著者
下堂薗 恵 野間 知一 宮田 隆司
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.583-586, 2017-08-18 (Released:2017-10-03)
参考文献数
15
被引用文献数
2

促通反復療法は,促通手技による意図した運動の実現とその集中反復により運動性下行路の再建,強化を目指した新たな運動療法で,主に軽度から中程度の片麻痺に対して良好な治療成績が得られている.一方,重度麻痺や痙縮などのために麻痺肢の随意性が低い場合,促通反復療法と他の治療法との併用療法が重要となる.われわれは低振幅の持続的低周波電気刺激と促通反復療法との同時併用,すなわち,わずかに筋収縮を生じる程度の神経筋電気刺激下に促通反復療法を行う方法を考案し,特に中重度の片麻痺に対して応用している.本法は患者の麻痺の程度や回復段階に応じて電気刺激強度を調整することで促通反復療法の適応を広げることが可能と考えられる.
著者
宮良 広大 松元 秀次 上間 智博 廣川 琢也 野間 知一 池田 恵子 下堂薗 恵 川平 和美
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.90-97, 2015-04-20 (Released:2017-06-09)

【目的】脳卒中片麻痺下肢への全身振動刺激(Whole body vibration;以下,WBV)による痙縮抑制メカニズム解明のために,脊髄前角細胞の興奮性評価に用いられる誘発電位F波(以下,F波)を測定し検討した。【方法】対象は下肢痙縮を有する脳卒中片麻痺患者10名。WBV実施姿勢は股関節90°屈曲位,膝関節伸展位0°で長座位とした。WBVは下腿三頭筋とハムストリングスを中心に,周波数30Hz,振幅4〜8mmの条件で5分間実施した。WBV前後にModified Ashworth Scale(以下,MAS)とF波,足関節自動および他動関節可動域,10m歩行テストを測定した。【結果】MASは有意に低下し,足関節自動背屈角度と他動関節可動域,歩行能力が有意に改善した。さらにF波振幅で低下傾向,F/M比で有意な低下を認めた。【結論】WBVによる痙縮抑制メカニズムとして脊髄前角細胞の興奮性低下の関与が示唆された。
著者
伊東 可奈子 上間 智博 金子 政人 弓場 裕之 野間 知一 衛藤 誠二 川平 和美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.F0622, 2008

【目的】振動刺激は麻痺に対する促通効果があるとされているが,一方では痙縮筋に直接刺激を与える治療は痙縮を増強してしまう危惧がある.我々は脳卒中片麻痺上肢において,振動刺激を筋に直接与える方法で痙縮抑制に効果があることを報告している.今回,脳卒中片麻痺下肢に対し,同様の治療を施行し,痙縮への影響を検討したので報告する.<BR>【方法】対象は重度な高次脳機能障害のなく,研究について同意を得た片麻痺患者6名(男性6名,年齢;63.2±13.1歳,罹病期間;5.2±3.5ヵ月,Brunnstrom tset,stageV4名,IV2名)である.振動刺激は背臥位でバイブレーター(大東電機工業株式会社製MD-01)を5本同時に使用し,麻痺側足底から下腿後面にかけて5分間加えた.振動刺激は足関節背屈位にして下腿三頭筋を伸張しながら行った.評価は振動刺激治療の前後に行い,以下の項目を実施した.1)10m歩行時間2)下肢軌道追従機能評価装置(鹿児島大学工学部作製)による下肢運動機能の評価3)筋力測定装置サイベックス(cybex6000清水メディカル株式会社)による足関節背屈抵抗最大トルク値(サイベックスは背屈の角速度を15°/s,60°/s)4)足関節背屈のModified Ashworth Scale(以下MAS)<BR> 評価は訓練効果を除くため評価前に十分な練習の後,測定を行った.<BR> 統計処理は対応のあるt検定を用い,危険率0.05%以下を有意とした.<BR>【結果】振動刺激治療によって10m歩行時間とMASには有意差はみられなかったが減少傾向がみられた.サイベックスによる足関節背屈抵抗最大トルク値は角速度15°では有意差はみられなかったが,減少傾向がみられた.角速度60°では振動後が有意に減少した(p<0.05).追従装置による評価では運動・誤差面積(p<0.05),幾何学誤差面積(p<0.01)ともに有意に減少がみられた.<BR>【考察】今回の研究で振動刺激によって脳卒中片麻痺下肢の痙縮抑制および下肢の随意運動が向上したため,痙縮筋に直接振動刺激を与えることにより痙縮が抑制され,主動作筋と拮抗筋の同時収縮が軽減したと考えられ,歩行時間や下肢の運動機能の改善に繋がったと推察される.今後,電気生理学的評価を加え,さらに症例数を増やし痙縮に対する振動刺激の有用性を検討していく.<BR>