著者
中山 聖子 木村 将士 金子 誠也 山崎 和哉 外山 太一郎 池澤 広美 加納 光樹
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.2024, pp.AA2024-2, 2024-01-11 (Released:2024-01-11)

東南アジア諸国の水産上重要種であるウシエビPenaeus monodonは、インド・西太平洋の熱帯から温帯地域で生息が確認されており、その分布の北限は東京湾もしくは房総半島沿岸とされてきた。しかしながら、2021年9月から2023年11月にかけて両海域よりも北に位置する茨城県の江戸上川・久慈川・那珂川・利根川河口域と汽水湖涸沼において本種の稚エビ計20個体(頭胸甲長4.8–28.3 mm)が採集されるとともに、江戸上川産の標本に基づいて本種の北限記録を更新した。これらの採集年については、黒潮からの暖水波及と部分的に関連付けられる20 °C以上の高水温の期間が平年と比べて長かった。本種は低水温への耐性がないため茨城県沿岸海域で越冬する可能性は低いものの、今後、海水温の上昇によって稚エビの加入が増えていく可能性がある。
著者
小熊 進之介 金子 誠也 加納 光樹
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.65-73, 2022-04-20 (Released:2023-03-20)
参考文献数
44

2011年4月から2012年3月に涸沼の塩性湿地の湿地内部のクリークと湿地前縁において小型地曳網による定量採集を行い,絶滅危惧種ジュズカケハゼの仔稚魚の季節的な出現と食性を調べた。調査期間中に採集された本種は,仔稚魚を中心とした計1,425個体(体長5-55 mm)であった。本種の仔稚魚は4月から6月にかけて主にクリークで出現した後,クリーク内で徐々に成長し,12月には最小成熟サイズ(体長42 mm)に達した。一方,調査期間中に湿地前縁では仔稚魚は極めて稀にしか出現せず,成魚は全く出現しなかった。クリーク内での仔稚魚の主要な餌は,成長に伴ってカラヌス・キクロプス類からユスリカ類幼虫やアミ類へと変化した。したがって,本種は初期生活史を通して塩性湿地クリーク内に留まり,そこが本種の餌転換の場としても機能している可能性が示唆された。
著者
木村 将士 山口 真明 大森 健策 山崎 和哉 金子 誠也 加納 光樹
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.87-95, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
19

要涸沼川とその支川の飯田川において,特定外来生物コクチバスの生息状況調査を行った.涸沼川における採集調査では,2019 年と2020 年の各年の6 月から9 月に,飯田川合流点より下流側の7 地点で仔魚や成魚を含む計228 個体(体長6.3–295mm)が採集された.そのうち1 地点では 2019 年6 月に産卵床で仔魚およびそれらを保護する親魚が採集された.したがって,コクチバスは涸沼川水系で再生産し分布を拡大しつつあると考えられた.