著者
遠藤 崇浩
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.227-239, 2021-11-01 (Released:2022-05-17)
参考文献数
39
被引用文献数
3

日本では地震被害が頻発するが,その度に飲用水あるいは生活用水の確保が大きな社会問題となっている。その方策は多岐にわたるが近ごろ非常時における地下水利用,いわゆる災害用井戸(防災井戸)が注目を集めている。主に河川水に依存する水道システムは水の長距離輸送を前提としていることが多い。しかしその関連施設は必ずしも耐震化されていないため地震被害に脆弱である。これに対して地下水は面として流動しているため需要地に近い資源であり,緊急時の代替水源として有望視されている。災害用井戸は過去の震災で活用された例があるが,日本全体でどれくらい普及しているのか調査されてこなかった。そこで本稿では国内1741市区町村の地域防災計画を基に,日本の災害用井戸の地域分布を明らかにした。
著者
遠藤 崇浩 森 吉尚 沖 大幹
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.144-155, 2020
被引用文献数
2

<p> 飲用水及び生活用水の確保は地震災害時の最重要課題の一つである.現在,日本各地で水道施設の耐震化が進められているが,それを補完する手段の一つに災害用井戸の整備がある.災害用井戸に関する既存研究は個別事例の紹介に留まっており,広域的な普及度の調査が不十分だった.そこで本稿では全国20の政令指定都市における災害用井戸の現況を調査したうえで,2016年の熊本地震での経験から仮説的に導出した基準を用いてそれぞれの都市の災害用井戸制度の充実度評価を行った.その結果,災害用井戸が導入されているのは12の政令指定都市に留まっていること,導入済みの政令指定都市のうち千葉市,横浜市,川崎市,相模原市,名古屋市,熊本市の制度が比較的高い充実度をもつことを明らかにした.そしてその現況調査から災害用井戸の更なる普及の必要性,災害用井戸の維持に向けた環境政策統合,他の補給水利との連携強化という新たな課題を提示した.</p>