著者
都留 俊太郎
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年度は、昨年度に台湾の中央研究院及び国立台湾図書館で収集した資料へ分析を加え、その成果をアメリカ技術史学会の年会で発表することができた(審査有り)。さらに、そこで得たコメントをもとに論文を執筆し、East Asian Sicence, Technology and Society 誌に投稿した。現在審査中で、平成28年度中のアクセプトを目指している。さらに、昨年度に引続き、断続的に台湾の彰化県二林郡でフィールドワークを行い、二林蔗農事件に関する聞き取り調査を進めた。この調査研究の成果は、The Third Conference of East Asian Environmental History(審査有り)と台灣二林蔗農事件90週年紀念國際學術研討會(招待講演)で発表した。発表の際に得たコメントをもとに論文を執筆・投稿することは、平成28年度の課題として残された。また、1920年代の甘蔗栽培技術改良について前々年・前年度までの自らの研究成果を踏まえて、International Conference on the History of Science in East Asiaにて報告を行った(審査有り)。他に、『アジア・太平洋戦争辞典』(吉川弘文館、2015年10月)の「皇民化運動」・「蔡培火」・「林献堂」の三項目について執筆を担当した。
著者
都留 俊太郎
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.97, no.3, pp.405-445, 2014-05

本稿の目的は、一九三〇年代前半の台中州北斗郡における製糖会社の甘蔗作経営と台湾人篤農家による電動ポンプ導入の過程を検討することにより、農業生産の場において技術を軸として深刻化した統治の問題と、その統治の中で生き延びる可能性を考察することである。製糖会社による甘蔗生産の合理化が蔗作農家を窮迫せしめる中で、台湾電力が利用を勧誘していた電動ポンプは高額な経済的負担という難点を含みながらも甘蔗作から稲作への転換を可能にし、惨状から脱却する可能性を農家へと示した。それまで甘蔗作に尽力していた台湾人篤農家はいかなる葛藤をへてポンプ導入を決断するに至ったのか。以上を、台湾電力資料(東京大学経済学部資料室所蔵) を主に利用して明らかにする。従来の植民地研究において近代性論はその対象を社会史・文化史に集中させてきたが、本論文はそれを経済史へと拡張しつつ、近代性論の深化を試みる。