- 著者
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白土 修
遠藤 達矢
- 出版者
- 三輪書店
- 雑誌
- 脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.11, pp.957-962, 2015-11-25
はじめに
首下がり症候群(dropped head syndrome:DHS)は,頸部伸筋群の筋力低下が主因である頸部の垂れ下がり症状(chin-on-chest deformity)が発生する後弯変形の特殊病態である1).症状としては,飲み込みの悪さからくる摂食困難や洗面の不自由があり,頸部痛を訴える場合も多い.前方注視困難により歩行に支障が生じるなど日常生活にさまざまな困難をきたし,QOLを大きく低下させる.
DHSに関する報告は,1886年Gowersの重症筋無力症例が初めてである.原因疾患として,運動ニューロン疾患,多発性筋炎,筋ジストロフィー,多系統萎縮症,パーキンソン症候群,頸椎症,Machado-Joseph病,甲状腺機能低下症,進行性核上性麻痺,脳梗塞など多岐にわたる5,9,17,21).そのため,DHSを診察する場合,その鑑別を行うことが必要である.背景に治療可能な種々の疾患が存在することを考慮して専門医の判断を仰ぐことも必要である.
原因となる基礎疾患がある場合,その治療が必須である.特に神経内科的疾患の場合,内科的コントロールがとれていることが重要である.外科的介入も報告がみられているが,効果は報告によってさまざまであり,統一した結論に至っていない22).頸椎症によるDHSに対しては,手術療法が有効であったという報告も散見されるが,限界があるという意見も多い.しかし,手術による頸椎alignmentや頸部不安定性の改善は,患者の生活の質の向上に有益である場合もある4,16,18,24).
保存療法・観血的療法のいずれも,リハビリテーション(以下,リハと略す)がADLやQOL向上,姿勢改善に有効である場合がある.本稿では,DHSの報告例を再検討し,病態や姿勢の特徴を踏まえリハの可能性について述べる.