著者
中嶋 佳貴 沖 陽子 足立 忠司 永井 明博 近森 秀高
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.I_29-I_37, 2020 (Released:2020-01-30)
参考文献数
29

河川生態系における沈水雑草群落の発生動態を把握するために, 岡山県南部の二級河川の前川において, 2004年から沈水雑草群落の分布を11年間調査し, 自然攪乱に伴う環境要因の変動と沈水雑草群落の分布との関係について検討した.2004年はセキショウモ及びササバモが優占し, ナガエミクリも帯状に群落を形成していた.その後, セキショウモ群落は2006年には全域に拡大し, 底質の粒径組成が細粒化すると共に全体の種組成は単純化した.ナガエミクリ群落はセキショウモ群落との競合により2007年に消失した.ササバモ群落もセキショウモ群落との競合により2008年から徐々に衰退したが, 2011年及び2013年の100mm以上の一雨降雨による自然攪乱によってセキショウモ群落が流出し, 再びササバモの分布が促されて種組成が多様化した.
著者
近森 秀高 永井 明博
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

近年の気候変動に伴う降雨パターンの経年変化を日本全国で観測された長期の日雨量, 時間雨量, 10分間雨量を統計解析することにより調べ, 確率雨量が主に太平洋側で経年的に増加すること, 降雨は時間的に集中する傾向にあること, 少雨の頻度が全国的に増加する傾向にあることを示した。また, 長期の気象データを用いて長期流出解析を行い, 全国的に渇水時の流量が減少する傾向にあることを示した。
著者
近森 秀高
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究では、3個のタンクからなる単純な洪水流出モデルにカルマンフィルターを併用した排水機場洪水位実時間予測システムについて、カルマンフィルターの適用条件およびモデルの単純化が予測精度に及ぼす影響と、この予測システムに基づく排水機制御システムの有用性について吟味した。得られた結果は以下のようである。1.この予測システムを用いて、昭和47年7月および昭和61年7月豪雨時の巨椋・久御山両排水機場における洪水位の予測を行い、カルマンフィルターの適用条件と予測精度との関係について吟味した。その結果、状態変量の推定誤差分散行列の対角項は1×10^<-3>、システム誤差分散は1×10^<-2>〜10^<-3>、観測誤差分散は1×10^<-2>未満程度がよいことが分かった。2.予測システムを単純化した場合の予測精度の変化について検討した。その結果、洪水位予測の際重要になるピーク水位の予測誤差に着目すると、a)上流域からの流出は非線形タンク1個で表現してもよいこと、b)上流域タンクの孔係数は流出解析の結果に基づいて固定しておいても実用上差し支えないこと、c)他流域からの流入やポンプのon-offにより水位変動が激しい場合は、氾濫域タンク水深をフィルタリングの対象とした方がよいこと、などが明らかになった。3.セルフチューニングコントロール理論を適用して、排水機実時間制御システムを構築し、このシステムを巨椋流域で発生させた10〜100年確率の仮想出水に適用した。その結果、この制御システムを用いた場合、排水規則に準拠して排水量を決めた場合に比べ、洪水時のピーク水位はあまり変化しないが、流域低地部での湛水時間は大幅に短縮できることが分かった。しかし、水位低減時、排水機が激しい間欠運転が起こし、排水管理上問題となることも明らかになった。