著者
藤井 進也 中島 振一郎 野田 賀大
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

近年、音楽経験を豊富に積んだ高齢者は、音楽経験の少ない高齢者に比べて、ワーキングメモリーや実行機能など、認知課題の成績が優れていると報告された。これらの先行研究を踏まえると、音楽はヒトの認知機能の改善や維持、長寿健康社会の実現に有用であると示唆されるが、その神経生理メカニズムは十分に解明されていない。そこで本研究では、核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)と、経頭蓋磁気刺激と高解像度脳波の同時計測手法(TMS-EEG)を用いて、音楽家と非音楽家の前頭前野グルタミン酸・γアミノ酪酸(GABA)神経機能を横断比較し、音楽機能・認知機能との関連性を解明する。
著者
野田 賀大
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.132-146, 2016-04-15 (Released:2019-03-19)
参考文献数
82

rTMSやMSTの現況について,主に海外のガイドラインを紹介しながらそれらの知見を概説した。薬物治療抵抗性うつ病(TRD)に対するrTMSは,急性期治療としてはECTには及ばないものの,再発予防目的の維持療法としてはECTと同等である可能性が示唆されている。MSTに関しては,急性期治療においてもECTと同等の治療効果が期待できる治療法であり,施術後の回復もECTと比べ非常に早いという特徴がある。さらにrTMSやMSTは,ECTが抱えているような社会的スティグマや認知機能障害などの副作用が非常に少なく,費用対効果もECTとほぼ同等であると考えられている。神経刺激治療は,薬物による副作用を軽減し,長期的には全体の医療費を抑制できる可能性も十分秘めている。今後は,rTMSをはじめとした神経刺激の治療メカニズムをさらに詳細に解明していくことで,治療パラメータやプロトコルの最適化を図り,将来的には患者個人の病態に合わせた個別化医療が実現する日がくるかもしれない。