著者
酒井 昇 酒井 博史 神谷 正男 秋田 久美 白峰 克彦
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.178-183, 2003-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
13

口蓋扁桃アニサキス症の1例と原因幼虫の病理を報告した。症例は35歳女性でボラ生食後咽頭異物感を来し、右口蓋扁桃中央の陰窩に寄生虫が迷入しているのが認められた。摘出した虫体は病理学的にPseudoterranova decipiensの第4期幼虫と判明した。アニサキス症で胃や腸などの消化管以外の異所寄生の報告は時にみられるが、耳鼻咽喉科領域でも口腔、咽頭の症例が少数報告されている。扁桃のアニサキス症はこれまで4例報告されているのみで、いずれも原因幼虫はアニサキスであり、記載不明の1例を除いた3例に急性扁桃炎が伴っていた。本症例では原因幼虫が口蓋扁桃で最初の報告となるPseudoterranova decipiensであり、また扁桃の炎症症状が全くみられなかったが、その理由としてシュードテラノーバ幼虫は感染力が弱く組織侵入が少ないことが推測された。
著者
酒井 由紀夫 飛永 崇晴 酒井 博史 伊藤 広記 石田 剛 田中 省吾
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.Supple, pp.259-263, 2015-03-31 (Released:2015-12-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

4歳齢ホルスタイン種経産牛において食欲不振,頚静脈の怒張および胸垂の冷性浮腫が認められ,心音聴取が困難であったため,臨床的に創傷性心膜炎が疑われた.心臓超音波検査でも心外膜にフィブリン様構造物の付着を確認したため創傷性心膜炎と診断された後に斃死した.剖検の結果,心外膜の絨毛性増殖および心耳部の心外膜下層における白色結節が認められたが,クギなどの異物による創傷性病変は確認されなかった.牛白血病抗体が陽性で病理組織学的検索および免疫組織化学的染色結果より,本症例は心外膜における心膜中皮腫と地方病性牛白血病に起因すると思われるB細胞性リンパ腫が併発した稀な心臓腫瘍の1例と考えられた.