著者
宮良 広大 坂元 顕久 宮田 隆司 大濵 倫太郎 下堂薗 恵
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.2023-005, (Released:2023-08-07)

脳梗塞後に右片麻痺を呈した回復期リハビリテーション病棟患者1名に対して,神経筋電気刺激 (NMES) を併用した反復起立自主練習を提案した結果,その継続が可能で良好な経過であったため報告する.通常の理学療法介入に加え,第20病日で反復起立自主練習,第34病日でNMES併用下での反復起立自主練習を導入した.2週間毎の定期評価として,運動機能は,Manual muscle test (MMT),骨格筋量,握力,大腿・下腿周径,バランス能力はBerg balance scale (BBS),歩行能力は10 m歩行テスト,6-minutes walking distance (6MD)を実施した.第20病日と比べ,第48病日で麻痺側膝伸展MMTが2から4,BBSが39から45点,10 m歩行テストが0.32から0.67 m/秒,6MDが265 mへ向上した.NMES併用下での反復起立自主練習は下肢筋力とバランス,歩行能力の改善に繋がる可能性がある.
著者
田中 信行 宮田 昌明 下堂薗 恵 出口 晃 國生 満 早坂 信哉 後藤 康彰
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.263-272, 2011 (Released:2013-10-18)
参考文献数
22

研究の目的:同レベルの心拍上昇作用を示す 41°C、10分入浴と200m/1.2分走行の、心血管機能、血液ガス、代謝、末梢血組成への効果を比較、検討した。対象と方法:被験者は健康男子13名(28.7 ±3.6才)である。入浴、走行研究の前に30分安静させ、血圧、脈拍、舌下温、皮膚血流を測り、正中静脈に採血用の留置針を挿入した。その後、予備実験で約30拍の心拍増加を惹起した41°C、10分の入浴と200m/1.2 分(時速10km)の走行を別々に実施し、測定と採血を負荷直後と15分後に行った。結果と考察:入浴、走行直後の心拍増加は夫々27∼25拍と同レベルだった。走行後の収縮期血圧の上昇は入浴後よりも大きく、入浴後の拡張期圧は安静時より低下した。舌下温と皮膚血流は入浴でのみ増加し、温熱性血管拡張が示唆された。 入浴後、静脈血pO2は有意に上昇し、pCO2は有意に低下したが、乳酸、ピルビン酸レベルの変化はなかった。200m走では逆にpO2は低下し、pCO2は増加し、乳酸、ピルビン酸、P/L比は有意に上昇した。これらの結果は、入浴では代謝亢進はなく、血流増加に基づく組織の著明な酸素化とCO2の排出があり、そして走行では筋肉の解糖系の促進と TCA サイクルにおける酸化の遅れを意味している。 入浴、走行による白血球増加は短時間で消失することから、これらの変化は白血球の多い壁在血流と血漿の多い中心血流の混合で説明可能と思われた。入浴や運動後のリンパ球サブセットの変化に関する従来の報告も、この観点からも検討すべきであろう。赤血球や血清蛋白の変化から算出した血液濃縮の関与は、入浴で2%、走行で4%と、比較的少なかった。結論:入浴による健康増進は、代謝亢進なしに温熱性血管拡張による十分なO2供給とCO2排出が起こることで惹起される。運動による健康増進は強力な心血管系と筋の代謝の賦活により生ずる。この受動的効果の入浴と積極的効果の運動を組み合わせが、バランスの取れた健康増進には有益と思われる。
著者
川平 和美 下堂薗 恵
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.201-205, 2007 (Released:2009-03-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1

脳卒中片麻痺の改善を促進するには再建/強化したい神経路へ興奮を伝えることを重視した治療理論と技術が必要である.促通反復療法(川平法)は個々の指の屈伸を含む新たな促通療法で,片麻痺上肢と下肢の麻痺の改善を促進している.著しい感覚障害例でも同様に有効である.リハビリテーション治療の向上のため,我々は麻痺肢の意図した運動を反復できる機能的振動刺激法などのコンピュータ化訓練器機の開発を行いつつあり,今後の発展を期待している.
著者
下堂薗 恵 野間 知一 宮田 隆司
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.583-586, 2017-08-18 (Released:2017-10-03)
参考文献数
15
被引用文献数
2

促通反復療法は,促通手技による意図した運動の実現とその集中反復により運動性下行路の再建,強化を目指した新たな運動療法で,主に軽度から中程度の片麻痺に対して良好な治療成績が得られている.一方,重度麻痺や痙縮などのために麻痺肢の随意性が低い場合,促通反復療法と他の治療法との併用療法が重要となる.われわれは低振幅の持続的低周波電気刺激と促通反復療法との同時併用,すなわち,わずかに筋収縮を生じる程度の神経筋電気刺激下に促通反復療法を行う方法を考案し,特に中重度の片麻痺に対して応用している.本法は患者の麻痺の程度や回復段階に応じて電気刺激強度を調整することで促通反復療法の適応を広げることが可能と考えられる.
著者
藤本 皓也 衛藤 誠二 田之上 恵菜 亀澤 孝 下堂薗 恵
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.113-122, 2022-02-15 (Released:2022-02-15)
参考文献数
22

