- 著者
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遠山 弘法
- 出版者
- 日本生態学会
- 雑誌
- 日本生態学会大会講演要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.51, pp.230, 2004
スミレ属の多くは開放花、閉鎖花をつける。このような2型的な花による繁殖システムは、送粉昆虫利用度の季節的変化に対する適応であると考えられている。つまり、送粉昆虫の利用度が高い春先に開放花の他殖による種子生産を行い、樹木の展葉にともなって光環境が悪化し、送粉昆虫の利用度が低下する初夏以降に閉鎖花の自殖による種子生産を行うことで、一年を通じ繁殖成功を最大にしていると考えられている。<br><br>このような繁殖システムを持つスミレ属の近縁2種間では、生育地の光環境や送粉昆虫利用度の違いに対応して開放花への投資量が異なる可能性がある。つまり明るい環境下に生育し、開放花による他家受粉が期待できる種は開放花へより多くを投資し、一方で暗い環境下に生育し、送粉昆虫があまり期待できない種は開放花への投資を抑え、残りの資源を閉鎖花に投資するのではないかと考えられる。そこで、本研究では、主に明るい環境に生育するヒゴスミレと暗い環境下に生育するエイザンスミレを用いて、種間の光環境や送粉昆虫に対応した資源分配パターンを検証し、両種の適応的な資源分配パターンを明らかにする事を目的とした。<br><br>この目的にそって、熊本県阿蘇の集団で季節的な光環境、開放花数、閉鎖花数の変化、生育地の送粉昆虫の種構成、開放花への総投資量を調べた。<br><br>種間の光環境と送粉昆虫の違いに対応して、開放花生産期間や開放花への投資量の違いが観察された。暗い環境下に生育するエイザンスミレは、効果的な送粉者であるクロマルハナバチへ適応しており、その女王が現れる春先の短い間に開放花生産を集中して行い、残りの資源を閉鎖花へと分配していた。一方で、明るい環境下に生育するヒゴスミレは、多くの分類群の送粉昆虫へ適応しており、開放花生産期間を長くし、開放花へ多くを投資する事で他家受粉を促していた。<br>