著者
大森 健策 諸澤 崇裕 加納 光樹
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.AA2023-1, 2023-01-05 (Released:2023-01-05)

東日本の海跡湖である北浦(最大深度7 m、面積36 km2)に流入する23本の河川において、2016年4月中旬から5月下旬と9月中旬から10月中旬に魚類の分布パターンと環境変量を調査した。調査期間中に出現した魚類は、計11科33種であった。各河川の種組成データに基づいてクラスター分析を行ったところ、23本の河川は流路延長が長く種数が多いグループと流路延長が短く種数が少ないグループに分けられた。各グループを表徴する複数の絶滅危惧種が存在した。各魚種の出現・非出現と各環境変量との関係を一般化線形混合モデル解析で検討したところ、20種の生息環境特性が把握された。河口からの堰堤の数は水産有用種のワカサギやヌマチチブを含む10種の出現と負の関係がみられ、これらの種では堰堤による遡上阻害が生じている可能性が示唆された。川幅、流速、水際を覆う植生の被度も、多くの魚種の出現の有無と関連付けられた。とくに植生被度は複数の絶滅危惧種の出現と正の相関が認められた。今後、北浦流域において水産有用種や絶滅危惧種を含む在来魚のさまざまな生息環境を適切に保全していくうえで、堰堤への魚道の設置、水辺植生の管理、護岸構造の改良などを含む流入河川再生計画の検討が急務であると考えられた。
著者
木村 将士 山口 真明 大森 健策 山崎 和哉 金子 誠也 加納 光樹
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.87-95, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
19

要涸沼川とその支川の飯田川において,特定外来生物コクチバスの生息状況調査を行った.涸沼川における採集調査では,2019 年と2020 年の各年の6 月から9 月に,飯田川合流点より下流側の7 地点で仔魚や成魚を含む計228 個体(体長6.3–295mm)が採集された.そのうち1 地点では 2019 年6 月に産卵床で仔魚およびそれらを保護する親魚が採集された.したがって,コクチバスは涸沼川水系で再生産し分布を拡大しつつあると考えられた.
著者
大森 健策 加納 光樹 碓井 星二 増子 勝男 篠原 現人 都築 隆禎 横井 謙一
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.18-019, (Released:2018-08-20)
参考文献数
64

Large-scale Japanese lakes support many fish species and abundant fisheries resources. However, long-term changes in the fish fauna of such lakes have not been fully investigated, despite recent significant anthropogenic impacts on associated ecosystems. Accordingly, the extensive native and non-native fish fauna of Lake Kitaura, a typical large inland-sea lake (36 km2) in eastern Japan, was investigated based on specimens collected by the staff of Itako Hydrobiological Station, Ibaraki University from 1977 to 1997, plus data from previous studies conducted since the 1950s. In total, 83 species in 35 families have been recorded from the lake from the 1950s to the present decade. The analyses of long-term changes in fish species data since the 1960s demonstrated a sharp decrease in marine, estuarine and diadromous species due to an estuarine barrage (Hitachi River floodgate) established in 1973, the disappearance of nine red-list species (e.g., threatened and near threatened species) following various artificial environmental changes from the 1960s to 1980s, and an increase in introduced exotic and Japanese species after the 1980s.