促通反復療法(RFE)は,脳卒中片麻痺上肢の機能改善や物品操作能力,生活の質の改善に有効であることが報告されている.しかし,麻痺手の使用頻度や目標とした動作への効果は不明である.今回我々は,回復期脳卒中患者1名に対し,持続的神経筋電気刺激下の促通反復療法と課題指向型アプローチを組み合わせた課題指向型促通反復療法(Task-oriented RFE)を実施した.6週間の介入後,上肢機能や麻痺手の使用頻度,動作の質が改善した.また,目標とした動作の作業遂行満足度も向上した.退院1ヵ月後も,麻痺側上肢機能や使用頻度の維持,向上を認めた.Task-oriented RFEは,回復期脳卒中患者において,麻痺側上肢機能や使用頻度の改善に有効である可能性が示唆された.
著者
宮良 広大 松元 秀次 上間 智博 廣川 琢也 野間 知一 池田 恵子 下堂薗 恵 川平 和美
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.90-97, 2015-04-20 (Released:2017-06-09)

【目的】脳卒中片麻痺下肢への全身振動刺激(Whole body vibration;以下,WBV)による痙縮抑制メカニズム解明のために,脊髄前角細胞の興奮性評価に用いられる誘発電位F波(以下,F波)を測定し検討した。【方法】対象は下肢痙縮を有する脳卒中片麻痺患者10名。WBV実施姿勢は股関節90°屈曲位,膝関節伸展位0°で長座位とした。WBVは下腿三頭筋とハムストリングスを中心に,周波数30Hz,振幅4〜8mmの条件で5分間実施した。WBV前後にModified Ashworth Scale(以下,MAS)とF波,足関節自動および他動関節可動域,10m歩行テストを測定した。【結果】MASは有意に低下し,足関節自動背屈角度と他動関節可動域,歩行能力が有意に改善した。さらにF波振幅で低下傾向,F/M比で有意な低下を認めた。【結論】WBVによる痙縮抑制メカニズムとして脊髄前角細胞の興奮性低下の関与が示唆された。
著者
三浦 聖史 下堂薗 恵
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.283-288, 2019

<p>脳やシナプスは可塑性を有することが明らかになり,そのメカニズムの解明を背景として,脳卒中リハビリテーションには,訓練の量,頻度ならびに課題特異性という3つの要素が重要であるとの知見が蓄積され,推奨されるようになった.脳卒中急性期では,早期離床により廃用症候群を予防するとともに,早期にADL(activities of daily living)を向上させることが重要である.さらに,回復期ではCI療法(constraint-induced movement therapy)や促通反復療法といった療法士の指導や徒手による運動療法を軸として,電気刺激や振動刺激等のさまざまな物理療法や非侵襲的脳刺激法(non-invasive brain stimulation:NIBS),リハビリテーションロボットを併用し,患者の運動意図を正しく実現し,反復することが,患者アウトカムを向上させると考えられる.超高齢社会の我が国における回復期リハビリテーションでは,アウトカム実績とその効率性が求められており,さらに,近い将来における再生医療の実用化に向け,効果的かつ効率的なリハビリテーション治療の発展がますます必要とされるであろう.</p>
著者
下園 由理香 有馬 美智子 海 唯子 下堂薗 恵 川平 和美
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.613-619, 2007-10-18 (Released:2007-11-06)
参考文献数
10
被引用文献数
2

Although visual field defects are common disorders in stroke patients, rehabilitation treatments have developed slowly. In this study, we report a case of a 35-year-old man with quadranopsia and visual agnosia due to right occipital hemorrhage. He had no upper limb motor impairments and began to work as a dental mechanic one month after the stroke, but had to retire because of difficulty in making dental implants. He failed to find things in his lower left visual field, and could not perceive fine differences in slope and depth. He was admitted 2 months after the onset and received occupational therapy for visual agnosia, and treatment for quadranopsia one month after admission. The treatment for quadranopsia was performed using a newly designed computerized visual field training machine consisting of a personal computer system which displayed a fixing point for the eyes at the center of the computer display, and a visual stimulation point at areas between residual vision and quadranopsia on the computer display accompanied by a response warning sound after the patient indicated using a switch when he found the visual stimulation. The visual stimulations contained 20% placebo (no visual stimulation). The computer also calculated the percent of correct responses. After one month of continuous occupational therapy only, his visual agnosia improved but his quadranopsia did not. However, his quadranopsia did improve after repetitive visual stimulation using the computerized visual field training machine. In conclusion, quadranopsia might be improved by repetitive visual stimulation.
著者
松元 秀次 川平 和美 下堂薗 恵 衛藤 誠二 緒方 敦子 中村 康典
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、神経筋電気刺激療法を用いて嚥下に関する筋群を刺激することで、嚥下障害に対する新しい治療法の確立を図った。嚥下障害と診断された患者に対して、電気刺激療法を用いて治療することで、安全性の確認とともに訓練効果を舌骨や喉頭の動き、嚥下造影検査、嚥下内視鏡検査などで確認することができた。得られたデータを学会で発表し、論文にまとめて採択に至った。嚥下障害患者への新しい治療法の一つになると考えられ、さらには誤嚥性肺炎予防につながると考えられる。
著者
緒方 敦子 衛藤 誠二 下堂薗 恵 川平 和美 林 良太
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

半側空間無視は脳損傷患者が病巣と反対側のものを無視してしまう事であり、右脳損傷で生じ易い。リハビリテーションの阻害因子となることが知られているが、そのリハについては有効な方法は確立されていない。無視する側への視覚探索(走査)訓練と体幹回旋は推奨されるが、今回、ゴーグル型モニターで視覚探索訓練を行った。これを使う事で、半側空間無視の患者は視線だけでなく体幹も回旋し、同時に重心、頭部も無視側へ回旋した。無視への即時効果も認められた。ゴーグル型モニターでの視覚探索訓練は、半側空間無視のリハに役立つと考えられる。