はいかにして非暴力の道へチベット人をいざなおうとしたのか。彼はチベットの悲劇が引き起こされたのはチベット人自身に原 因があるからだとする。そしてそれはカルマであると。この、カルマであるとするところにこそ、非暴力のモチベーションを形成する核心があると考えられる。その核心に潜む原理とは何か。それは、自己自身に対する通時的な互酬性の原理であり、価値に即した予定的な原理であることを明らかにしたい。How can a motive for nonviolence be given? This is the topic of this paper. We shall focus on the work on nonviolence activity called Satyāgraha (in Tibetan, bden pa'i u tshugs), written by Samdhong Rinpoche who is the prime minister (in Tibetan, bka' blon khri pa) of the government of Tibet in exile. His work was published in 1995 when the possibility of Tibetans in exile wishing for violent way to a free Tibet increased. How did he lead Tibetan people to the path of nonviolence? He argues that the tragedy in Tibet was caused by people of Tibet themselves. And, it is karma (in Tibetan, las), he says. It is conceivable that the core of motivating nonviolence is in karma by which the Tibetan tragedy is explained. What is the principle within karma? This paper will clarify that it is the diachronic reciprocity with oneself, and the pre-establishing principle following the value of action.
著者
半藤 逸樹 辻村 優英
出版者
新潟大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

多極政府モデルを「善意のシステム化」を維持するクラウド・ガバナンスと仮定した上で,HANDYモデルと結合させて自由度6の力学系を構築し,パラメータの調整を行った.社会変革のシナリオについては,ステークホルダー会議でのフィードバックを取り入れた.Android/iOS対応 アプリ「環境観でつながる世界」によって,地球環境問題に関する大衆(クラウド)の価値観ネットワークの基礎データを収集し,ネットワークの時系列変化を可視化した.「善意のシステム化」モデルについては,アプリの運用再開後に再度調整を行い,2019年に公開する予定である.